
こんにちは。今回は 「TANCHJIM NORA」です。2025年8月20日に発売された「TANCHJIM」の新モデルです。上位モデルでも採用される最新の「DMT5」ダイナミックドライバーをシングルで搭載し、プロフェッショナル向けも含めたさまざまなモニター用途最適なサウンドに仕上げられています。100ドル程度、日本でも1.5万円程度の価格設定も魅力的ですね。
■ 製品概要と購入方法について
「TANCHJIM」(タンジジム)は2015年に設立された中国のイヤホンメーカーで、科学的な解析やロジックに裏付けられた専門性の高い調整によるニュートラルでバランスのよい音作りとシンプルな製品デザインでファンも多いブランドです。
「TANCHJIM NORA」はプロフェッショナル向けモニター用途のIEM(インイヤーモニター)として新たにリリースされたシングルダイナミック構成のモデルです。ボーカルと楽器表現に最適化され、広い周波数範囲と優れた低歪み性能を保持。各楽器の共鳴や倍音を正確に分離し、情報を失うこと無くモニターでき、ボーカル域も息遣いやリップの伊豆などの細かな変化も捉えやすく、密度も自然で適切です。ライブ配信、録音、ミキシングなど、さまざまなモニター用途に対応する製品です。


ドライバーにはTANCHJIMのフラッグシップ技術「DMT5」構造を採用し、振動板にDLCドーム、PUサスペンションエッジによる複合振動板デュアル磁気回路デュアルキャビティダイナミックドライバーをシングルで搭載。DLCドーム部は高域の伸びを最適化し、素早くクリアな過渡応答を可能とし、PU素材によるサスペンションエッジは素材特有のダンピング性能により不要な振動を吸収して低域に弾力感を持たせ高域の共振ピークを抑制。透明感と繊細さを備えた自然な音を実現します。またドライバーを収容するシャーシでは上位モデル同様の導波カバーを備えエネルギー伝達効率と解像度を向上させます。


また「TANCHJIM NORA」の内部構造は超平滑音響チャンバー技術に加え、セミオープン構造のヘルムホルツ共鳴リアチャンバー設計を採用。超低歪みによるディテールの再現性を実現しつつ音波と空気を制御しながら相互作用させ音響性能を向上させています。また出力部でもアレイ型サウンドデュフューザー構造を採用し、ダイレクトな音のクオリティを高め、よりピュアなリスニング体験を実現します。
「TANCHJIM NORA」のハウジング部には高透過PC素材を採用。フェイスプレートは金属フレームとサファイアガラスが融合したデザインで軽量かつ軽やかなフィット感を実現しています。


「TANCHJIM NORA」は2025年8月20日より発売を開始しました。国内価格は15,600円です。
Amazon.co.jp(TANCHJIM Offical Store): TANCHJIM NORA
免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして TANCHJIM より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
というわけで今回は発売前にTANCHJIMさんから提供いただきました。「TANCHJIM NORA」のパッケージは正方形のボックスでサイズ的には「FISSION」を踏襲していますがパッケージデザインは製品画像ではなくイメージアートを採用しています。


パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、交換プラグ(3.5mm、4.4mm)、イヤーピース(2種類、3サイズ)、布製ポーチ、説明書、保証書など。


本体は透明な樹脂製で金属製のステムノズルとフェイスプレートによる構成。シェルサイズは「TANCHJIM」のなかでも最もコンパクトな「Oxygen」や「HANA」などのモデルに近い超コンパクト設計です。


透明なハウジング部分からは「DMT5」構造のダイナミックドライバーユニットや内部成型による複雑なキャビティ構造が確認出来ます。


シェルサイズを同様の「DMT5」ドライバーを搭載する上位モデルである「ORIGIN」と比較するとステムノズルの太さは同様ですが、全体的に「TANCHJIM NORA」のほうが小振りであることが確認出来ますね。よりコンパクトになることで耳への収まりも良く、長時間でも負担が少ない印象。ただ耳に装着自体はイヤーピースで固定するイメージになります。


ケーブルは透明な樹脂被膜で覆われた銀メッキ線タイプで取り回しよく細い線材にまとめられています。またプラグが交換式になっており、4.4mmのバランス接続プラグが選択できるのはありがたい仕様です。ちなみに、サウンドモニター仕様の製品と言うことで今回はType-C仕様のプラグは付属しません。この辺の棲み分けをちゃんと意識してるのも特徴的ですね。
■ サウンドインプレッション
「TANCHJIM NORA」の音質傾向はフラット方向のニュートラルサウンドで、同社らしいサウンドチューニングを踏襲しています。そのため方向性としては「ORIGIN」や最近だと「FISSION」などに近いバランスです。また、直近でレビューした「FORCE」はいわゆるハーマンターゲット寄りでV字方向のため「TANCHJIM NORA」とは多少傾向が異なります。
「ORIGIN」および「FISSION」、そして今回の「TANCHJIM NORA」はいずれも「DMT5」構造のダイナミックドライバーをシングルで搭載しますが、それぞれの位置づけは比較的明確です。まず上位モデルの「ORIGIN」はステンレス製の大きめのハウジングで長時間のリスニングには向かないものの、音質的にはより高レベルで仕上げられており、「FISSION」は「4U」のデザインを踏襲した軽量なアルミ製ハウジングを採用し、リスニング方向でさまざまなオプションを提供していました。そして今回の「TANCHJIM NORA」では、ドライバーシャーシには「ORIGIN」同様の導波カバーを採用しつつ、プロフェッショナル用途にも対応出来る長時間利用にも最適な軽量の樹脂ハウジングを採用。「ORIGIN」と比べると多少軽快な印象ながら、徹底的に歪みを抑える内部構造により非常に高い解像感と分離性を実現しており、特にボーカル域から中高域にかけてのディテールがより鮮明に実感出来るように調整されています。
高域は「ORIGIN」のような硬質で超高域まで突き抜ける感じではないものの、直線的な伸びのある明瞭な音を鳴らします。樹脂製ハウジングを採用する「TANCHJIM NORA」はステンレス製の「ORIGIN」より若干温かみのある印象の高音を鳴らしますが、解像感や分離性は遜色無い印象です。十分に駆動力がありS/Nの高い再生環境では見通しの良さと透明感があり、同価格帯のイヤホンの中でも解像感や分離の良さはかなり優れているといえるでしょう。「TANCHJIM NORA」は「DMT5」構造のドライバーと超平滑音響チャンバーにより解像度向上と高い低歪みを実現する仕組みが導入されているとのことですが、実際に聴いた印象でも自然な温かみと同時に高い明瞭さと透明度を実現しており、その片鱗を感じます。
中音域は凹むことなく鳴り、音源への忠実性が高い印象のニュートラルな音で再生されます。高域同様に伸びのある音で見通しも良い印象ですが、特に中高域付近の適度なアクセントにより詳細なディテールを捉えやすく感じます。ボーカル域は若干前傾する印象ですが自然な位置で定位し、高域同様に非常に解像度は高いものの音像表現そのものに誇張などは無く、輪郭も自然です。「TANCHJIM NORA」では内部仕様としてヘルムホルツ共鳴リアチャンバー設計が採用され、女性ボーカルの高音などの中高域から高域に近い帯域の伸びや抜け感が強化され解像度の向上に寄与しているようです。ちなみに「ORIGIN」の場合はノズルフィルターの組み合わせによっては多少金属質で明るい印象となり、リスニング性は高まりますが、「TANCHJIM NORA」はより原音に忠実で1音1音のディテールを捉えやすい、文字通りサウンドモニター向けのチューニングが行われている印象です。そのぶんメリハリの良さなどリスニング的な楽しさは「ORIGIN」や「FISSION」には及ばない可能性がありますが、ニュートラルで自然なサウンドを好む方には100ドル程度の価格帯としては最善に近い選択肢となるでしょう。
また音場は自然な印象で音源に忠実な広さがあります。解像感および分離に優れ、見通しの良さと透明感の高さを持つ印象から演奏はボーカルとの分離も良く適切に定位し、綺麗に再生されます。モニター的な傾向のためリスニング的な臨場感はそこまで感じませんが、窮屈に感じることはありません。
低域は量的には控えめで、解像感やスピードの早さを重視した印象でまとめられています。そのため、臨場感のあるドンシャリ傾向のサウンドが好みの方には全く合わない傾向となりますが、分析的なリスニングにおいてはスピード感があり非常に締まりが良く、「耳コピ」しやすい低音だと思います。実際にはニュートラルなバランスながらミッドベースに一定の量感と重低音に心地よいエネルギーがあり、適度な温かみを持ちつつもキレがあり見通しの良い印象です。重低音の沈みも深く、低域そのもの質感は高いため、リスニング用途でもEQ等でチューニングを行う方であればむしろ好感される低域かもしれませんね。
■ まとめ
というわけで、「TANCHJIM NORA」ですが、同社の「ORIGIN」系統の音質傾向を踏襲しつつモニター用途を想定し手堅くまとめ、より自然でクリーンな印象のサウンドに仕上げられた製品だと感じました。「TANCHJIM」はこれまでもニュートラル傾向のイヤホンを多数リリースしており、いずれも音質面で定評があるため、「サウンドモニター」向けモデルという位置づけの製品はわりと「ありそうで今まで無かった」存在と言えるでしょう。パワフルな低音や臨場感のあるドンシャリ傾向を好まれる方には向きませんが、ニュートラル系のイヤホンとしてはかなり完成度は高いと思います。100ドル程度、1.5万円程度の価格設定は「実用的なアイテム」としても現実的ですし、長時間の利用に最適な耐久性と軽量設計な点も重要でしょう。音質的にも「ORIGIN」のエッセンスを踏襲しつつも自然で僅かに温かく、見通しが良さによりディテールを捉えやすいチューニングで、リスニング的な楽しさを強調した「FISSION」としっかり棲み分けされている点も特徴的です。興味のある方は是非とも試聴、できれば購入されるのも良いと思いますよ(^^)。