
今回は 「TimeEar NH60」です。最近AliExpress上でも積極的な店舗展開を始めている「TimeEar」ブランドのフラグシップ級のイントラコンカ(インナーイヤー)型イヤホンですね。チタニウム合金製シェルに独自のニオブ合金セラミック振動板を組み合わせ、60Ωの高インピーダンス設計を採用するなど据え置きアンプでの駆動を前提とした質の高いサウンドを目指しているそうです。
■ 製品概要と購入方法について
「TimeEar」は実績のあるOEMメーカーが2020年に設立したオーディオメーカーで、中国市場では2023年より10機種以上の製品を展開しています。主な製品はポータブルDAC/AMP製品、イヤホン製品などポータブルオーディオ分野で全て自社開発・設計・製造を行い特許技術を複数保有しているとのこと。今年よりAliExpressなどの越境ECを通じて中国国外での展開も順次開始しています。
「TimeEar NH60」は新たにリリースされたイントラコンカ(インナーイヤー)型のフラッグシップモデルで、精密CNC加工されたチタニウム合金シェルに、ニオブ合金セラミック振動板を組み合わせ、60Ωの高インピーダンス設計を採用するなど、ポータブル向けの“手軽さ”よりも、据え置きDAC/アンプでの安定稼働を意識したモデルとなっています。


「TimeEar NH60」のドライバーには14.2mmのダイナミックドライバーを搭載。振動板にはセラミック基板にニオブ(niobium/コロンビウム)合金をマグネトロンスパッタリング蒸着によりナノスケール層を形成した6μmニオブセラミック振動板を採用。驚異的な構造剛性を持つこの半透明の青い振動板は振動経路が完全に安定化され、歪みをほぼ排除。息を呑むほどクリアで倍音豊かなサウンドを実現します。またドームとサスペンションに単一素材の一体型プレス加工を採用することで、全周波数帯域にわたりシームレスで位相整合のとれたエネルギー伝達を実現しています。


また製品名称の元になっている60Ωの高インピーダンス設計はDaikoku製・極細27ミクロンの純銅ボイスコイルの採用により実現。さらにショートストローク設計を組み合わせることで音量に関わらず一貫したリニアリティを確保。振動板の通気性を確保するため、セミオープンリアキャビティを採用しています。
またケーブルにはTimeEarの「TEN-99 Pro」同軸ケーブルと同様の導体を採用(参考:「TEN-99 Pro」のレビュー)。アップグレードされた5N単結晶銀メッキ銅ケーブルを洗練された同軸構造で採用し、0.88mmという極細径にもかかわらず、卓越した耐干渉性と信号純度を実現しています。


「TimeEar NH60」はAliExpressにて170.53ドルで販売されています。
TimeEar(timeear.com): TimeEar NH60
AliExpress(TimeEar Official Store): TimeEar NH60
免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして TimeEar より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
パッケージはグレーを基調としたシンプルで飾り気のないデザイン。ボックスは少し大きめですね。


上位モデルらしくパッケージングも高級感を演出しています。


付属品などは、イヤホン本体、イヤーパッド(黒、白、それぞれ2ペア)、レザーケース。


チタン合金製のハウジングは非常に軽量ですが薄いアルミや亜鉛合金シェルにありがちな少し安っぽく感じる印象は皆無で、CNC加工による仕上がりも非常に精緻な印象。シンプルなデザインながら高級感があります。


ケーブルは「TEN-99 PRO」と同じ導体のようですが、より本数を使用した撚り線仕様。それでも十分に細い印象ですが引っ張りの剛性も高く、見た目以上に丈夫な印象です。
プラグは交換式で本体と同じチタン合金製のプラグはネジ留め式で固定します。本体がチタン製なのも十分に高級感がありますが、プラグ等の部品も同様にチタンで作っているのはありそうで無いかもしれませんね。製造メーカーらしい、コストのかかっている仕上がりです。ドライバーの背面にあたるハウジング部には空気圧を調整するベントがあり、セミオープン型の構造を採用しています。
14.2mmの大口径ドライバーを搭載しつつ、装着部も固定しやすいサイズ感でまとめており、本体の軽量さもあり、イヤーパッド無しでも耳から落ちること無くホールドし安定して装着ができます。
■ サウンドインプレッション
「TimeEar NH60」のサウンドはニュートラルで解像感や分離性に優れた明瞭サウンド。イントラコンカらしい深みのある印象よりかなりダイレクトな印象でカナル型イヤホンやヘッドホンをイメージする音作りです。実際にTimeEarでは設計段階でリファレンスとしてSENNHEISERの「HD6xxシリーズ」や「HD490 Pro」といったヘッドホン製品を意識したチューニングが行われているとのことで、より近くダイレクトになる中音域および中高域とセミオープン型構造による抜けの良さにより、癖の無い印象と同時に非常に明瞭で鮮やかさを感じるサウンドですね。
ニオブセラミック振動板による優れた解像感と歪みを抑えた直線的なサウンドをチタン合金製ハウジングによりシャープに鳴らしつつ、チタンの剛性の高さから不要な反響を抑制し過度に金属質にならない自然なサウンドを実現しています。
いっぽうで60Ωというインピーダンスと設計思想から、据え置きでのアンプなど駆動力のある再生環境を前提としており、ポータブルオーディオでの利用範囲はかなり制限されます。オーディオアダプターや小型DAP製品の場合はパワフルなポータブルアンプ等を経由させる必要があります。「TimeEar NH60」の高域は非常に明瞭で伸びのある印象。非常に粒立ちが良く1音1音のディテールが精緻な印象で、解像感が高くシャープさと煌めきのある音を鳴らしつつ、刺激はコントロールされています。シンバルの余韻や空気感の描写は鮮やかさがり、チタンシェルらしい透明感やキレの良さも感じます。同時に硬質になりすぎず、若干の温かみを感じさせる自然な音作りも好印象です。
中音域は自然な距離感で定位しつつしっかりした主張で凹むことなく再生されます。ボーカル域は非常にエモーショナルで、適度な距離感を保ちながら息遣いまで生々しく伝わってくる印象。所有する「HD6XX」と比較しても中域の厚みと質感などに近い印象も感じさせますね。女性ボーカルは適度なアクセントで綺麗に伸び、男性ボーカルは深みがあります。
イントラコンカらしい耳の外側で広がる音場感も活かしつつ空間表現も立体的で、演奏との分離も良好です。オーケストラ演奏などではホールのような広さのある空間表現と録音時の響きなども自然に表現される感覚は、高品質の開放型ヘッドホンに近い印象がありますね低域はニュートラルバランスでタイトな印象で鳴ります。付属のスポンジイヤーパッドを使用することでイントラコンカらしい厚みのある印象となりますが、イヤーパッド無しでもインパクトのある力強い印象で明瞭に再生されます。重低音はカナル型には及ばないものの適度に深く自然な印象で沈み、ミッドベースは明瞭な輪郭で芯のある音を鳴らします。イントラコンカとしてはかなり良質な低域だと思います。
■ まとめ
というわけで、「TimeEar NH60」は、TimeEarにとってフラグシップ級のイントラコンカらしい、完成度の高さを実感したイヤホンでした。ニオブセラミック振動板の14.2mmショートストローク仕様のダイナミックドライバーとチタニウム合金シェルの組み合わせを60Ωの高インピーダンスで鳴らし、さらにセミオープン仕様でまとめることで、ターゲットとしている上質な開放型モニターヘッドホンのような質感を再現しています。十分な再生環境を求めるなど相応のマニア向けのアイテムではありますが、ハイグレードのイントラコンカ型として強力な選択肢になりそうですね。