
こんにちは。今回は 「Truthear NOVA」です。昨年秋頃にリリースされた「Truthear」の4BA+1DD構成のハイブリッドモデルですね。発売後わりとすぐに購入していたのですが、その頃から本業の方が忙しくなっていたこともあり例によって「積み」になっておりました。
■ 製品概要と購入方法について
「TRUTHEAR」は2022年に登場した深圳の新しい中華イヤホンブランドです。高度な音響設計技術と、DLP 3Dプリンティングによる高精度シェルにより、低価格ながら高品質のイヤホンを相次いでリリースしています。MoondropやSoftearsなどと関係がある企業との情報もあり、同社は科学的で「成熟した」音作りについてのノウハウにより低コストの製品作りを得意としているようです。
最初のモデルである2DD構成の「ZERO」は有名レビュアーのCrinacle氏とのコラボで、いきなりマニアの間でも大きく話題になりました。その後も3BA+1DDの「HEXA」、1DD構成の「HOLA」および「ZERO」に新たなチューニングを加えた「ZERO: RED」をリリースし、どの製品も高い評価を受けています。そして上位モデルとなる「NOVA」は秋頃に発売されました。


今回の「Truthear NOVA」は同社としては初めて100ドルオーバーとなる上位モデルで、ドライバー構成は4BA+1DDのハイブリッド仕様。緻密な音響設計をHeyGears製の高精細DLP 3Dプリントにより具現化したシェルに10mm PU+LCP複合振動板ダイナミックドライバーの搭載など「ZERO」から一貫したベーステクノロジーを踏襲しつつ、新たにSWFKに近い特性を持つ高域用2BAユニットと中音域および各音域との調整を行うフルレンジ2BAユニットの2種類のBAを追加し、音質面をグレードアップしています。
低域を担う10mmサイズのダイナミックドライバーは同社のモデルで多く使用されるPU(ポリウレタン)サスペンションとLCP(液晶ポリマー)ドームによる複合振動板およびN52マグネットと独自CCAWボイスコイルを採用しており、パンチのある低域と正確な低域の表現を可能にしています。また高域用と中音域用には2種類のバランスド・アーマチュア(BA)ドライバーを搭載。高域用の2BAユニットは(Knowlesの)SWFKシリーズに類似した特性を持つツイーターユニットを搭載し、よりワイドレンジでスムースかつクリアな高域を実現。
さらにフルレンジ仕様の2BAユニットを搭載し、低域用ダイナミックドライバーと完全にシンクロし、高域用BAとも連携し、目標とする音響設計に沿ったサウンドを実現させます。
音響設計においては「ハーマンターゲットカーブ」において「Harman IE 2019」より低域が僅かに低く、よりHRTF特性が高い「Harman OE 2013」の高周波特性に近いチューニングを行い、より自然かつ滑らかなサウンドを実現しています。3Wayハイブリッドである「Truthear NOVA」は各音域で同位相を実現しており、音域ごとの断絶が無く自然かつリアルなサウンドを体感できます。


ケーブルには0.78mm 2pin仕様で、4芯タイプの高純度単結晶銅線ケーブルを採用。芯ごとに112本、合計448本の線材を使用し、布張りの被膜を採用しています。またイヤーピースはシリコン製に加え、ウレタンフォーム製、2種類のダブルフランジタイプを同梱します。


「Truthear NOVA」の価格は149.99ドル。購入はAliExpressのオフィシャルストアのほか、Shenzhenaudioなどの取扱店舗にて。レビュー掲載時点では国内版のリリースおよびアマゾンでの出品は無いようですね。
AliExpress(Truthear Official Store): Truthear NOVA
Amazon.co.jp(シンセンオーディオ): Truthear NOVA 22,299円
免責事項:
本レビューは個人的に製品を購入し掲載している「購入者レビュー」となります。
本レビューに対してそれ以外の金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
つわけで、昨年の12月前半には届いていて開封写真を撮っていたような・・・。本業の年末進行が忙しすぎてほぼ記憶が無いっすね(汗)。パッケージは今回も同社キャラの「SHIORI」が描かれています。また購入サイトではブロックフィギュア付きも選べるみたいですね。そこまでニーズがないのか発売後数ヶ月が経過したレビュー時点でも選択可能です。


パッケージ内容は、イヤホン本体、ケーブル、イヤーピースが標準タイプがS/M/Lサイズ、ウレタンフォーム製1ペア、ダブルフランジが黒、白の2タイプでそれぞれ1ペア、レザーポーチ、説明書。


本体は3Dプリントによる樹脂製で非常に軽量です。ブルーのフェイスパターンは「ZERO」を踏襲していますね。「ZERO」もなかなか大きいシェルさいずでしたが今回もシェルは結構大きめです。側面に4つの穴が開いたベントがあります。一体成形されているステムノズルも太めのため、イヤーピースは軸が広いタイプが付属します。


シェルサイズは大きいため装着感は人を選ぶかもしれません。耳へのフィット感という意味では「ZERO」より自然なデザインとなっており、イヤーピースを合わせれば思いのほかしっかり装着できる印象。とはいえサイズ故に耳への相性は結構あると思います。付属イヤーピースで合わない場合はスパイラルドットやAZLAなどの開口部が太く、浅めのイヤーピースを選択するのが良いでしょう。逆に耳が小さい方はダブルフランジの組み合わせでさらにリーチを伸ばすほうが良い場合も多いですね。耳穴が小さい私の場合は白色ダブルフランジがいちばんしっくりしました。


ケーブルは布張りの4芯線で、従来のTruthearのイヤホンと比較して最もグレードアップ感がある部分ですね。多少太さもありますが取り回しも良く使いやすい印象です。ただタッチノイズが結構大きいのと太さ故に屋外での利用にはあまり向かない点は要注意です。まあ同社のイヤホン買う方は大抵リケーブルしてるマニア層ぽいのであまり関係ないかもですが(^^;)。
■ サウンドインプレッション
「Truthear NOVA」の音質傾向はかなりフラットな印象のニュートラルバランス。フラット系のサウンドというと同社では既に「HEXA」がかなりフラットな印象だったのですが、個人的には「良くできてるけど優等生過ぎて面白くない」と感じた要素もありました(「HEXA」のサウンドを絶賛しているレビュアーも結構多いのであくまで私感とご理解ください)。これに対し「Truthear NOVA」はより聴覚特性に配慮し、ある程度の彩りを感じさせる豊かさがあります。またリスニング的な印象においても「SIMGOT EM6L」のようなハーマン準拠の評価の高い製品と比較しても遜色無く、同時にモニター的、リファレンス的な印象も併せ持っている、という感じです。「Truthear NOVA」の高域はスムーズな伸びやかさを持っていますが、適度に刺激をコントロールされ自然な印象にまとめられています。印象としてはフラットバランスの「HEXA」に近いものの、解像感が大きく向上しており、より高高域まで精緻に描写している印象があります。中音域とのバランスで煌びやかさはやや控えめですが、質の良い銀メッキ線や合金線などにリケーブルすると一気に鮮やかさが増し瑞々しい印象になります。ポテンシャルの高さを感じる高域です。
中音域は癖の無いフラットな印象ながら解像感や1音1音の質感は「HEXA」を含め従来モデルより大きく向上しており、より実在感のある空間表現を実感出来ます。一般的なドンシャリ傾向のようなメリハリは無いため一聴するとやや淡泊な印象に感じる可能性もありますが、中高域のアクセントが若干増加することで音像の色彩は豊かになっています。音像は自然な輪郭ながら分離も良く描写も適切です。音場は左右に広く自然な印象で奥行きの強調は無いものの「HEXA」より前後の空間表現が若干向上しており、分析的だけでなくリスニング的な印象も向上しています。低域はよりハーマンターゲット的なバランスとなっており、フラット傾向の「HEXA」より若干の強調感があります。低域自体は力強くインパクトがあり、ミッドベースはタイトでスピード感がある印象のため、適切に空間を捉えることができますし、重低音も優れた深さと重量感の表現があります。
ただし、特に付属ケーブルではミッドセントリックなバランスとなるため、全体としては低域はやや控えめな印象となる場合もあります。付属ケーブルではボーカル曲に比べてオーケストラ演奏などのクラシックなどは響きなどに物足りなさを感じるかもしれませんね。とはいえ低域についてもポテンシャルの高い印象でリケーブルで「化ける」要素があるため、いろいろ試して見るのも楽しいでしょう。
また「Truthear NOVA」は比較的鳴らしやすいイヤホンですが再生環境をいろいろ変えてみて変化を楽しむのも良いと思います。
■ まとめ
というわけで、「Truthear NOVA」は同社としては初めて100ドルを超えた製品となりましたが、「HEXA」では物足りなかったユーザーには待望の製品に仕上がっていると感じました。ただ他社の同価格帯の製品と比較して、非常にニュートラルかつフラットな印象のため、リスニング的な楽しさとを求めるタイプのイヤホンではありませんが、「中低価格でハーマンターゲットをやると粗さが出る」と一般的に言われた要素を、低価格イヤホンながら徹底した科学的アプローチで払拭してきた「Trurhear」の現時点での「解答」と呼べるレベルの仕上がりにはなっていると思います。あとはこのようなサウンドが「好き」かどうか、そもそもこの価格レンジでリファレンス的なアプローチが必要か否か、という「個人的な選択の問題」となってくるかも知れませんね。もっとも同社のイヤホンを購入した多くのマニアがリケーブルを行っていることからも伺えますが、このニュートラルさを「素材」として捉えて、いろいろな特徴のあるケーブルや上流を試すことで(「ZERO:RED」は最初からアッテネーターが付属していましたね^^;)、より自分好みのサウンドに近づけるというアプローチは非常に楽しいものです。「Truthear NOVA」はそういった意味でもステージをひとつ上げてくれるイヤホンではないかと思いますよ。