
こんにちは。今回は 「TANCHJIM SODA」です。「TANCHJIM(タンジジム)」の新しい300ドル級のハイブリッドハイブリッドモデルで、10mmダイナミックドライバーと4基のBA、さらに独自の「Silk System」パッシブドライバーを2基搭載した片側7ドライバー構成を採用。 清涼感のあるクリアなデザインとサウンドコンセプトを持ちつつ、「Silk System」による滑らかな高域表現が特徴的な印象です。
■ 製品概要と購入方法について
「TANCHJIM」(タンジジム)は2015年に設立された中国のイヤホンメーカーで、科学的な解析やロジックに裏付けられた専門性の高い調整によるニュートラルでバランスのよい音作りとシンプルな製品デザインでファンも多いブランドです。
「TANCHJIM SODA」は1DD+4BA+2Passive(Silk System)構成のモデル。最新の「DMT5」ダイナミックドライバーをベースに、4基のBAドライバーと独自の「Silk System」パッシブドライバーを2基搭載。透明感あふれる美しいシェルデザインも魅力的なアッパーミドルグレードのIEM製品です。


「TANCHJIM SODA」のドライバーには、自社開発の第5世代DMT技術を採用した「DMT5」10mmダイナミックドライバー(PU+DLC複合振動板)、カスタマイズされた「PURE」シリーズのバランスド・アーマチュア(BA)ドライバーを中域用2基、高域用2基の合計4基(4BA)搭載。さらに、超高域の平滑化と耳への圧迫感を軽減する独自の「Silk System」パッシブドライバーを2基搭載した「1DD+4BA+2Passive」のハイブリッド構成を採用しています。


独自の「Silk System」パッシブドライバーは16~23kHzの超高域で精密に調整されており、より滑らかで自然な高音域を実現。ダイナミックドライバーは最新のDMT5複合リアチャンバー設計を採用し、卓越した低音域の伸びと高速な過渡応答を実現。さらにカスタマイズされた「PURE」中高域BAと組み合わせることで、全周波数帯域にわたり正確で自然なサウンド再生を実現し、クリアで繊細、そしてバランスの取れたスニング体験を提供します。
また「TANCHJIM SODA」はカスタム設計された「HPFD-Seg」3Way高精度クロスオーバーによるこれらのドライバーのシームレスな統合を実現。さらに特許取得済みのデュアル圧力リリースシステムにより耳内の圧力上昇を効果的に軽減。T-APBパッシブ圧力バランスイヤーチップとの組み合わせで長時間のリスニングでも快適性を向上します。


「TANCHJIM SODA」の価格は 309.99ドル、アマゾンでは 51,800円です。
AliExpress(検索結果): TANCHJIM SODA
HiFiGo(hifigo.com): TANCHJIM SODA
Amazon.co.jp(TANCHJIM Official Store): TANCHJIM SODA
免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして TANCHJIM より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
パッケージデザインは同社ではお馴染みですが、製品名称に合せてとても夏らしいデザインになってますね。このパッケージを真冬に受け取るのいうのもなかなか味わい深いものです(^^;)。というかシリーズとしての一貫性はあるものの、限定版の「Lost Manor」を挟むと同じキャラクターだとは思えない表情の違いが興味深いですね。


パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、交換プラグ(3.5mm/4.4mm)、T-APB 気圧バランスイヤーピース(Treble/Bass 各3S/M/Lサイズ)、ホワイトレザー調キャリングケース、説明書、保証書など。


「TANCHJIM SODA」の本体は3Dプリントされた医療用レジン製のシェルで、非常に高い透明度と軽量さを実現しています。内部にはドライバーや音響チャンバーが整然と配置されており、想像以上に美しく仕上がっていますね。


シェル形状は4BA+1DD構成の「KARA」と比較してもコンパクトで、シングルドライバーの「ORIGIN」に近いサイズ感ににまとまっています。耳への収まりも良く装着性も高い印象です。


イヤーピースは同社の「T-APB 気圧バランスイヤーピース」の「Treble」および「Bass」が2種類、各サイズ付属しており、優れたフィット感を維持しつつ圧迫感の少ない自然な装着性を実現しています。


ケーブルは、高純度銀メッキ銅線の導体をリッツ構造で構成したケーブルが付属。線材は本体カラーを合せたクリアブルーの被膜で覆われており高い質感を持っている印象。交換式プラグはL字タイプで金属パーツも本体フェイスの意匠と合せた表面処理で一体感があります。
■ サウンドインプレッション
「TANCHJIM SODA」の音質傾向は、外観のイメージ通り非常に透明度が高く明瞭さを感じる音像で、サウンドバランスは緩やかなV字またはU字に近い弱ドンシャリ傾向。そのためよりフラット方向にニュートラルな「ORIGIN」や「NOLA」「FOLA」などのシングルダイナミック機より、「FORCE」などのモデルに方向性としては近いかもしれませんね。ただ、海外レビューでのf値を見ると「TANCHJIM SODA」についてはハーマンターゲットカーブ(H-2019)にほぼ準拠しており、「FORCE」とは全く違う意味で、かなり意図的にチューニングされているのでは、と感じました。つまり同社の独自技術である「DMT5」「PURE」「Silk System」を組み合わせることによって得られる「成果」を示すために、敢えて(比較しやすい)スタンダードなサウンドチューニングを選んでいるのかな、と思うわけです。
そのいっぽうでインピーダンス15.5Ω(±15%)、感度120dB/mWという仕様に対して実際は非常に鳴らしにくく、再生環境で空間表現に差が出るため、いわゆる「出力が大きい」系のオーディオアダプターではなく、しっかりとした電流量を確保出来るアンプ回路やバッテリーを搭載した駆動力のあるDAP、アンプでの利用が望ましいでしょう。
実際に「TANCHJIM SODA」は、そのカジュアルな名称とどちらかというとポップな印象を受けるクリアレジンとライトブルーの外観に対して、最近の同社製品に見られるようなスイッチやノズルフィルターによるチューニング変更も、DSPプラグによるアプリ等への対応もありません。さらに、バランス接続でも十分に駆動力のあるDAPやアンプが必要である点など、最近の同社製品のなかでも相当にマニア向けで「硬派」なモデルに仕上がっています。それ故に、相応に好みは分かれそうですが、個人的には結構好きかもしれませんね(^^;)。「TANCHJIM SODA」の高域は、非常に明瞭で、シンバルやハイハットの金属音も粒立ち良く表現される印象。興味深いのは一般的に低域のブーストに使用されるパッシブラジエータを、「TANCHJIM SODA」については独自の「Silk System」により超高域用として配置している点。同社によってカスタマイズされた高域用の「PURE」2BAは刺さりやすい帯域の手前にピークがあり、聴きやすくまとめつつ、その上を「Silk System」で補完することで、刺さりを抑えつつ抜けのよい伸び感と、直線的な滑らかさを持った透明感を実現してます。
「Silk System」は超高域用ユニットとして他社のような「マイクロ平面」や「ピエゾ(PZT)」、または「EST」などを配置する場合と比較して、パッシブラジエータの特性を活かして質感の変化の無い一貫した音色を持っており、特に音量を上げた場合の聴き疲れ感が抑制できる点は強みでしょう。また最近増えているPEQ(パラメトリックEQ)によって高域を強化する変更を行った場合のポテンシャルも確保出来るため、(再生環境にある程度の駆動力は必要ですが)思った以上に実用的なアプローチと言えるのでは、と感じます。中音域はU字寄りの傾向のため凹むことなく再生され、透明度が高く、ボーカルが際立つ印象です。カスタマイズされた中音域用の「PURE」2BAユニットが担う中音域は、滑らかさとともに粒立ちの良い解像感と分離があり、明瞭さを感じる印象があります。ただし、再生環境によっては中音域の主張が相対的に強く混雑する印象になる場合もあるようです。(出力ではなく、電流量も含めたアンプ性能としての)駆動力によって音場感に変化があるため、バランス接続のほうが好印象となる場合も多いかも知れませんね。
ボーカルは前傾し、多少近めに定位し、女性ボーカルの高音などの中高域のアクセントにより明瞭かつ光沢のある印象で伸びます。男性ボーカルは適度な締まりがあり、ドライすぎずウェットすぎないバランスで、息遣いや細かなニュアンスも綺麗に表現する印象。演奏との分離も優れており、中央を起点に自然な定位と見通しの良い空間表現があります。しっかりした再生環境では自然な広さとレイヤー感のある奥行きにより音数の多い楽曲でも立体的な音場感の中で再生されます。低域は、DMT5仕様のダイナミックドライバーにより、比較的タイトな音を鳴らし、キレの良いアタック感と自然な減衰を両立しています。ニュートラル方向のバランスを維持しつつ、重低音を中心に調整されており、量感よりも質感を重視した印象です。 ミッドベースは直線的な印象で膨らみは抑えられており、中高域との分離も良好です。シングルダイナミック構成の「ORIGIN」の低域と比較しても、よりタイトでスピード感がある印象。重低音は深く沈み込みますが、重量感や響きはやや控えめで、キレと締まりを重視した印象です。
■ まとめ
というわけで、「TANCHJIM SODA」は製品名称およびクリアブルーの外観に合せた爽快感のある明瞭な印象で、ボーカルの透明感など「TANCHJIM」らしさも感じるサウンドすが、併せて同社の独自技術の組み合わせでスタンダードなハーマンターゲットに仕上げる、というチューニングで、「ORIGIN」などの同社製品とは異なるアプローチも感じます。またポップな外観ながら実は300ドル超のアッパーミドル級のハイブリッド製品という側面もあり、また相応の再生環境が求められるなど、結構硬派なマニア向けという印象です。もしかしたら「Silk System」や「PURE」などの技術について今後の展開における「お披露目」的な意味合いもある製品なのかもしれませんね。そのため好みは多少分かれそうですし、そもそもユーザーを選ぶ価格帯ですが、個人的には結構好印象を持ったイヤホンでした。