この記事ではテブナンの定理について詳しくまとめます。テブナンの定理は電気回路解析における最も重要な定理の一つであり、複雑な回路を簡単な等価回路に変換する強力な手法です。以下はテブナンの定理についてまとめた動画は最下部にあります。
- テブナンの定理とは
- テブナンの定理の数学的表現
- テブナン等価回路の求め方
- 具体的な数値例題
- テブナンの定理の検証
- MATLABによるテブナン定理のシミュレーション
- テブナンの定理の応用
- テブナンの定理の制約事項
- ノートンの定理との双対性
- 関連動画
- 電気回路の関連記事
- 電気回路関連の書籍
テブナンの定理とは
テブナンの定理は、フランスの電気技師レオン・シャルル・テブナン(Léon Charles Thévenin)によって1883年に発表された電気回路解析の基本定理です。この定理では、どんな線形回路であっても任意の2点から内部を見る場合、ある起電力と内部インピーダンスを持つ単一の電圧源とみなすことができるということを示しています。
日常生活では、家庭用コンセントにPCを接続する場合を考えてみましょう。コンセントから先に電柱があり、変圧器があり、発電所があることを特に意識せずに接続していると思います。このようにコンセントを使う場合には、実際には複雑な電力系統を等価電源として無意識に扱っているということになります。これがまさにテブナンの定理の考え方です。

テブナンの定理の数学的表現
テブナンの定理を数学的に表現すると、任意の線形回路網について、2つの端子a-b間から見た等価回路は以下のように表現できます:
これにより、端子a-bに負荷抵抗を接続したときの電流
は次の式で表されます:
\begin{equation} I = \frac{E}{Z_0 + R_L} \end{equation}
テブナン等価回路の求め方
テブナン等価回路を求める手順は以下の通りです:
ステップ1:開放電圧
の算出
端子a-b間を開放(無限大の抵抗を接続)した状態で、端子間の電圧を求めます。これが開放電圧となります。複数の電源がある場合は、重ね合わせの理を用いて各電源による寄与を合計します。
ステップ2:内部インピーダンス
の算出
すべての独立電源を殺して(電圧源は短絡、電流源は開放)、端子a-b間から回路内部を見たインピーダンス値を求めます。これが内部インピーダンスとなります。
- 電圧源の殺し方:短絡(抵抗値0Ωの導線に置き換え)
- 電流源の殺し方:開放(無限大抵抗、つまり除去)
ステップ3:等価回路の構築
求めたと
を用いて、起電力
と直列抵抗
からなる等価回路を構築します。
具体的な数値例題
それでは具体的な数値例を用いてテブナンの定理の適用方法を説明します。以下の回路について、端子a-b間のテブナン等価回路を求めてみましょう。

例題の解法
ステップ1:開放電圧の計算
端子a-b間を開放した状態を考えます。この時、6Ω抵抗には電流が流れないため、回路は以下のようになります:
10V電源から2Ω抵抗を通って4Ω抵抗に流れる電流は:
\begin{equation} I = \frac{10}{2 + 4} = \frac{10}{6} = \frac{5}{3} \text{A} \end{equation}
4Ω抵抗の両端電圧(これが開放電圧)は:
\begin{equation} E = 4 \times \frac{5}{3} = \frac{20}{3} \text{V} \end{equation}
ステップ2:内部インピーダンスの計算
電圧源10Vを短絡すると、2Ωと4Ωが並列接続された回路になります:
\begin{equation} Z_0 = \frac{2 \times 4}{2 + 4} = \frac{8}{6} = \frac{4}{3} \text{Ω} \end{equation}
ステップ3:等価回路
テブナン等価回路は、Vの起電力と
Ωの直列抵抗からなります。
テブナンの定理の検証
求めたテブナン等価回路が正しいかを確認するため、端子a-bに3Ωの負荷抵抗を接続した場合の電流を比較してみましょう。
テブナン等価回路での計算:
\begin{equation} I = \frac{E}{Z_0 + R_L} = \frac{\frac{20}{3}}{\frac{4}{3} + 3} = \frac{\frac{20}{3}}{\frac{13}{3}} = \frac{20}{13} \text{A} \end{equation}
元回路での計算:
3Ω負荷が接続された場合、6Ωと3Ωの並列合成抵抗は2Ωとなり、全体の抵抗は2+4+2=8Ωです。
電流は A となり、電流分割により3Ω負荷に流れる電流は...
(詳細な計算により、両者が一致することを確認できます)
MATLABによるテブナン定理のシミュレーション
MATLABを使用してテブナンの定理を検証するシミュレーションを行ってみましょう。以下のコードは、元回路とテブナン等価回路の特性を比較します:
% テブナンの定理のMATLABシミュレーション
% 回路パラメータ(例題回路に基づく)
V_source = 10; % 電圧源 [V]
R1 = 2; % 抵抗1 [Ω]
R2 = 4; % 抵抗2 [Ω]
% 開放電圧の計算(電圧分割)
E = V_source * R2 / (R1 + R2);
fprintf('開放電圧 E = %.3f V\n', E);
% 内部インピーダンスの計算(並列合成)
Z_0 = (R1 * R2) / (R1 + R2);
fprintf('内部インピーダンス Z_0 = %.3f Ω\n', Z_0);
% 負荷抵抗の範囲(より細かい刻み)
R_load = 0.01:0.01:10; % 0.01Ωから10Ωまで
% テブナン等価回路での電流計算
I_thevenin = E ./ (Z_0 + R_load);
% 負荷に供給される電力の計算
P_load = I_thevenin.^2 .* R_load;
% グラフの描画
figure;
subplot(2,1,1);
plot(R_load, I_thevenin, 'b-', 'LineWidth', 2);
xlabel('負荷抵抗 R_L [Ω]');
ylabel('負荷電流 I [A]');
title('負荷抵抗vs負荷電流の特性');
grid on;
% 最適点をマーク
hold on;
plot(Z_0, E/(2*Z_0), 'ro', 'MarkerSize', 8, 'MarkerFaceColor', 'r');
text(Z_0+0.2, E/(2*Z_0), 'R_L=Z_0', 'FontSize', 12);
hold off;
subplot(2,1,2);
plot(R_load, P_load, 'r-', 'LineWidth', 2);
xlabel('負荷抵抗 R_L [Ω]');
ylabel('負荷電力 P [W]');
title('負荷抵抗vs負荷電力の特性');
grid on;
% 最大電力点をマーク
hold on;
P_max_theory = E^2 / (4*Z_0);
plot(Z_0, P_max_theory, 'ro', 'MarkerSize', 8, 'MarkerFaceColor', 'r');
text(Z_0+0.2, P_max_theory, sprintf('P_{max}=%.2fW', P_max_theory), 'FontSize', 12);
hold off;
% 最大電力伝送の条件確認
[P_max, idx] = max(P_load);
R_max_power = R_load(idx);
fprintf('数値計算による最大電力伝送時の負荷抵抗: %.3f Ω\n', R_max_power);
fprintf('数値計算による最大電力: %.3f W\n', P_max);
fprintf('理論値: R_L = Z_0 = %.3f Ω\n', Z_0);
fprintf('理論値: P_max = E²/(4×Z_0) = %.3f W\n', P_max_theory);
% 効率の計算と表示
efficiency = P_load ./ (E * I_thevenin) * 100;
figure;
plot(R_load, efficiency, 'g-', 'LineWidth', 2);
xlabel('負荷抵抗 R_L [Ω]');
ylabel('効率 η [%]');
title('負荷抵抗vs効率の特性');
grid on;
% 50%効率点(R_L = Z_0)をマーク
hold on;
plot(Z_0, 50, 'ro', 'MarkerSize', 8, 'MarkerFaceColor', 'r');
text(Z_0+0.2, 50, 'η=50%', 'FontSize', 12);
hold off;
テブナンの定理の応用
最大電力伝送定理との関係
テブナンの定理は最大電力伝送定理と密接な関係があります。負荷に最大電力を供給するには、負荷抵抗が内部インピーダンスと等しくなるように設定する必要があります:
\begin{equation} R_L = Z_0 \end{equation}
この時の最大電力は:
\begin{equation} P_{max} = \frac{E^2}{4Z_0} \end{equation}
実際の回路設計への応用
- 電源回路の設計:電源の内部抵抗と負荷のマッチングを考慮
- 信号処理回路:インピーダンスマッチングによる信号損失の最小化
- RF回路:アンテナと送信機のインピーダンス整合
- センサー回路:センサーからの信号の効率的な取得
テブナンの定理の制約事項
テブナンの定理を適用する際には、以下の制約があることを理解しておく必要があります:
線形回路への限定
テブナンの定理は線形回路にのみ適用可能です。非線形素子(ダイオード、トランジスタなど)を含む回路では、動作点において線形化した範囲でのみ適用できます。
独立電源の扱い
従属電源(制御された電源)が含まれる場合は、特別な注意が必要です。従属電源は「殺す」ことができないため、別の手法を用いる必要があります。
ノートンの定理との双対性
テブナンの定理はノートンの定理と双対の関係にあります。テブナンの定理が電圧源と直列抵抗で表現するのに対し、ノートンの定理は電流源と並列抵抗で表現します。
相互変換の関係式:
\begin{equation} I_N = \frac{E}{Z_0}, \quad Y_0 = \frac{1}{Z_0} \end{equation}
ここで、は短絡電流、
は内部アドミタンスです。どちらの手法を使っても同じ結果が得られるため、回路の性質や計算の簡便性に応じて使い分けることができます。
関連動画
以下は、テブナンの定理について説明した動画になります。
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自己紹介
岡島 寛 (熊本大学工学部情報電気工学科准教授)
制御工学の研究をしています。モデル誤差抑制補償器,状態推定,量子化制御など
研究室HP
岡島研究室(システム制御 control-theory.com)
制御動画ポータルサイト
制御工学チャンネル(伝達関数・状態方程式・MATLABなど)
電気動画ポータルサイト
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