
こんにちは。今回は 「TRI DRACO」です。6mmチタン振動板+8mmLCP振動板ダイナミックドライバーによる2DD構成を採用し、コンパクトなアルミ合金製の金属シェルに独自のオープンバック構造を採用した比較的低価格のイヤホンです。ボーカル曲、特にJ-POPやアニソンと相性が良いサウンドで楽しいサウンドに仕上がっています。
■ 製品概要と購入方法について
「TRI Audio」は、中華イヤホンブランドとしてマニアの間ですっかりお馴染みになった「KBEAR」の兄弟ブランドとして、よりこだわりのあるハイグレードモデルを多く手がけている印象がありますね。同社はファブレスのブランドのため、どのファクトリーで製造しても同社による一貫したマネジメントが行われたサウンドチューニングを実施しており、製品ごとに個性的・魅力的な仕様と価格、安定した音質を両立することで多くのマニアの間で定評を得ています。
今回の「TRI DRACO」は6mmと8mmの2種類のダイナミックドライバーを配置する2DD仕様のモデルですが、アルミニウム合金製のシェルにオープンバックキャビティ構造を採用した個性的なモデルとなっています。


CNC加工されたアルミニウム合金製のシェルは独自のオープンバック構造を採用したリアキャビティと2基のダイナミックドライバーを貫通しダイレクトに出力するフロントキャビティ構造を採用。優れた中音域の周波数応答とともに広々とした音場とバランスの取れた自然なサウンドを提供します。


搭載されるドライバーは中高域用の6mmサイズのチタン振動板ダイナミックドライバーと低域用に独立した8mm 第3世代LCP振動板ムービングコイル・ダイナミックドライバーによる2DD構成。独自のキャビティ構造と電子的クロスオーバー処理により優れたリスニング特性を実現します。
ケーブルは0.78mm 2pin仕様の高純度OCC銀メッキ線ケーブルを付属します。


「TRI DRACO」の購入はAliExpressのEasy EarphonesまたはアマゾンのYinyoo-JPにて。
価格は54ドル、アマゾンでは10,699円ですが掲載時はクーポンで実質8,024円で購入可能です。
AliExpress(Easy Earphones): TRI DRACO
Amazon.co.jp(Yinyoo-JP): TRI DRACO ※プライム扱い、掲載時25%OFFクーポンあり
免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして Easy Earphones より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
「TRI DRACO」のパッケージは黒いボックスを星雲をイメージした化粧カバーで覆ったパッケージデザイン。少し高級感を感じさせるパッケージングになっていますね。


パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、イヤーピース(通常タイプ、開口部の広いタイプ、「TRI Clarion」タイプがそれぞれS/M/Lサイズ)、ケース、説明書。


アルミニウム合金製のシェルは非常にコンパクトで耳に収まりの良いサイズ感です。質感も良く非常にクールなデザインですね。リアキャビティは円形のベント(空気孔)があるフェイス部分に加え、側面も2カ所スリット上のベントがあります。


ステムノズルは一般的な太さで、イヤーピースも合わせやすい印象。本体がコンパクトのため写真では相対的にステムが太く見えますね。イヤーピースは「TRI Clarion」が各サイズ付属するため耳に合う場合はそのまま利用するのが良いでしょう。私はサイズ的な理由で今回も「TRN T-Eartips」に好感しました。


ケーブルは銀メッキ線の撚り線タイプ。コネクタは中華2pinなので幅広くリケーブルの選択肢があるのはメリットでしょう。なお、開放型のイヤホンのためフェイス及び側面のベントから盛大に音漏れをしますので静かな部屋での利用はご注意ください。
■ サウンドインプレッション
「TRI DRACO」の音質傾向は全体的なバランスの良さを踏襲しつつ、傾向としてはこの手の2DD製品の多くが採用してる「H-2019」寄りの弱ドンシャリ傾向にまとめられています。「TRI Audio」や「KBEAR」というと結構分かりやすいV字方向のドンシャリサウンドというイメージがあり、実際同じく2DDモデルの「TRI Star River」はいかにも同社らしいサウンドというイメージでしたが、今回はどちらかというとニュートラル方向の調整で結構印象が異なります。さらにオープンバック構造による開放型にすることで音場感を拡張し、ドンシャリ的なメリハリとは異なりつつもリスニング的な楽しさを加えています。過去にも記載していますが、最近の2DD構成の製品(サイズの異なる2基のドライバーで帯域を補完しクロスオーバーを調整するタイプ)は「Truthear ZERO」の成功が起点とされます。「Truthear ZERO」では低コストで「H-2019」ハーマンターゲットカーブに極めて近いサウンドプロファイルを実現するために、低域用の大口径ドライバーを追加しクロスオーバー制御する2DD方式を採用した経緯もあり、そのフォロワーとなる以降の2DD製品も多かれ少なかれ似たようなアプローチで設計されています。
そんななかでも「TRI」「KBEAR」的チューニングを優先した「Star River」に対して、「TRI DRACO」ではある意味セオリー通りの音作りを行い、独自の開放型構造を採用することで寒色系で抜けの良いキャラクターを加えているという捉え方もできそうです。インピーダンス18Ω、感度105dB/mWという仕様で再生自体は小型のオーディオアダプター等でも普通に音量は取れますがインピーダンス低め感度低めのイヤホンの通例で、ある程度駆動力のある(≓電流量が多く駆動が安定している)再生環境でゲインを(低めに)調整して再生するほうが、全体的に鮮やかさや明瞭感が向上します。またリケーブルでの変化も大きい印象ですが癖の強いケーブルだとバランスが崩れるため、情報量をアップしつつ味付けの無い傾向のものを選ぶほうが良さそうです。
「TRI DRACO」の高域はオープンバック構造による開放型とすることで、過度な主張はないものの明瞭で抜けの良い音を鳴らします。刺激を抑え聴きやすくまとめつつも曇ること無く綺麗に鳴りますが、解像感は一般的な印象のため、スッキリした伸びのある高域を好まれる方には物足りなさも感じるでしょう。とはいえ、ボーカル曲を主眼に置いたチューニングと捉えると、音数の多い曲で刺激を抑えつつ聴きやすくまとめる、というアプローチはある程度うまく達成できていると感じます。中音域は凹むことなく癖の無いニュートラルな音を鳴らします。いつもはV字方向のドンシャリでまとめる「TRI」「KBEAR」が今回の「TRI DRACO」ではH-2019ぽいチューニングにしているのは、この中音域の前傾させ、ボーカル曲、特にJ-POPやアニソンなどのジャンルと相性が良いサウンドに仕上げるためと考えられます。
そのためボーカルは女性、男性とも近く鮮やかさやがあり、エネルギッシュです。いわゆるミッドセントリックな音作りを行いつつ、同社らしい寒色系のキレの良さやスピード感を実現するためのアプローチが独自のオープンバック構造なのだろうと感じます。ただ「TRI DRACO」が本気を出すためにはある程度の駆動力のあるDAPやアンプの利用が望ましいでしょう。音場は左右に広さがあり抜けが良い印象ですが、空間表現は正確さより音数が多い曲でも混雑せずレイヤー感を維持させることに注力しているように感じます。この辺も打ち込みが主流となる最近の楽曲を意識したチューニングですね。
低域は8mmサイズの低域用LCP振動板ドライバーによりミッドベースを中心に十分な量感がありますが、開放型構造を採用しているため特に重低音はやや音抜けし深さはそれほどではありません。これは高域及び中音域をフォローする6mmドライバーを中心に、低域用の8mmドライバーでブーストするというドライバー構成を採用しつつも、そこに開放型構成で抜け感を加えることで相対的に低域がニュートラル方向に大人しくなる、というややマッチポンプ的なチューニングを行っている事も多少影響しているのかも知れません。そのため低域の質感を求める方には多少物足りなさがあると思いますが、中高域との分離も良く、ミッドベースは過度に膨らむこと無く鳴りつつも金属ハウジングとの相乗効果で適度な響きがあるため全体としては自然なバランスにまとまっている印象です。
■ まとめ
というわけで、「TRI DRACO」は金属シェルによるクールな外観にオープンバック構造の開放型2DD構成という興味深い仕様を採用し、ボーカル曲、特に打ち込み主体で音数が多いJ-POPやアニソンと相性が良いスピード感のあるサウンドが印象的でした。最近はアンダー100ドル級もU字方向、ニュートラル傾向で上位の価格帯の製品の廉価版のようなアプローチが増えていますが、今回の「TRI DRACO」は、従来のKBEARおよびTRIのドンシャリ傾向ともまた異なり、さらに独自の個性をもったサウンドチューニングが楽しい製品だと感じました。それでも同社らしいバランス感覚の良さはしっかり踏襲している点はさすがですね。
既に複数のイヤホンを持っており、ある程度の再生環境やリケーブルも楽しめるマニア層を対象とした製品として、という前提ではありますが、興味のある方は購入してみるのも良いと思いますよ。