以下の内容はhttps://baldhatter.hatenablog.com/entry/2026/03/12/165122より取得しました。


# Collinsの辞書―整理と引き比べ

昨日の記事でも書いたように、COBUILDを含むCollinsの辞書はオンライン版があります。

一方、アプリや本家以外のオンラインサービスなどの形態もあり、特に物書堂のラインアップはかなり充実しています。いろいろありすぎて、購入するとき困る人もいるかもしれないので、簡単に整理しておきます。

大前提として念のため言っておくと、版元であるHarperCollins社はイギリスの会社です。したがって、Collinsの辞書ももともとはイギリス英語ベース。それがアメリカ英語にも対応しています。

プラットフォーム別のラインアップは、こんな感じになっています。

本家オンライン

本家オンラインでは、主に以下の4つの内容が掲載されています(昨日の記事も参照)。

  1. Collins COBUILD Advanced Learner’s Dictionary
    学習者向けのいわゆる "COBUILD" です。
    後述するように、アプリなどではCOBUILDのアメリカ語版も展開されていますが、実は最近のCOBUILDは、語義に[US][British]と明記することでアメリカ語版にも十分対応しています。違いは、語義の順が若干変わる程度です(たとえば、紙幣の意味のbillは、オンラインCOBUILDでは語義4、アプリなどのアメリカ語版だと語義3になっています)。
  2. Collins English Dictionary
    一般英語の英英辞書です。こちらは今もイギリス語中心ですが、アメリカ語まで配慮されていることは言うまでもありません。
  3. Webster’s New World College Dictionary
    アメリカ語の情報ソースです。
  4. Most material © 2005, 1997, 1991 by Penguin Random House LLC. Modified entries 
    昨日も書いたとおり、独自編集?と思われる内容。詳細不明。
物書堂

例によって「圧倒的じゃないか、我が軍は」状態で、以下のコンテンツがそろっています。

  1. Collins English Dictionary with Thesaurus 2024
    本家オンライン版の2に相当する一般英語の大辞典です。
    ただし、内容や構成は若干違いがあります。
  2. コウビルド英英辞典(第10版)
    本家オンラインの1に当たります。
    これも、内容がまったく同じとは限りません。
    原題:Collins | COBUILD Advanced Learner's Dictionary
  3. コウビルド英英辞典(米語版 第3版)
    COBUILDのアメリカ語版です。
    本家オンラインのCOBUILDで説明したように、最近のCOBUILDはイギリス語/アメリカ語のほぼ両対応なので、あまり気にしなくてもいい気がします。
    原題:Collins | COBUILD Advanced American English Dictionary
  4. コウビルド英英和辞典(米語版 2023)
    COBUILDに和訳を付けたバージョンで、中高生には役に立つかもしれませんが、翻訳者の用途としてはほぼ出番がないでしょう……。わたしも持ってません^^;
    原題:Collins | COBUILD Advanced Dictionary of American English, English/Japanese
  5. コウビルド中級英英辞典(第5版)
    COBUILDのやや易しくなったバージョンです。
    原題:Collins | COBUILD Intermeriate Learner's Dictionary
  6. コウビルド初級英英辞典(第4版)
    さらに易しくなった入門レベルの英英辞典。
    原題:Collins | COBUILD Primary Learner's Dictionary

    5と6は翻訳者の普段の仕事には不要かもしれませんが、おもしろい情報を拾えることもあります。
DONGRI

中高生向けサブスクリプション形式のDONGRIには、COBUILDが2つ入っています。

  1. コウビルド英英辞典Advanced米語版
    書き方が違うのですが、要するに物書堂の3番と同じです。ただし、物書堂は第3版ですが、DONGRIは第2版。ちょっと後れています。
  2. コウビルド英英辞典 Learner’s 米語版
    これは物書堂にもないコンテンツです。Learnerという書き方がはっきりしないのですが、解説ページには「中級レベルの学習者が、生きたアメリカ英語を書いたり話したりするのに必要な~」と書かれているので、Intermediateだろうと思います。そうすると、物書堂の5番の米語版ということになります。
ジャパンナレッジ

ジャパンナレッジには学習英英辞典としてOxford Advanced Learner's Dictionary(OALD)10thも入っていますが、Collinsもひとつだけ入っています。

  1. コリンズコウビルド英英和辞典デジタル版

解説ページに明確に書かれていないのですが、内容から考えて米語の英英和、つまり物書堂の4番と同じです。うーん、Collinsから、よりによってなぜこれだけ採用しているのか解せません。以前、英英辞典は何がいいかと中の人から相談いただいたこともあったのですが、版権料その他の関係で、思うようにいかなかったようです。

それぞれを引いてみた

英英辞書の比較でよく使われる単語はdogですが、それじゃつまらないので、catを引いてみました。

結果をExcelにまとめました。興味があれば、こちらから閲覧・ダウンロードできます。

docs.google.com

【追記】
ついでに、日本語の「ねこ」もひととおり調べたら、こちらもいろいろ面白かったので、同じファイルを更新しました。Excelのシートに「ねこ」が追加されています。

ざっと違いをまとめると、こんな具合です。

  • Collins(一般英英)の語義は20項目。そのうち10以降は成句表現。
    さすがに実に細かく、俗語や専門用語まで載っている。
    オンライン版でも物書堂版でも同じ。ただし、成句の示し方や同義語、引用、関連語などの示し方は若干異なる。
  • COBUILD Advanced(いわゆるCOBUILD)は、物書堂版とオンラインで相違あり。物書堂版では語義が8項目。そのうち4以降は成句。オンライン版では、語義が7項目。そのうち6と7が成句表現。その他の違いについては後述。
  • COBUILD Advanced Amerianでは語義が3項目
    成句の記載はなし。ただし、イギリス語版にはない例文が載っている。
  • COBUILD Intermediate(中級)では、語義が2項目。「ネコ」と「ネコ科の動物」のみ。
  • COBUILD Primary(初級)では、語義が1項目。「ネコ」だけ。

「ネコ」の語義だけ違いを見てみると、dogなどの場合と同様、想定対象者による違いがひと目でわかります。

1. Also called: domestic cat   a small domesticated feline mammal, Felis catus (or domesticus), having thick soft fur and occurring in many breeds in which the colour of the fur varies greatly: kept as a pet or to catch rats and mice

(太字は原典まま。以下同)
一般英英はこの長さです。ネコ科の動物であること、学名のラテン語、特長として「熱く柔らかい毛皮をもつ」「多くの種類があって色もさまざま」「ペットになったり、ネズミを捕らえさせたりする」と詳しく書かれています。

1 A-1 N-COUNT
A cat is a furry animal that has a long tail and sharp claws. Cats are often kept as pets.

これがCOBUILD(Advanced)。難易度(A-1)や文法情報(可算名詞)が付き、このくらいの簡潔な描写に*1

1 N-COUNT
A cat is a small furry animal with a tail, whiskers, and sharp claws.

COBUILD Intermeriate(中級)になると、「ペットとして飼われる」という記述がなくなり形態的な特徴として「ひげ」が加わりました。

a small animal covered with fur that people in some countries keep as a pet
- The cat sat on my lap, purring.

最後はCOBUILD Primary(初級)。「小型の動物」「毛皮で覆われている」「ペットとして飼われる」の3点だけになりましたが、ちゃんと用例が付いてます。この用例、学習者に対する配慮が行き届いています。猫が「膝の上にのっている」ときの「膝」はkneeではなくlapであることと、猫がのどをゴロゴロ鳴らすのはpurrであることがわかります。こんな用例、ほかのどこにもありません。初級の辞書にはこういう良さがあるのでした。

しかも、挿絵も付いています。

あれですね。ディズニーの『おしゃれキャット』的なネコ。日本の中高生には絶対受けないw

そのほか、引き比べてみたら、こんな違いもありました。

  • Cheshire cat, fat cat, wildcat を参照させているのは、COBUILD Advanceだけ。ネコの話をするとき、Cheshire cat は出てきてほしい。でも大辞典ではひと言も触れられていない。
  • しかも、COBUILDでもアメリカ語版ではfat catしか参照していない。Cheshire cat は、やはりイギリス特産ということなのかw
  • "curiosity killed the cat" ということわざを紹介しているのは、COBUILDのオンラインのみ。なんでだろ*2
  • ただし、大辞典のSynonymsのセクションには、
    → Cats are renowned for their curiosity.
    という記述がある。これはいったい何を参照させたいのか……

Collinsの辞書だけ取っても、版や対象読者によってこれだけ違いがあるわけでした。だから、やっぱり、いろいろなレベルで

辞書は引き比べてなんぼ

なのでした。

*1:『三省堂国語辞典』くらいの簡潔さかな、と思って調べたら、国語辞典の「ねこ」もいろいろ違いがあって楽しいことになっています。

*2:ついでに英和学習辞典も引いてみたら、catの項に"curiosity killed the cat"を載せているのは『コンパスローズ』だけでした。そのほかはcuriosityのほうで取り上げています。catの話で出してもいいのに~。




以上の内容はhttps://baldhatter.hatenablog.com/entry/2026/03/12/165122より取得しました。
このページはhttp://font.textar.tv/のウェブフォントを使用してます

不具合報告/要望等はこちらへお願いします。
モバイルやる夫Viewer Ver0.14