序文を読むシリーズで『てにをは辞典』を取り上げたので、次は『てにをは連想辞典』に進もうと思っていました。ところが、その「はしがき」を見たら、終わり近くにこんな記述が……。
〈表現のための辞典〉として最初の一歩となった「究極版逆引き頭引き日本語辞典」とそれに続く『日本語表現大辞典』(どちらも講談社)の企画編集者であった清水和美さんには、今回編集の協力者となっていただきました。
『てにをは辞典』が『究極版 逆引き頭引き日本語辞典』から発展したように、『てにをは連想辞典』のほうは『日本語表現大辞典』から発展したようです。同じ著者の、これです。
そうなると、『てにをは連想辞典』の序文を紹介する以上、こちらの序文も取り上げたい。ところが、いくら探してもウチの本棚で見つからない!*1
ということで、「てにをは連想」のほうは、これを発掘してからにします。
その代わりに頭に浮かんだのが、「タイトルに "表現" が付くのはどんな辞書か」という疑問です。
世の中にはほかにもたくさんあるはずですが、わたしのリストで「表現」を探してみたら、これだけありました。
- 研究社 英和翻訳表現辞典 I
- 研究社 英和翻訳表現辞典 II
- 研究社 英和翻訳表現辞典 III
- 研究社 英和翻訳表現辞典
- 研究社 続・英和翻訳表現辞典
- 研究社 新編 英和翻訳表現辞典
- 開拓社 英語表現活用辞典
- 三省堂 要注意表現の英語辞典
- 語学春秋社 映画スラング表現辞典
- 日英語表現辞典 ちくま学芸文庫版
- 研究社 しぐさの英語表現辞典
- 研究社 英語の数量表現辞典
- 旺文社 Longman英和和英 基本表現辞典
- ベネッセ 表現読解国語辞典
- 研究社 日本語類義語表現 使い分け辞典
- 東京堂出版 表現類語辞典
- 講談社 日本語表現大辞典―比喩と類語三三八〇〇
- 三省堂 文章表現のための 類語類句辞典
- 東京堂出版 日本語の類義表現辞典
- 研究社 日本語表現活用
- 研究社 日本語口語表現辞典
- 明治書院 文章プロのための日本語表現活用辞典
- 東京堂出版 日本語の慣用表現辞典
- 三省堂 当て字・当て読み 漢字表現辞典
13までは英語系、14以降が国語系です。このうち、1~7については、だいぶ前に記事にしたことがあります。
- 辞書名における「表現」とは?
- 研究社 日本語類義語表現 使い分け辞典(15)
- 東京堂出版 表現類語辞典(16)
- 三省堂 文章表現のための 類語類句辞典(18)
- 研究社 日本語表現活用(20)研究社 日本語口語表現辞典(21)
- 明治書院 文章プロのための日本語表現活用辞典(22)
辞書名における「表現」とは?
英語系で「表現」と付く辞書は、ひと言でいうと「ふつうの辞書では扱っていない/詳しくない/注意が必要な、やや特殊な言いまわし」を集めたものが多い印象です。
一方、上のリストにある国語系のほとんどは以下のように分類できます。
- 14は小型の国語辞典
- 15~19は類語辞典
- 20~22はコロケーション辞典
- 23~24は特殊辞典
今回は、この範囲で一部を紹介します。カッコ内は上のリストの番号です。
研究社 日本語類義語表現 使い分け辞典(15)
類語辞典が扱うのは一般的に自立語(名詞、動詞、形容詞など)が中心ですが、この辞典は助詞や助動詞、それらを含む連語なども載せていて、しかも説明がかなり詳細です。「~なら、~たら、~ば、~と」とか、「~ために、せいで、ばかりに」の類です。
ただ、あまりにも詳しいので、読み取りにはちょっと慣れが必要です。日本語の細かい違いを把握/説明するとき頼りになります。
東京堂出版 表現類語辞典(16)
※わたしが持っているのは「新装版」なんですが、なぜかAmazonに出てきません。↑ こっちのほうが中古が手頃です。
わりと高い頻度で引いている辞書です。見出し語1,232語、類語8,361語なので数は多くありませんが、類語の細かなニュアンスや違いが用例付きで詳しく説明されています。
三省堂 文章表現のための 類語類句辞典(18)
これはなかなか意欲的な類語辞典です。「類語類句」と題されているように、単語単位の「類語」ではなく、その前後も含んで「似た表現」が並べられています。しかも、「語義」は載せていないのですが、語義分類に即して記載されています。たとえば、「おもしろい」はこう。
おもしろい【面白い】
①⇔つまらない
▶何かおもしろい話はないか。<|類| 楽しい・愉快な・気が晴れるような・景気のいい・痛快な>
▶ちょっとおもしろい話を耳にしたのだが。<|類| 興味深い・興味しんしんの・好奇心をそそられる・妙な・意味深な>
▶取り引きが思惑どおりに行くのでおもしろくてたまらない。<|類| 痛快この上ない・笑いが止まらない・るんるん気分だ〉
▶彼の話はおもしろくもおかしくもない。<|類| 何の興味もそそらない・どうということはない・無味乾燥だ>
|関連| ▶おもしろ半分に応募してみた。<|類| ちょっとおもしろがって・冗談半分で・興味本位で・ふざけて・つい調子に乗って>/▶おもしろおかしく世の中を渡れれぼそれでいい。<|類| 愉快に・気楽に・気軽な調子で・調子よく・すいすいと>
②→おかしい(以下略)
見かけは同じ「おもしろい」でも、文脈によって意味はもちろん違う。その意味グループ別に、「類語」ときには「類句」が載っているので、他の類語辞典とはひと味違います。
研究社 日本語表現活用(20)
研究社 日本語口語表現辞典(21)
どちらもコロケーション辞典で、しかもLogoVistaにも収録されています(旧インターフェース)。が、残念ながらインデックスの作りが問題なのか、実はうまく活用できていません。
明治書院 文章プロのための日本語表現活用辞典(22)
上ではコロケーション辞典に分類しましたが、詳しくいうと、「用字用語集を兼ねた文例辞典」という面もあります。コロケーションというと、ふつうは単語と単語のつながり方を書きますが、文字単位のつながりも載っています。
たとえば、「かたい」については「堅い」「固い」「硬い」の3つの見出しがあり、「堅い」については
[仕事・優勝・合格・志・口・守備]が堅い/一日に1万円は堅い/堅い[商売・約束・人物・話・文章・表情]/試合で堅くなる
|類| 手堅い・堅実だ・緊張する |対| 柔らかい
と書かれています。何について「堅い」というか、文としてはどう使うかということがすぐにわかるようになっています。
また「草原」を引くと、「大草原/草原地帯/見渡す限りの草原」のように造語成分になった例が示されます。
*1:持ってるのは間違いないのです。手持ちの辞書はリスト化しているので。