
こんにちは。今回は「Astrotec Archimedes ATS-01」です。14.8mmの大口径平面磁気ドライバーと9層ピエゾセラミックドライバーを搭載するモデルです。ステンレススチール性のシンプルなデザインながらボーカル域など中音域にフォーカスしたサウンドで、他の大口径平面ドライバー搭載モデルとは異なる聴き心地の良さを感じる製品に仕上がっています。
■ 製品概要と購入方法について
「Astrotec」は中国でも老舗のオーディブランドで、もともと大手メーカーへのOEM/ODM等で長い実績を持ちます。製造メーカーらしい豊富なラインナップと技術力には定評がありますね。
「Astrotec Archimedes ATS-01」は、大型の14.8mm平面磁界ドライバーユニットと9層圧電セラミック振動板を組み合わせた新モデルです。CNC加工されたステンレススチール製のキャビティを採用し、平面磁界ドライバーを補完する9層圧電セラミックプレートが、全体の雰囲気を高め、よりパワフルなサウンドレスポンスを実現します。


「Astrotec Archimedes ATS-01」が搭載する14.8mmの平面磁界型ドライバーユニットは2μmの超薄型振動板にミクロンレベルのエッチング加工を施し、精確で高速なサウンドと力強いディテールを実現。振動板の両面14個の高磁束磁石による強力な磁気構造により、クリアでパワフルなサウンドを生み出します。さらにサウンドレスポンスをさらに向上させるため、9層の超薄型ピエゾ(PZT圧電)セラミックユニット採用。平面磁界型ドライバーと組み合わせることで中高域のサウンドレスポンスを向上させ、より精細で解像度の高いサウンドを実現します。


「Astrotec Archimedes ATS-01」のシェルはCNC加工されたステンレススチール製で、シンプルで質感のある仕上げにより優れた快適性と洗練されたスタイルを融合しています。さらに綿密に設計された音響チャンバーを用いてクリーンで正確なサウンドを再現するよう調整されています。
免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして HiFiGo より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
「Astrotec Archimedes ATS-01」のパッケージはモノトーンでシンプルなデザイン。


パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、交換用プラグ、イヤーピース(2種類、それぞれS/M/Lサイズ)、クリーニングブラシ、ケース、説明書等。イヤーピースは通常タイプと液体シリコンタイプの2種類が同梱されています。


本体はCNC加工されたステンレススチール製の少し大きめのシェル。見るからに強度があり剛性も高い印象ですが耳の大きさによっては装着しにくいかも。というわけでより密着性の高い液体シリコンのイヤーピースが付属します。


本体重量も多少有るためイヤーピースとケーブルの耳掛け部分でしっかり固定するような装着感ですね。それでもシェル形状は耳にフィットしやすいデザインのため、イヤーピースを合せれば結構しっかりと装着できます。


ケーブルはホワイトシルバー銀メッキ線ケーブルが付属。透明な被膜の2芯タイプでしなやかな手触りで質感も良い印象。プラグはネジ留め式の交換タイプで4.4mmへの変更も可能です。
■ サウンドインプレッション
「Astrotec Archimedes ATS-01」の音質傾向はややミッドセントリック気味のサウンド。バランスとしてはフラット寄りですが、ピエゾユニットにより補完された伸びやかな高域と平面ドライバーの特徴を活かした中低域のアクセントによりリスニング性を高めている印象です。ボーカル域を中心に非常に聴き応えがありつつ、伸びのある高域と深く広い中低域から低域にかけての表現力が自然に下支えしている印象で、ニュートラルという感じではないものの、ちょっとスルメ系な聴き心地の良さがあります。14mm超の平面ドライバーとピエゾの組み合わせというと「Raptgo HOOK-X」をまず思い浮かべますが、比較すると「HOOK-X」(通常モデル、HBBモデルとも)のほうがU字またはV字方向のバランスで、「Astrotec Archimedes ATS-01」はより中音域の主張をカマボコ方向に伸ばし、さらに高域のピークを高めたような印象となります。
また、一般的に中音域が主体となる、いわゆるミッドセントリックなサウンドチューニングの場合、ボーカル域が非常に引き立ち、質感によっては多くの楽曲で聴き応えのある印象になるものの、カマボコ方向の音作りはオーディオ的には音域が狭い傾向になりがちです。
しかし「Astrotec Archimedes ATS-01」では14mm級の平面磁気ドライバーの中でも最大級の14.8mmの振動板を使用することで、平面駆動が得意とされる中低域から低域を歪みを抑え高い解像感と優れたレスポンスで描写しています。さらに9層のピエゾユニットの中高域から高域へのブーストにより、バランスとしては多少カマボコ寄りにチューニングしても、中音域に負けない低域と高域の表現力を持つことに成功しています。結果、全体としてはフラット方向なのに淡泊にならず豊かさがあり、かつ各音域が主張しあうようなパワー系の印象にもならず平面駆動らしい滑らかさも感じる、非常に上手いバランスに仕上がっています。「Astrotec Archimedes ATS-01」の高音域は、中音域に比べると主張としてはやや控えめな印象を受けるものの、ピエゾユニットにより平面磁気ドライバーの高域を適切に補完し、伸びのある明瞭な印象で鳴ります。中高域によりエネルギーが集中しているのに対し、高域から超高域付近は控えめでやや暗い印象となるため、刺さりなどの刺激はありません。いっぽうでハイハットなどのシンバル音は存在感があり、ピエゾユニットのブーストがある意味よく分かる高域といえるかもしれません。そのため、ややドライで人工的な印象もありますが、中音域をメインで考えると必要な音を鳴らすという点では適切な情報量と分離感を持つ高域という印象になるでしょう。
中音域は「Astrotec Archimedes ATS-01」によって最もフォーカスされる音域といえます。女性ボーカルの高音やブラスなどの中高域は強力なアクセントにより前面で存在感を放ち、男性ボーカルなどの中低域は豊かで温かみがあり、エネルギッシュな印象を受けます。相対的にフラット方向ですが実際のバランスとしては若干のカマボコ寄りであるため音像はニュートラルという感じではなく、前面に出るボーカル域やピアノなどを中心に広さのある音場と気持ちよいレイヤー感を描きます。平面磁気ドライバーによる、歪みを抑え早いレスポンスを持った描写により、演奏は綺麗に分離し、適度に空気感を持った空間の中で混雑すること無く再生されます。1音1音のディテールや定位の正確性、音色などは原音に対して正確ではないため分析的なリスニングには全く向きませんが、立体的な空気感があり、ボーカルは前面で非常にエモーショナルに表現される、ともも雰囲気のあるリスニングサウンドを演出します。
低域はミッドベースに重点が置かれており、特に大口径の平面磁気ドライバーの場合、ドライバーの特性である歪みの少なさとレスポンスの早さが最も反映されるのがこの音域で、「Astrotec Archimedes ATS-01」においてもその特徴をかなり積極的に活かした音作りが行われています。低域全体の量感としてはフラット方向で、重低音は相対的に控えめのバランスになりますが、ミッドベースは適度なアタックの強さと重量感のある響きがあり、心地よいインパクトを与えて中高域を下支えします。ミッドベースの輪郭は自然でそこまでタイトな印象はありませんが、非常にスピード感があり多層的に再生されるため、むしろ一体感のある自然な雰囲気を全体に与え、逆に緩さはあまり感じない印象です。重低音は適度な深さがあり平面ドライバーらしい滲みの無い印象ですが、量感や重量感はかなり控えめなため低域好きの方向けでは無いでしょう。■ まとめ
というわけで、「Astrotec Archimedes ATS-01」は14mm級平面磁気ドライバーとピエゾユニットの組み合わせで150ドル以下という比較的購入しやすい価格設定を実現しつつ、後発の製品らしく、かなり特徴的なサウンドを実現していました。大口径平面+ピエゾというドライバー構成の特徴を最大限に活かした高域および低域が下支えする方向で、むしろボーカル曲などの中音域を強調するミッドセントリックな音作りは、最近のハーマンターゲット寄りの風潮や、逆に派手なドンシャリ傾向のサウンドのどちらとも迎合しておらず、いっぽうで、ストリーミングなどを中心に多くのユーザーが聴くであろう音源に分かりやすくフォーカスしている点は非常に興味深く感じました。こういったサウンドを低価格イヤホンからのステップアップで購入しやすい100ドル~の価格帯で実現してる点もターゲットを明確にしており好感が持てます。
いわゆる原音忠実やニュートラルとは全然違いますし、派手なサウンドでも無いですが、普通に聴いていて心地よい、スルメ的なイヤホンとして十分にアリかなと思いました。

