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プロジェクト・ヘイル・メアリー感想レビュー|難解だがシンプル。心に残るバディSF

今年3月は、話題作がひしめく豊作のひと月でした。

その中でも、ひときわ異様な熱量で語られていたのが、SF映画『プロジェクト・へイル・メアリー』です。

原作は、『オデッセイ(原題:火星の男)』で知られるアンディ・ウィアー。

さらにXでは「ネタバレ厳禁」「予告すら見ないほうがいい」と繰り返され、半ば試されるような気持ちで、前情報をすべて遮断して劇場へ向かいました。

そこで出会ったのは、想像していた“宇宙サバイバル”とは少し違う物語。

本記事では、その感想をネタバレありで振り返っていきます。

 

 

 

期待値は超えないが、確かな満足感のある作品でした。

結論から言うと、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は、期待値を大きく上回る作品ではありませんでした。

時系列の把握や、何が起きているのかが分かりづらいところが少なからずあり、理解が間に合わないことが何度かありました。

ただ、それでも十分に楽しめる、完成度の高いSF映画です。

「ネタバレ厳禁」と言われる理由も含めて、観終わったあとにじんわりと余韻が残るタイプの作品でした。

 

あらすじ(微ネタバレあり)

太陽と金星の間で、弧を描くように伸びる謎の光の帯「ペトロヴァライン」が観測される。

同時に、太陽のエネルギーが弱まっていることも判明。その原因は、恒星のエネルギーを吸収する微生物「アストロファージ」だった。

複数の恒星が感染する中、唯一その影響を受けていない星――タウ・セチに、人類存亡の鍵があると判明する。

世界中の科学者たちは、地球を救うための一か八かの計画、「プロジェクト・ヘイル・メアリー」を始動させる。

 

といった感じ。

 

過去のSF傑作のエッセンスを感じる

宇宙で独りぼっち、でもくじけない!という作品の空気は、同じアンディ・ウィアー作品の「オデッセイ」にも通じます。作風なんですかね。

ただ、作中で語られる科学を理解しようとすると頭がパンクするけど、何がどうなって、何をしたいのか。それだけにフォーカスするといたってシンプルな感じは、クリストファー・ノーラン監督の「インターステラー」のほうが近いかもしれません。

あちらも、科学考証で参加した科学者が、映画の潤沢な資金をもってブラックホールの研究を進めて論文1本書いちゃった。というくらい難解なことをしつつも、映画の一番根っこのところは「最後に愛は勝つ!」といういたってシンプルなものでした。大好き。

 

異文化交流物であり、またバディ物として上質

完全に前情報をシャットアウトして見に行ったので、そもそもとして、異星人とのファーストコンタクトものだということからびっくりでした。

ただ、確かに全宇宙でアストロファージの感染が広がっているなら、感染を免れているタウ・セチに活路を見出す惑星が地球以外にある可能性は十分にありますし、この広大な宇宙で同じタイミングでタウ・セチにたどり着く可能性ある?という疑問もありましたが、全宇宙でほぼ同時に発生したのであれば、まぁ可能性としてはなくはないのか、とも思いました。ロッキーたちエリディアンは時間の流れも人間と違ってそうだしな。実際は結構長い間、あそこで足踏みしていたのかもしれないな。

そこに遅れてグレースが来て、ロッキーも喜び勇んでコンタクトをとり、積極的に言葉を覚えたのかと思うとほっこりします。

翻訳機のしかたも、ちょっと無理があるなとも思いつつ、でもぎりぎりありえそうな感じ。もしかしたら科学考証はかなりしっかりしているだろうから、実際の言語学でも同じような手順で解析していくんですかね。

 

広い宇宙で、同じ目的を持った孤独な個体が偶然遭遇し、力を合わせてお互いの星を救う。この映画が見出すテーマの普遍性にもグッときました。

 

 

 

圧倒的な宇宙映像美

宇宙。美しかったですね。

タウ・セチの覆う緑の光、広大な宇宙で静かにたたずむロッキーの宇宙船。

すべてが美しく、「これが俺たちの考えた宇宙だ!完璧に再現するぞ!」という強い熱意を感じました。

特にタウ・セチでアストロファージを捕獲する際に、赤外線モードみたいに視界がスイッチした瞬間は心を奪われましたね。

 

いやー、大きな画面で見たかった。

中高生からファミリー層を重視している最寄りのTOHOシネマでは公開初週というのに一番小さい箱しかもらえず、歯がゆいばかり。

まぁ、上映開始日を2日ずらして余裕があるはずのデッドプール&ウルヴァリンですら一番小さい箱に押し込めた劇場ですからね。

確かに、この映画館の客層とは真逆を行く作品ではあるか・・・とは見終わって思いましたが、とはいえ、2番目に大きい箱は「レンタルファミリー」なのねと。いや、レンタルファミリーもすごく見たいんですが、公開3週目の映画に劣ると思われているのが非常に残念。

 

 

 

情報開示は不親切

ただ、正直わかりづらいなとも感じる映画でした。

よくわかんねーなーと面白いなーが交互に来る変な感じ。

 

特に、私がこの作品を理解するうえで厳しいと感じたのが2点

1点目が、喜ぶ、怒る。そういった、感情の発露の際にほぼ必ず無音になること。

無言でガッツポーズをとる、切れたときは音声がオフになる。

特に言葉もなく怒りを発露されると、起きている事象が難解なこともあり「何で怒っているか」はぎりぎりわかっても「どこに怒っているのか」がつかめず、置いてきぼりになることが何度かありました。

 

2点目は、グレースが蘇生時に記憶喪失であり、作中で徐々に記憶を取り戻していた、ということになかなか気が付けなかったこと。

最初の記憶喪失も、ただ長時間休眠した状態から蘇生したことで、記憶が混濁しているだけだと思っていたんですよね。

また、途中で挿入する回想も、時系列が古い順に挟まれるので、ただ、現在と過去を交互に流しているだけだと思っていたんです。

ですが、グレースが記憶喪失であるということを理解したうえで振り返ると、

今現在グレースが思い出している情報はここまで、

あるいは、

今このタイミングでグレースはこれを思い出しました。

とそういう言うことだったのかなと。

今思えば、2人の乗組員を荼毘にふす際に「君たちのことは何も知らない」と言っていたのは、謙遜で「ここで具体的な思い出話ができるほどは仲良くなかったよね」ということだと思っていたんですが、あれガチでこいつらがだれかわからなかった、っていうことなのかと。

 

なので、今起きていることを理解する前に話が進んでいくので、ちょっと置いて行かれる感じはありました。

理解したうえで2週目見るとまた印象が変わりそうな映画でしたが、原作既読勢が口酸っぱく言ったように、原作を読んでから見るのが正解っぽかったです。

 

ラスト展開について

グレースは地球に帰らないことを選びそのままロッキーの星で生活することを選んだ。

という結末は、なるほどそういう落ちもありなのかと目からうろこで、また物語が終わった後も、グレースとロッキーの友情は続いていくというのもポジティブでいいなと思いました。

微妙に話がそれますが、漂流して異邦人として共同生活を行い、そのまま一緒に過ごした、ジョン万次郎や、今テレビ小説でやっている小泉八雲なんかもこんな感じで故郷ではない場所に骨をうずめる覚悟を決めたのかな、とかちょっと思いました。

 

他方、ざまぁ展開が好きなので、グレースに同意を得ずに死んで来いをした地球組に対するペナルティがあまりにも少なすぎるな、というもやもやも感じるところではありました。

グレースをはめた、プロジェクトリーダーのエヴァも、もう少し葛藤を見せるか、ここまでの仕打ちをしてなおグレースがプロジェクトを完遂したことについて、罪悪感を持つなどしてほしかったですし、

地球を許したグレースも、許すに至るまでの葛藤、あるいは、ここまでされてなお、見捨てられなかった地球に残した縁、生徒たちとの絆、みたいなのがあれば、個人的にはですがもうちょっと納得感が得られたかな、という気がしています。

 

最後に

最近本気のSF映画ってなかなか見れていなかったのでとてもよかったです。

MCUもガーディアンズ・オブ・ギャラクシーやエンドゲームみたいに宇宙が舞台の作品はありますし、スターウォーズも宇宙が舞台ですが、宇宙共通言語がったり、どうしてもアメコミの文脈が強くて同じジャンルとはいいがたいところはありましたので、体が飢えていたんだな、というのは強く思いましたね。

 

 

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原作小説、ちょっと手に取ってみたいとは思いますが、上下巻はハードルが高いですね。

ただ、既読勢の多くの方の「映画で語られなかったことについて、カットされた理由を理解はするが、そこが面白い。」という意見を多く見たので、やっぱりちょっと気になりますね。

 

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オデッセイ

原作者の過去の実写化作品、火星で農業をする、というだけでも十分面白いけど、感動もできる良い作品でした。ちょっと忘れてきているので見返したい気持ちはありますね。

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インターステラー

衰退していく地球を救うために外宇宙に活路を見出すという展開はむしろこちらのほうが近い。

違いは、地球に愛する家族がいるかどうか

SF映画の金字塔の一つだと思っています。

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