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何かを理解するためには借り物の言葉でもいい

エンジニアは一生勉強と世に言うが、べつにこれは所謂エンジニアに限ったことでもない。人間として生きている以上は日々が勉強の連続で、毎日何かを理解して、憶えて、その繰り返しだ。

だから、日常のレベルではドキュメントを探したりチュートリアルを見たり教科書を読んで理解することの繰り返しをやっている。

では、何をもって理解したとみなせばよいのか?意外とこれは難しい。よく言われるのが「自分の言葉で説明できたら理解していると言える」というようなものだ。『数学ガール』にも、たしか似たような事が書かれていた気がするが、記憶の彼方だ。 しかしながら、自分の言葉で一から説明しようとすると、その言葉すらも自分の言葉ではないことに気付いていく。Kubernatesを説明するためにはコンテナの語彙が必要だ。しかしコンテナの語彙をも自分の言葉で説明するなら、無間地獄に落ちていくだけだ。そうなると自分が何を説明したかったのか、そして何を理解したかったのかが混乱していく。

ゆえに、一段階低いレイヤーの語彙でという枕詞をさきほどのテーゼにくっつけよう。一段階低いレイヤーの語彙で、自分の言葉で説明できたら理解していると言ってもよさそうだ。 その一段階低いレイヤーの語彙については、ひとまず知っているものとみなしてしまおう。

この形に整理しておくと、理解について無限に降下して苦しむ必要がなくなる。もちろん、あえてレイヤーを掘り下げることも可能なのだが、掘り下げた先には結局直感的にそうなっているとか、公理的にそう定めているから、そういうものだから、といった岩盤が露出してきて、それ以上掘り進められなくなる(そこから先は哲学者の仕事だ)。哲学者になるつもりがなければ、普段の実用上は問題ないはずだ。


プログラミング言語やそれを支える「言語」という概念、ひいては数学の体系は、――自分の貧弱な数学理解に基けば――おおむね記号操作の体系であると考えられる。我々を取り巻く自然環境や物理法則をうまいこと再現するように還元した記号の体系を作り、それを操作することで結果を得る。いつしかそれは記号操作として純化され、必ずしも自然とは結び付かないが体系として矛盾しない、といった形で結実した。(文系出身の)自分は抽象数学についてそのように理解している。

他方、その理解に及んでいない高校時代にあっては、からっきし数学を会得できなかった。それが現実として何をやりたいのかさっぱり分からなかったからだ。意味の分からないことをするのは苦痛だ。いやもしかすると非常に高度な社会の領域で活用されているのだろうが、これは一体何だ・・・と思っていた。漸化式の展開は苦行だった。

そんな中、ウンウンうなりながら練習問題をとにかくやるしかないのだが、自分が一体何を理解して、何を理解していないのかさっぱり分からなくなり(だって分かってないのに記号操作だけしたら解けるのだから)、頭がおかしくなりそうだった。この数学的概念を理解するとは畢竟何なのか?という深みにはまっていた。

いつしか夏は終わり、冬に交代し、それが何度か繰り返され、就職し、やはりまた勉強をしているのだが、今となっては勉強とはどんなものなのかの検討がつくようになってきた。冒頭にあるように、ある概念の基盤をなす全てを理解しているかどうかはさておき、一段階低いレイヤーの語彙でそれについて説明できれば理解していると考えてもよさそうだし、他人に説明するときも一段階低いレイヤーの語彙でやるので十分だ。もしそれで通じなければ、インタラクティブに語彙のレベルを低くし、再帰的に説明していけばよい。

自分は借り物の言葉を使うことを恐れていた。自分で理解していない証拠だと思っていたからだ。しかし全ての言葉はつまるところ借り物であるし、それを積み重ねることで人間は高いところに行くのだから、恐れずに使えばよい、というのが今の考えだ。われわれの業界には、巨人の肩に乗るという言い回しがあるし、言葉においても同じかもしれない。ぜんぜん分かっていない言葉を利用するのはどうかと思うが、おおむね分かっている言葉を正しく使っているならば、思考を節約できるのだから。つまり、理解はインクリメンタルにやることもできる、と言ってもよさそう。

そういえば先日、「文章を読んでいるときに言葉に意識が向くと理解が止まる(大意)」というような記事をどこかで読んだ(リンク失念)。それも今説明したことに近いと思う。ある概念についての構造的な理解とは別に、言葉のフローとしての理解があり、前者があっても後者が欠ければよくわからなくなってしまうのだ。




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