
こんにちは。今回は 「IKKO ITM05 Music Pach」です。中国のオーディオブランド「ikko Audio」(アイコーオーディオ)のスマートフォン用オーディオアダプタで、背面に貼り付けるデザインと充電ポートを確保した仕様が特徴的な製品です。2019年にクラウドファンディングでの募集が行われ、2020年11月頃に日本でも正式に販売開始されました。
こだわりが詰まった製品のため、発売当初は多少のトラブルもあったようですが、ストリーミングでのリスニングが当然のものとなり、さらに「Amazon Music HD」など高音質の配信サービスも定着しつつある今だからこそ、音質面とあわせて使い勝手の良さも考慮された「IKKO ITM05」のニーズが高まりそうな気がします。というわけで、国内販売元のIC-CONNECTさんから試聴機を数週間お借りしてのレビューとなります。


「IKKO ITM05 Music Pach」は、スマートフォン用の「USB Type-C」またはiPhone用の「Lightning」コネクタ用のオーディオアダプターで、スマートフォンの背面に貼り付けるように取付け、一体化して使用できる点が最大の特徴です。インピーダンス600Ωにも対応する高出力・低ノイズの3.5mmステレオと2.5mmバランス接続端子を搭載するとともに、スマートフォンに給電する充電用ポートも装備しており、充電の度に取り外す事なく「IKKO ITM05」を付けたままで使用できる点もポイントです。


DACチップにはDAP(デジタルオーディオプレーヤー)での搭載実績も多いCirrus Logic「CS43198」をデュアルで搭載。同様に「CS43198」デュアル構成のDAPでは「iBasso DX160」や「HiBy R5」などがあり、普段使っているスマートフォンで手軽に高音質DAP相当のサウンドを楽しむことが出来ます。


また「IKKO ITM05」には標準で、据置きDAC/ヘッドフォンアンプとして利用できる専用DOCKユニット「ITM06S」が付属。DOCKユニットはUSB 3.0対応のHUBポート(USB-A、USB-Cが1ポートずつ)およびマイクを搭載し、オーディオアダプターとしての幅広い活用が可能です。
「IKKO ITM05 Music Pach」の価格は 23,000円(税込み、アマゾン価格)です。
コネクタ仕様で「Lightning」と「USB Type-C」が選択できます。
Amazon.co.jp(IC-CONNECT): IKKO ITM05 Music Pach
■ 想像以上にコンパクト&軽量。充電ポート付きで装着したままで継続利用も可能
今回はiPhone用のLightning対応モデルを試聴機でお借りしました。いっぽうのUSB Type-C対応モデルはAndroidスマートフォンおよびタブレットのほか、OTG接続でUSB Audio Class 2.0に対応するデバイスで使用できます。具体的にはWindowsタブレットや「Nintendo Switch」などのゲーム機でも使用できるそうです。
なお、写真の通り現在販売されている「IKKO ITM05 Music Pach」は初期ロットとはパッケージデザインが大きく変更になっています。製品としてもより安定したロットとなっているようです。


パッケージには、「IKKO ITM05」のほか、DOCKユニット(ITM06S)、PC接続用USBケーブル、Lightningケーブル(Lightningモデル)、交換用滑り止めシール、説明書など。


「IKKO ITM05」の本体サイズは5cmの正方形で、厚さ本体に引っかける部分を含めて1.2cm、本体部分は1cmほどで、重量は30g。写真で見た印象より結構コンパクトかつ軽量に感じました。本体上面部分はフェイクレザー風の柔らかいウレタン素材で手触りはとてもソフトです。
コネクタ側が3.5mmステレオポート、反対側が2.5mmバランス接続ポートとちょっと変則的な配置となっています。3.5mmポートの反対側には充電用のLightningポートがあります(もちろんUSB Type-CモデルではUSB Type-Cポートとなります)。これにより「IKKO ITM05」を接続したまま充電などが可能となり、同製品が他の小型オーディオアダプターと大きく異なるポイントになりますね(なお充電用ポートは充電専用でデータ転送には対応しないようです)。


本体底面には棒状の滑り止めが5本貼られており、スマートフォンと適度に密着します。コネクタ部分は伸縮し、いちおうカバーをつけた状態でも接続が可能な仕様になっています。ただコネクタの付け根部分の高さは少ないためコネクタ部分が穴状になっている厚みのあるケースでは利用できない場合があるのは注意点です。ちなみに、普通サイズのiPhone 12 Pro(Maxじゃないほう)でも「IKKO ITM05」を装着した状態でApple Payのチップ部分はもちろん、ワイヤレス充電を行う部分が塞がることはないため、普段から付けっぱなしでもあまり困ることは無さそうです。


そして「IKKO ITM05」本体より存在感があり、そこそこ重量もあるのがDOCKユニットの「ITM06S」です。据置き利用を前提としているアダプタのためずっしりとした安定感を重視した設計のようですね。ON/OFFボタンのあるマイクが付いていたりUSB HUBとして使えたりとギミックも豊富です。なお、「ITM06S」を介して「IKKO ITM05」をWindows搭載PCと接続する場合は、IC-CONNECT社の製品ページの「サポート」からダウンロード可能なWindows用ドライバーをインストールすることで利用が可能です。MacについてはUSB Audio Class 2.0準拠のデバイスのため、接続しただけで問題なく利用できました。
■ Dual DACチップによる高い解像感と小型アダプタより余裕のある安定した出力が魅力
「IKKO ITM05」のサウンドはスティック型の小型DAC/オーディオアダプターとは一線を画する余裕のある広めの音場表現が印象的です。癖のない音でイヤホンの特徴を引き出しつつ、いっぽうでボーカル帯域を中心とした瑞々しさも感じます。音像の描写は自然で過度にエッジが立つことはありませんが音数の多くテンポの速い曲でもしっかり捉える解像感とキレの良さがあり、高音質なプレーヤーアプリや「Amazon Music HD」の「UltraHD」音源などでは「IKKO ITM05」を組み合わせた効果をしっかり実感できると思います。
通常のAndroidスマートフォンで「Amazon Music HD」を使用する場合、SRC(サンプリングレートコンバータ)の影響により24bit/48kHzに上限が制限されますが(HUAWEI製の一部モデルは24bit/96kHz)、当然「IKKO ITM05」でも例外ではありません。Androidで「IKKO ITM05」の最大32bit/384kHz、あるいはDSD256のスペックを引き出すためには、「UAPP(USB Audio Player Pro)」や「Onkyo HF Player」などのハイレゾプレーヤーアプリを使用する必要がある点も基本的には同様です。
これに対してiPhoneではASIOと似た仕組みのCoreAudioにより「IKKO ITM05」のスペックを普通に引き出すことができるため、「Amazon Music HD」アプリでも上限値の「24bit/192kHz」対応アダプターとして認識されます。この時点でiPhoneとLightning版「IKKO ITM05」の組み合わせは、ストリーミングアプリ利用を前提とした場合は、SRC回避を行ったAndroid搭載DAP専用機と同等の性能を持ち、アプリのパフォーマンスや利便性ではDAPを軽く凌駕するオーディオプレーヤーとして使えることがわかりますね。
DACチップの「CS43198」自体は同社の小型アダプター「Zerda ITM03」でもシングルで搭載されていますが、「IKKO ITM05」では左右で独立したデュアル搭載とすることでより優れた解像感と高出力を実現しています。聴いた印象しても「ITM03」がとても穏やかな印象ながら捉え方によっては多少の緩さを感じる部分があったものの、「IKKO ITM05」では自然な音の方向性を維持したまま解像感や音域ごとの見通しの良さが大きく向上した印象です。それでもスティック型DACの「iBasso DC03/DC04」のようなパワフルながら多少エッジの効いた印象の音とは異なり、キレの良さとともに自然な描写が特徴的です。
またスペックでもTHD+N 0.0008 %、SN比 122dBと記載されていますが、ノイズ特性の高さも大きな特徴のひとつで、感度の良いマルチBAイヤホンやCIEMでホワイトノイズを感じさせないクリアなサウンドとともに前述の見通しの良さやダイナミックレンジの広さを実感できる理由のひとつになっています。さらにCirrus Logic製DACチップの特徴のひとつとされるDSD音源の再生能力の高さも対応するハイレゾプレーヤーアプリで実感することが出来ました。
そして、多くの小型オーディオアダプターと比較して、音圧を上げたときの歪みがより少ないことも「IKKO ITM05」の大きな特徴といえるでしょう。「IKKO ITM05」は「ITM03」より高い出力を持っており、ヘッドフォン等もある程度鳴らせる駆動力を持っています。とはいえ、スペック的には「iBasso DC04」などのほうが出力は大きいのですが、「IKKO ITM05」ではゲインを上げても小型DAC特有の歪みが少なく、比較的安定した音質を実現できています。
一般的にスティック型などの小型DACではスマートフォンからの供給電力や本体サイズの制約から、低電力(&低発熱)で高出力なアンプチップを使用する必要があります。そのため通常の高音質DAPやアンプよりアンプチップの特性としてゲインを上げた際の電気的な歪みが大きくなることを回避できません。そのため「DC04」などでは元々の出力を非常に高くすることで低ゲインでの駆動力を確保するアプローチを取っていますが、そうなると逆に反応の良いイヤホンでの「絞り込み」が難しくなる傾向になってしまいます(iBassoは音量調節の段階数を増やしてより細かい音量調整ができるアプリを提供することで対応しています)。
いっぽう「IKKO ITM05」の場合、例えば「ikko Audio」の製品でも鳴らすのに特に駆動力を必要とする「IKKO Musikv OH7」のような製品でも、駆動力のあるDAPで鳴らすのと同様にしっかりとした音で聴くことが出来ます。「IKKO ITM05」では専用アプリのようなものは特に提供されていませんが、スマートフォンの音量調節で反応の良いCIEMも、鳴らしにくいシングルダイナミックも普通に使える、というのはこの手の製品では「普通はできそうでできない」要素かもしれませんね。これは最近増えている小型オーディオアダプターのなかで「IKKO ITM05」を選ぶアドバンテージだと思います。
ただし、「IKKO ITM05」は本体でバッテリーを持たない仕様のため、「IKKO Musikv OH7」のような駆動力を必要とするイヤホンを使っていると結構な勢いでスマートフォン側のバッテリーを消費します。組み合わせるイヤホンによっては通常の3分の2程度にまで稼働時間が短くなることもありました。
まあ「IKKO ITM05」は充電できるポートもついているため、さらにモバイルバッテリーなどを繋げば良いという話もあるわけですが、どうせならもう少し本体サイズを大きくしてでもバッテリーを搭載してほしかった部分ではありますね。また通常のヘッドホンは普通に鳴らす駆動力がありますが、beyerdynamicやAKGなどの鳴らしにくい製品との相性は今ひとつな印象です。ただこれもスマートフォンからの電源供給に依存している部分が理由として大きく、据置き環境でDOCKユニット「ITM06S」を組み合わせ、PC/Macと接続した場合はかなり印象が改善されました。この辺の「使い分け」もDOCKユニットを最初から同梱することで同社が提案していることなのかも知れませんね。
というわけで、出張での移動も含めて「IKKO ITM05」をいろいろなシーンで使用してみましたが、発売当初にSNS上で見受けられた不具合に遭遇することも無く、安定して高い能力を堪能することが出来ました。組み合わせるイヤホンや利用するシーンが合致すれば非常に使いやすく、便利なデバイスだと思います。小型オーディオアダプタと比べると多少価格がアップしますし、最近では4万円以下のAndroid搭載DAP製品等も比較対象に入る可能性もある点では確かに「微妙な価格設定」といえなくはないのですが特にストリーミングでの利用をメインに考えている方の場合、お手持ちのスマートフォンと組み合わせることでより便利に感じるのではと思います。
あとマーケティング的にはより微妙かもしれませんが、個人的には「もっと攻めた仕様でも良かったのでは」という感想もあります。確かにスティック型の小型DACと比べて「IKKO ITM05」がメリットを感じる部分もいろいろありますし、音質面でも余裕のある鳴り方はこのサイズ感があってのことだと思います。しかし、どうせならDACチップだけでなく、より高出力なヘッドフォンアンプ用チップを採用し駆動力&音質の向上を行ったり、モバイルバッテリー機能も持つなど「スティック型では絶対出来ない差別化」要素が加わればさらに魅力的だろうと感じました。代わりにDOCKユニットは別売のオプション扱いでも良かったかもしれませんね。逆に言えばこのような要望を感じるくらい非常に魅力的な製品であることは間違いないでしょう。ニーズに合致された方には十分にお勧めできる良い選択肢になるのではと思いますよ(^^)。


「IKKO ITM05 Music Pach」は、スマートフォン用の「USB Type-C」またはiPhone用の「Lightning」コネクタ用のオーディオアダプターで、スマートフォンの背面に貼り付けるように取付け、一体化して使用できる点が最大の特徴です。インピーダンス600Ωにも対応する高出力・低ノイズの3.5mmステレオと2.5mmバランス接続端子を搭載するとともに、スマートフォンに給電する充電用ポートも装備しており、充電の度に取り外す事なく「IKKO ITM05」を付けたままで使用できる点もポイントです。


DACチップにはDAP(デジタルオーディオプレーヤー)での搭載実績も多いCirrus Logic「CS43198」をデュアルで搭載。同様に「CS43198」デュアル構成のDAPでは「iBasso DX160」や「HiBy R5」などがあり、普段使っているスマートフォンで手軽に高音質DAP相当のサウンドを楽しむことが出来ます。


また「IKKO ITM05」には標準で、据置きDAC/ヘッドフォンアンプとして利用できる専用DOCKユニット「ITM06S」が付属。DOCKユニットはUSB 3.0対応のHUBポート(USB-A、USB-Cが1ポートずつ)およびマイクを搭載し、オーディオアダプターとしての幅広い活用が可能です。
「IKKO ITM05 Music Pach」の価格は 23,000円(税込み、アマゾン価格)です。
コネクタ仕様で「Lightning」と「USB Type-C」が選択できます。
Amazon.co.jp(IC-CONNECT): IKKO ITM05 Music Pach
■ 想像以上にコンパクト&軽量。充電ポート付きで装着したままで継続利用も可能
今回はiPhone用のLightning対応モデルを試聴機でお借りしました。いっぽうのUSB Type-C対応モデルはAndroidスマートフォンおよびタブレットのほか、OTG接続でUSB Audio Class 2.0に対応するデバイスで使用できます。具体的にはWindowsタブレットや「Nintendo Switch」などのゲーム機でも使用できるそうです。
なお、写真の通り現在販売されている「IKKO ITM05 Music Pach」は初期ロットとはパッケージデザインが大きく変更になっています。製品としてもより安定したロットとなっているようです。


パッケージには、「IKKO ITM05」のほか、DOCKユニット(ITM06S)、PC接続用USBケーブル、Lightningケーブル(Lightningモデル)、交換用滑り止めシール、説明書など。


「IKKO ITM05」の本体サイズは5cmの正方形で、厚さ本体に引っかける部分を含めて1.2cm、本体部分は1cmほどで、重量は30g。写真で見た印象より結構コンパクトかつ軽量に感じました。本体上面部分はフェイクレザー風の柔らかいウレタン素材で手触りはとてもソフトです。
コネクタ側が3.5mmステレオポート、反対側が2.5mmバランス接続ポートとちょっと変則的な配置となっています。3.5mmポートの反対側には充電用のLightningポートがあります(もちろんUSB Type-CモデルではUSB Type-Cポートとなります)。これにより「IKKO ITM05」を接続したまま充電などが可能となり、同製品が他の小型オーディオアダプターと大きく異なるポイントになりますね(なお充電用ポートは充電専用でデータ転送には対応しないようです)。


本体底面には棒状の滑り止めが5本貼られており、スマートフォンと適度に密着します。コネクタ部分は伸縮し、いちおうカバーをつけた状態でも接続が可能な仕様になっています。ただコネクタの付け根部分の高さは少ないためコネクタ部分が穴状になっている厚みのあるケースでは利用できない場合があるのは注意点です。ちなみに、普通サイズのiPhone 12 Pro(Maxじゃないほう)でも「IKKO ITM05」を装着した状態でApple Payのチップ部分はもちろん、ワイヤレス充電を行う部分が塞がることはないため、普段から付けっぱなしでもあまり困ることは無さそうです。


そして「IKKO ITM05」本体より存在感があり、そこそこ重量もあるのがDOCKユニットの「ITM06S」です。据置き利用を前提としているアダプタのためずっしりとした安定感を重視した設計のようですね。ON/OFFボタンのあるマイクが付いていたりUSB HUBとして使えたりとギミックも豊富です。なお、「ITM06S」を介して「IKKO ITM05」をWindows搭載PCと接続する場合は、IC-CONNECT社の製品ページの「サポート」からダウンロード可能なWindows用ドライバーをインストールすることで利用が可能です。MacについてはUSB Audio Class 2.0準拠のデバイスのため、接続しただけで問題なく利用できました。
■ Dual DACチップによる高い解像感と小型アダプタより余裕のある安定した出力が魅力
「IKKO ITM05」のサウンドはスティック型の小型DAC/オーディオアダプターとは一線を画する余裕のある広めの音場表現が印象的です。癖のない音でイヤホンの特徴を引き出しつつ、いっぽうでボーカル帯域を中心とした瑞々しさも感じます。音像の描写は自然で過度にエッジが立つことはありませんが音数の多くテンポの速い曲でもしっかり捉える解像感とキレの良さがあり、高音質なプレーヤーアプリや「Amazon Music HD」の「UltraHD」音源などでは「IKKO ITM05」を組み合わせた効果をしっかり実感できると思います。通常のAndroidスマートフォンで「Amazon Music HD」を使用する場合、SRC(サンプリングレートコンバータ)の影響により24bit/48kHzに上限が制限されますが(HUAWEI製の一部モデルは24bit/96kHz)、当然「IKKO ITM05」でも例外ではありません。Androidで「IKKO ITM05」の最大32bit/384kHz、あるいはDSD256のスペックを引き出すためには、「UAPP(USB Audio Player Pro)」や「Onkyo HF Player」などのハイレゾプレーヤーアプリを使用する必要がある点も基本的には同様です。
これに対してiPhoneではASIOと似た仕組みのCoreAudioにより「IKKO ITM05」のスペックを普通に引き出すことができるため、「Amazon Music HD」アプリでも上限値の「24bit/192kHz」対応アダプターとして認識されます。この時点でiPhoneとLightning版「IKKO ITM05」の組み合わせは、ストリーミングアプリ利用を前提とした場合は、SRC回避を行ったAndroid搭載DAP専用機と同等の性能を持ち、アプリのパフォーマンスや利便性ではDAPを軽く凌駕するオーディオプレーヤーとして使えることがわかりますね。
DACチップの「CS43198」自体は同社の小型アダプター「Zerda ITM03」でもシングルで搭載されていますが、「IKKO ITM05」では左右で独立したデュアル搭載とすることでより優れた解像感と高出力を実現しています。聴いた印象しても「ITM03」がとても穏やかな印象ながら捉え方によっては多少の緩さを感じる部分があったものの、「IKKO ITM05」では自然な音の方向性を維持したまま解像感や音域ごとの見通しの良さが大きく向上した印象です。それでもスティック型DACの「iBasso DC03/DC04」のようなパワフルながら多少エッジの効いた印象の音とは異なり、キレの良さとともに自然な描写が特徴的です。またスペックでもTHD+N 0.0008 %、SN比 122dBと記載されていますが、ノイズ特性の高さも大きな特徴のひとつで、感度の良いマルチBAイヤホンやCIEMでホワイトノイズを感じさせないクリアなサウンドとともに前述の見通しの良さやダイナミックレンジの広さを実感できる理由のひとつになっています。さらにCirrus Logic製DACチップの特徴のひとつとされるDSD音源の再生能力の高さも対応するハイレゾプレーヤーアプリで実感することが出来ました。
そして、多くの小型オーディオアダプターと比較して、音圧を上げたときの歪みがより少ないことも「IKKO ITM05」の大きな特徴といえるでしょう。「IKKO ITM05」は「ITM03」より高い出力を持っており、ヘッドフォン等もある程度鳴らせる駆動力を持っています。とはいえ、スペック的には「iBasso DC04」などのほうが出力は大きいのですが、「IKKO ITM05」ではゲインを上げても小型DAC特有の歪みが少なく、比較的安定した音質を実現できています。
一般的にスティック型などの小型DACではスマートフォンからの供給電力や本体サイズの制約から、低電力(&低発熱)で高出力なアンプチップを使用する必要があります。そのため通常の高音質DAPやアンプよりアンプチップの特性としてゲインを上げた際の電気的な歪みが大きくなることを回避できません。そのため「DC04」などでは元々の出力を非常に高くすることで低ゲインでの駆動力を確保するアプローチを取っていますが、そうなると逆に反応の良いイヤホンでの「絞り込み」が難しくなる傾向になってしまいます(iBassoは音量調節の段階数を増やしてより細かい音量調整ができるアプリを提供することで対応しています)。いっぽう「IKKO ITM05」の場合、例えば「ikko Audio」の製品でも鳴らすのに特に駆動力を必要とする「IKKO Musikv OH7」のような製品でも、駆動力のあるDAPで鳴らすのと同様にしっかりとした音で聴くことが出来ます。「IKKO ITM05」では専用アプリのようなものは特に提供されていませんが、スマートフォンの音量調節で反応の良いCIEMも、鳴らしにくいシングルダイナミックも普通に使える、というのはこの手の製品では「普通はできそうでできない」要素かもしれませんね。これは最近増えている小型オーディオアダプターのなかで「IKKO ITM05」を選ぶアドバンテージだと思います。
ただし、「IKKO ITM05」は本体でバッテリーを持たない仕様のため、「IKKO Musikv OH7」のような駆動力を必要とするイヤホンを使っていると結構な勢いでスマートフォン側のバッテリーを消費します。組み合わせるイヤホンによっては通常の3分の2程度にまで稼働時間が短くなることもありました。
まあ「IKKO ITM05」は充電できるポートもついているため、さらにモバイルバッテリーなどを繋げば良いという話もあるわけですが、どうせならもう少し本体サイズを大きくしてでもバッテリーを搭載してほしかった部分ではありますね。また通常のヘッドホンは普通に鳴らす駆動力がありますが、beyerdynamicやAKGなどの鳴らしにくい製品との相性は今ひとつな印象です。ただこれもスマートフォンからの電源供給に依存している部分が理由として大きく、据置き環境でDOCKユニット「ITM06S」を組み合わせ、PC/Macと接続した場合はかなり印象が改善されました。この辺の「使い分け」もDOCKユニットを最初から同梱することで同社が提案していることなのかも知れませんね。というわけで、出張での移動も含めて「IKKO ITM05」をいろいろなシーンで使用してみましたが、発売当初にSNS上で見受けられた不具合に遭遇することも無く、安定して高い能力を堪能することが出来ました。組み合わせるイヤホンや利用するシーンが合致すれば非常に使いやすく、便利なデバイスだと思います。小型オーディオアダプタと比べると多少価格がアップしますし、最近では4万円以下のAndroid搭載DAP製品等も比較対象に入る可能性もある点では確かに「微妙な価格設定」といえなくはないのですが特にストリーミングでの利用をメインに考えている方の場合、お手持ちのスマートフォンと組み合わせることでより便利に感じるのではと思います。
あとマーケティング的にはより微妙かもしれませんが、個人的には「もっと攻めた仕様でも良かったのでは」という感想もあります。確かにスティック型の小型DACと比べて「IKKO ITM05」がメリットを感じる部分もいろいろありますし、音質面でも余裕のある鳴り方はこのサイズ感があってのことだと思います。しかし、どうせならDACチップだけでなく、より高出力なヘッドフォンアンプ用チップを採用し駆動力&音質の向上を行ったり、モバイルバッテリー機能も持つなど「スティック型では絶対出来ない差別化」要素が加わればさらに魅力的だろうと感じました。代わりにDOCKユニットは別売のオプション扱いでも良かったかもしれませんね。逆に言えばこのような要望を感じるくらい非常に魅力的な製品であることは間違いないでしょう。ニーズに合致された方には十分にお勧めできる良い選択肢になるのではと思いますよ(^^)。