
こんにちは。今回は 「AFUL Cantor」です。数々の特許に裏付けられた高い音響技術と魅力的なラインナップで人気上昇中の「AFUL」から、片側14BA構成のフラグシップモデルがリリースされました。従来の「Performer」シリーズと比較しても鬼進化した数々の技術を満載し、多ドラながら圧倒的に滑らかで自然かつ質の高いニュートラルサウンドを実現しています。
■ 製品概要と購入方法について
「AFUL Acoustics」は中国の新進気鋭の中華イヤホン(IEM)ブランドで、これまでにリリースされた製品はすべて数々の独自特許技術に裏付けられた質の高いサウンドにより高い評価を受けています。
今回の「AFUL Cantor」は片側14BA構成の新たなフラッグシップモデルで、14基のBAドライバーを複雑なクロスオーバーアーキテクチャを使用して慎重に設計および調整されています。従来の限界を超えた高精度設計でさらにオーディオ性能を向上させることに成功しています。


「Two-Way Acoustic Maze(双方向アコースティックメイズ)」
「AFUL Cantor」には、超低周波(10~100Hz)用に最小直径がわずか0.15mmの超薄型拡張サウンド チューブと、強力な低音用の2種類の複合BAドライバーが搭載されています。この迷路型のサウンドチューブは有名な「Shure SE846」のローパスフィルターの構造に似ていますが、「AFUL Cantor」の低音レスポンスはより優れた結果を実現しています。


「Lossless Direct Drive Topology Technology(ロスレスダイレクトドライブトポロジ)」
「AFUL Cantor」の「Lossless Direct Drive Topology Technology」は、非対称のサウンドパスを通じて共鳴を排除することで従来のダンパーより明瞭性を高め滑らかな高音を実現します。この技術によりBAドライバーによる高域ながら静電ドライバーに及ぶような鮮明で明確な高周波帯域を生成します。
「Multi-Dimensional Frequency Crossover Technology(多次元周波数クロスオーバー)」
「AFUL Cantor」では、14基のBAドライバーを効率的に統合し、電子および物理での複合的なクロスオーバー処理を実施。AFULの主要特許の電子クロスオーバー技術「RLC ネットワーク周波数分割補正技術」により高周波のピーク時の異常な周波数応答の変動を抑制し、低域用の「双方向アコースティックメイズ」、そして中音域用の「中音域位相干渉抑制」といった物理クロスオーバー技術を複合的に組み合わせることで「多次元周波数クロスオーバー」を実現。この仕組みにより、幅広い周波数領域にわたって非常に一貫性のある堅牢なサウンド レスポンスを実現できます。他にも特許技術「高減衰空気圧バランスシステム」により空気圧のバランスを調整し、長時間のリスニングで感じる疲労感や不快感を軽減し、低域の質感を向上。またステムノズルの直径4mm、長さ4.35mmのニッケルコートされた真鍮製のノズルは超高域および高域を向上させます。


「AFUL Cantor」の購入はHiFiGoの製品ページにて。
3.5mmまたは4.4mmのプラグが選択可能で販売価格は 799ドル です。
また日本国内版は 132,000円(税込み)にて販売されています。
HiFiGo(hifigo.com): AFUL Cantor
AliExpress(HiFiGo): AFUL Cantor
免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして AFUL Acoustics より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
今回はAFULからのサンプルで4.4mmモデルが届きました。パッケージはこれまでの上位モデルだった「Performer 8」よりさらに大きくしっかりしたものになっています。


パッケージ内容は本体、ケーブル、イヤーピース(3種類、S/M/Lサイズ)、クリーニングブラシ、ハードケース、説明書など。


「AFUL Cantor」の本体は、片側14BA構成(しかも特許的なギミックいろいろ)という仕様だけに3Dプリントされたシェルは「Performer8」などと比較しても2まわりくらい大きく、一般的にみても同様のタイプのイヤホンでは最大級に近いサイズ感です。「MarineEcho」デザインのフェイスプレートは写真で見るよりかなり美しく、より深海のイメージを感じさせます。


また「AFUL Cantor」の14基のBAの構成の詳細は非公開ですが、うっすら透けて見えるシェルから実装されたBAの一部と「Two-Way Acoustic Maze」と呼ばれる迷路状のサウンドチューブを確認することが出来ます。そして最も特徴的な部分としてステムノズルの先端にある、長さ4.35mm・直径4mmのニッケルメッキ真鍮ノズルがあります。これはフィルターの一種で超高域の帯域幅を広げ高周波が聴きやすくなる効果があるようです。


フィルター効果を活かすため、イヤーピースはノズルの先端ギリギリまで差し込むことが必要らしく、付属する3種類のイヤーピースを使用することを推奨としているようです。またシェルサイズが大きいため、装着はイヤーピースで固定し、ハウジング部や耳に掛けるケーブルでフォローするイメージになります。
ただ私のように耳穴のサイズ的に合わない場合や良いフィット感が得られない場合は代替案を探すしか無いわけですが、「Softears U.C.」と、より柔らかい「SpinFit W1」は個人的には良かったですね。というわけで今回は「SpinFit W1」を選択しました。


ケーブルは布張りの4芯線タイプ(5N LC-OFC高純度銅線)が付属します。コネクタは埋め込み部分のないフラットな中華2pin仕様。太さのあるケーブルですが取り回しは良く、使いやすい印象。プラグやコネクタ等の金属部品はクロームメッキ処理され高級感があります。
■ サウンドインプレッション
「AFUL Cantor」の音質傾向は僅かにU字寄りながらほぼフラットに近い印象。14基ものBAドライバーを搭載するマルチBA機ですが、いわゆる多ドラ機に特有の音の重なりによる響きやレイヤー感のようなものは無く、非常に滑らかで透明感のある音を鳴らします。しかし「Performer8」などと比較しても使用しているBAドライバー数の違いからか、BAらしい微細な表現のへフォーカスが非常に高く、また「Performer5」ではメリハリの良さによって作られた濃淡が、複数のBAによる厚みによってより自然に表現されます。「Performer」シリーズで培われた、複数のドライバーのクロスオーバーを特許技術等で徹底的に制御することでシングルドライバーのような滑らかさを生み出し、同時にドライバー構成の特性を活かした詳細かつ緻密な音作りが究極進化したような印象が「AFUL Cantor」にはあります。
そのため高域は明るく直線的な伸びやかさがあり、中音域は優れた解像感と鮮やかさを持ちつつ原音に忠実で癖のない音を鳴らし、低域は豊かさを持ちつつハイブリッドともマルチBAとも異なる、透明感を感じるような質感で全体を美しく表現させます。
また「AFUL Cantor」は片側14基ものドライバーを安定して鳴らすために、高い駆動力が必要です。ここでの駆動力は最大出力の大きさではなく、一定のゲインを維持するために流せる電流の量をさします。そのため小型のオーディオアダプターで搭載されることが多い低消費電力高出力のアンプチップでは最適音量で十分な駆動は得られない可能性もあります。また非常に微細かつ透明感のある表現を得意とするため一定ゲインでのノイズ特性の高さも求められます。そのため必要に応じてアンプなどを加えるほうが印象が向上する可能性がありますし、小型のDAP等ではローやミッドで鳴らすよりハイゲインで音量を下げたほうが印象が変わる場合があります。「AFUL Cantor」の高域は明瞭で直線的な伸びやかさがあります。高域にESTを搭載したハイエンド機と比較しても遜色無い見通しの良さがあります。複数の高域用BAを並列稼働させ歪みを抑えるアプローチはTRNなどの低価格ブランドでもありますが、「AFUL Cantor」ではBAぽさを感じさせる金属質な印象もかなりコントロールしており、同時に高い解像感と主張は維持している点が印象的です。
ちなみに再生環境によってはやや主張が強く刺激が多く感じる場合もあるようですが真鍮ノズルとイヤーピースの組み合わせで多少印象が変化します。イヤーピースの変更のほか、真鍮部分をイヤーピースから露出させない(少し浅めにする)など、あえて装着位置を変えるのもアプローチのひとつです。また前述の通り十分な「駆動力」(出力ではない)のある再生環境では同じ音量でも中音域および低域の主張が増し、高域も本来のバランスになるため相対的に聴きやすくなります。中音域はやや前傾し、解像感が高く色彩豊かな印象ですが、派手に鳴りすぎず、印象としては滑らかさをもった自然な印象にまとめられています。もし中音域が少し遠く感じるようでしたら、イヤーピースの位置や再生環境を確認してみるのがよいでしょう。ただ高域の刺激同様にあえて少し浅めにしてより広さを感じる印象を楽しむ方法もあるかもしれません。
イヤーピースを本来の装着位置に合わせ、しっかりとした再生環境で鳴らすことで、原音に忠実で透明かつ癖の無い音を、かつ非常に瑞々しく再生してくれます。音場は自然な広さと深さで強調感はありませんが、1音1音の定位を自然に実感でき、さらにより深く聴き入ると、微細な音まで非常に詳細に表現していることを実感させます。シングルダイナミックや平面駆動のハイエンドとは異なる、かといって多ドラ的な演出過剰な感じとも違う、非常に自然でかつ非常に深くフォーカスされたサウンドだと言えます。そして、「AFUL Cantor」の低域は十分な量感を持ちつつかつフラットなバランスで鳴らします。
やはり一般的なマルチBAの低域とは全く異なる印象で、豊かさと透明感に近い見通しの良さを実感させます。既存の何らかの低域の音をイメージするとちょっと拍子抜けするかもしれませんが、全体的な一体感として非常に「美しい低音」だと思います。「AFUL Cantor」の「Two-Way Acoustic Maze」は「SE846」のローパスフィルタのアプローチを意識していることが記載されていますが、良い意味でBAらしい特徴を打ち消しており、低域を構成する仕組みそのものが透明感のあるモニター的な低域を生み出す全く新しい種類のドライバーであるかのように感じます。■ まとめ
というわけで、今回の「AFUL Cantor」ですが、さすが「AFUL」というか、14BAという多ドラ構成ながら普通のハイグレード機とは一線を画した音作りで驚かされました。外観的にも美しいフェイスパネルよりステムの先端に飛び出した真鍮製の金属ノズルのインパクトがなかなかですし、「SE846」のローパスフィルタを超えたと自称する側面に見える長いサウンドチューブ。そして内部的にも大特許祭りみたいな技術のてんこもり。マニア的にも興味を引かざるを得ないギミック満載のイヤホンです。そして音質的にもこれらの仕組みに裏付けれた「AFUL」らしい質の高い、かつ個性的なニュートラルサウンドで、最初は「うん、良い感じのサウンドね」くらいから、聴けば聴くほど「なんかこれ凄くね」みたいな気分にさせられる印象です。まあ方向性によって好みがはっきりと別れるのがハイグレード機ですので、万人向けではありませんが、個人的には「今回のAFULもええね」という印象でした。もしあなたの琴線に触れたらぜひともお財布と始めてくださいね(^^)。