
こんにちは。今回は 「Astrotec GX100」です。老舗ブランド「Astrotec」のGXシリーズからLCP振動板ダイナミックドライバーとPZT(ピエゾ)ドライバー搭載の低価格ハイブリッドモデルです。非常にコンパクトなシェルデザインに、PZTらしさを前面に出したサウンドが楽しい、ちょっとマニア向けに追い込むと楽しいタイプのイヤホンです。
■ 製品概要と購入方法について
「Astrotec」は中国でも老舗のオーディブランドで、もともと大手メーカーへのOEM/ODM等で長い実績を持ちます。製造メーカーらしい豊富なラインナップと技術力には定評がありますね。「Astrotec GX100」は同社のGXシリーズの新製品で、以前レビューした「GX70PLUS」の上位モデルになります。LCP振動板の高性能ダイナミックドライバーと9層セラミックPZTドライバーによるハイブリッド構成を採用し、新たなリスニング体験を提供するために開発されました。


ドライバーには、10mm LCP(液晶ポリマー)ダイナミックドライバーと10.6mm PZT(圧電セラミック)ドライバーによるハイブリッド構成を採用。LCP振動板ダイナミックドライバーは優れた過渡応答と豊かなディテールを再現し、力強くもタイトな低音と、クリアで広がりのある中音域を実現します。
さらに独自開発の9層セラミックPZTドライバーは、中高域に独特の空気感と透明感をもたらし、5Hzから40kHzまでの超広帯域再生を実現。ボーカルや楽器の繊細なニュアンスを鮮やかに描き出します。


また「Astrotec GX100」はハイブリッド構成ながら単一のドライバーのような統一感のあるサウンドを実現し、チューニングにおいてはハーマンターゲットに基づき、さらに温かみと豊かさを加えたAstrotec独自のサウンドデザインを採用しています。
そしてハウジングは耐久性とエレガントさを兼ね備えたメタルハウジングを採用。樹脂製キャビティと併せて洗練されたデザインを実現しています。


「Astrotec GX100」の価格は34.99ドル(マイク付きは 35.99ドル)です。
AliExpress(Angelears Audio Store): Astrotec GX100
免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして Angelears Audio より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
今回はマイク付きモデルで届きました。パッケージは製品が確認できるタイプのシンプルなパッケージ。老舗ブランドの製品らしく質実剛健で家電量販店や専門店の棚で販売しやすく手に取りやすい現実的なサイズ感のパッケージという印象です。


パッケージ内容は、イヤホン本体、ケーブル、イヤーピース(S/M/Lサイズ)、布製ポーチ、説明書など。低価格製品らしいシンプルな構成です。


本体は樹脂製のハウジングにアルミニウム合金性のフェイスプレートを組み合わせたデザイン。フェイスデザインの意匠が異なりますがシェルサイズは「GX70PLUS」とほぼ同じですね。ダイヤモンドカットされたデザインが特徴的です。10mmドライバーとほぼ同サイズのピエゾユニットを搭載しつつ、印象として最近のイヤホンの中でも特にコンパクトにまとまっています。相対的にステムノズルが大きく見えますが実際はKZやTFZなどのノズルと同程度の太さで、いかに本体が小さいかが伺えます。


装着性についてもイヤーピースを合わせれば耳への収まりも良くしっかりとホールドされます。本体自体は耳掛けでもまっすぐ垂らす方式でも両方に対応した形状ですが、付属ケーブルは耳掛け型用にイヤーフックがあるタイプで加工されています。2pin仕様ですのでリケーブルでフック無しのケーブルを選ぶことで装着方法を変えることもできますね。


ケーブルは樹脂被膜の2芯撚り線タイプで導体は銀メッキ線。被膜は弾力があり取り回ししやすい印象です。マイク付きモデルの場合、付属マイクのリモコンボタンは1ボタンタイプでした。
■ サウンドインプレッション
「Astrotec GX100」の音質傾向は、比較的ニュートラルベースのサウンドにPZTによる突き抜けるような高域を分かりやすくブーストした印象で、最近の高域にちょっと雰囲気を増す程度の感じでPZTを使っているイヤホンを聴いていて、もっと「PZTらしいガツンとした高域が欲しい」という方(いらっしゃるかどうかは知りませんが^^;)にはうってつけの製品だと思います。といっても再生環境の影響は結構有るものの、そこまで高域が大暴れ、という感じでも無く、ちゃんと鳴らせば中高域寄りのスッキリ目のニュートラルサウンドにぐっと伸びる高域と高高域をプラスした、くらいの印象。個人的には結構好きなサウンドで、これで50ドル以下なら十分アリかも、と思います。ただ、再生環境によっては音量をアップすることで結構なアグレッシブさで暴れたりしなくもないので、相性は確かにあるかも知れません。こうなってくると製品説明にあった「単一のドライバーのような統一感」って記述に「いやいやいや、何をおっしゃる(笑)」とツッコミを入れずにはいられなくなりますね(^^;)。また高域の刺激が苦手、低域好きのタイプの方も(環境によって)大丈夫な可能性はあるもののあらかじめ選択肢から外しておいた方が無難かもですね。どちらにせよ、久々の高域寄りでキャラ強めのイヤホンです。
「Astrotec GX100」は、いちおうインピーダンス32Ω、感度108dB/mWとマイク付モデルが設定されているように、スマートフォンやPC、ゲーム機などに直挿ししても比較的駆動しやすい仕様ですが、利用する音量によっては印象が変わる場合があります。リスニングイヤホンとしてPZTドライバーをより快適に稼働させるためにはある程度の駆動力があるほうが低ゲインでも低域の厚みや高域の伸びをしっかり実感出来ると思います。ただしバランス接続はハイブリッド的というか人工的なエッジ感が強調されるためあまり合わないかも。リケーブルでの変化も比較的あるタイプですので、利用する再生環境も踏まえて相性を考慮しながらいろいろ試してみる方が良いでしょう。「Astrotec GX100」の高域は、明るく明瞭な音を鳴らします。後述の通りPZTドライバーの挙動は再生環境で大きく変化するものの(クロスオーバー制御で電子制御やダンパー等での抑制が少ない)、一般的な再生環境や音量ではPZTらしい直線的で明瞭な伸びよ良さとはっきりとした主張はあるものの、過度な刺激は無く、高域好きの方も楽しめる超高域の見通しの良さや情報量、質感を感じさせます。
中音域は緩やかなV字を描くもののボーカル域は比較的近くに定位し、明瞭な印象で再生されます。LCP振動板もキレの良さが特徴となる印象ですが、PZTが中高域を補完することで、女性ボーカルの高音など中高域はよりはっきりとした印象で主張し、鮮やかに再生されます。また音像はちょっとハイブリッド的な人工的な部分もあり輪郭もはっきりと描写されますが、金属質なエッジ感とは異なり、ディテールに僅かな温かみや自然な印象も感じさせます。男性ボーカルは重厚さなどはありませんが、淡泊になることなく自然な厚みと豊かさをもっています。演奏との分離は自然で、音場は一般的な範囲ですが、ある程度締まりとスピード感のある音のため混雑するような印象は無くスッキリと再生されます。演奏はピアノやギターは適度な煌めきが有ります。低域はニュートラルな印象で強調などはありませんが、ミッドベースにある程度の存在感と弾力があり多少再生環境に寄るものの不足はあまり感じません。スピード感があり比較的スッキリした印象で鳴るため響きは抑制されるため、強い低域や臨場感を求める方には合わないかもしれません。全体的に滑らかさを感じる印象で中高域に比べてキレの良さより雰囲気で聴かせるタイプの低音で、重低音もある程度の深さはあるものの、自然に鳴る印象です。
■ まとめ
というわけで、「Astrotec GX100」は試した範囲でも再生環境で印象が変わる場合がありましたが、それでも最近のイヤホンのなかではPZTユニットの主張がかなりはっきりした製品だと感じました。自分好みに追い込むのに場合によってはいろいろ工夫する必要はありそうですが、価格に対して搭載ドライバーのポテンシャルは高く、またクロスオーバー制御が最近の製品に比べると強くないという点ではマニア的には「遊べる余地が多い」とも解釈できますね。
ただ、いっぽうで低価格イヤホンとして万人向けに勧めるにはちょっとクセが強いというか、扱いづらさがあるという解釈にもなります。例えば、マイク付きモデルということで、PCおよびスマートフォン直挿しでも私がテストしたMacBook ProやSony XPERIA1 IVといった比較的ノイズ特性の高い機器ではバランスの良い印象で再生されますが、中間値を超えて音量を上げると一定値を超えた瞬間にPZTドライバーが突然暴れ出し、ハイ上がり気味のサウンドに変化する場合があります。これはスマートフォンやスティック型の小型オーディオアダプターに搭載されている省電力アンプチップの特性(ゲインに対して一定値から二次関数的に出力が上昇する)が直接の原因ですが、シンプルなハイブリッドである「Astrotec GX100」はこういった影響を受けやすいため、基本は小音量~中音量以下での利用を前提とすることが望ましいでしょう。その場合、ニュートラル方向ではあるものの、ちょっと低域が物足りなく感じる場合があります。とはいえ、全体の質感や解像感などは非常に良く、このように再生環境での変化をいろいろ確認しながら使い込んでいくことで楽しめるタイプのイヤホンだと思いました。