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# 辞書の序文を読む―その2「リーダーズ」

英語屋として「うんのさん」の次に取り上げる辞書は――いくつか候補を考えましたが、やはりこれでしょうね。「リーダーズ」シリーズ。わたしにとっても、紙の辞書と大型専用ワープロで翻訳していた兼業時代から今に至るまで必須の存在であり続けている辞書です。

これまでの発行年は以下のとおり。

  • 初版 ―1984年
  • プラス―1994年
  • 第2版  ―1999年
  • 第3版  ―2012年

「リーダーズ」の特長は、同業者ならよくご存じでしょう。

データ

最新版:第3版(2012年8月刊)。
発行元:研究社
媒体:KOD、LogoVista、物書堂、その他

「リーダーズ」の英語名について

ところで、『リーダーズ英和辞典』と『リーダーズ・プラス』の英語名称って見たことありました?

「リーダーズ」本体は、
Kenkyusha's English‐Japanese Dictionary for the General Reader
といいます。「一般読者向け」ってことですね。

一方、初版の補遺版に当たる「プラス」のほうは
An Encyclopedic Supplement to the Dictionary for the General Reader
です。名は体を表す。「百科項目の補遺」と名乗っているのでした。

発行年と内容

発行年は冒頭に書いたとおりです。「ブラス」は、初版の発行以降に追加された内容ですが、気をつけたいのは、そのあとに出た第2版や第3版には、「プラス」の内容がすべては統合されていないということです。それもあって、ある時期から、特に電子媒体は「リーダーズ第2版+プラス」とか「リーダーズ第3版+プラス」という売られ方をしているのです。けっして、あこぎな抱き合わせ販売ということではありませんw

特に、LogoVistaは今も『リーダーズ第3版』と『リーダーズ・プラス』の単体をそれぞれ販売しているのでご注意ください。最初からセットになっている「スペシャルセット」を売っているので、今からLogoVistaで揃えようという人はそちらのほうがお得です*1

本体と「プラス」の関係を、利用している人が多そうなKODの画面で説明します。

たとえばこの Dab Dab という単語は、[プラ]というラベルの付いた項目しかヒットしません。これが「プラス」の意味で、『リーダーズ・プラス』に収録されたものの、第2版や第3版には収録されないまま今日に至っているということです。一方、hack を引いたこちらの画面では――

[リー]と[プラ]が両方載っています。つまり『リーダーズ第3版』としての項目も『リーダーズ・ブラス』の項目も載っているということ。内容は多少かぶっていることもあります。

序文(まえがき)はどこで見られるか?

前回の「うんのさん」はやや特殊でしたが、「リーダーズ」シリーズはメジャーなプラットフォームのほとんどに入っています。EPWING、物書堂、LogoVista、KODについて紹介しておきます。これらのプラットフォームに収録されているメジャーな辞書であれば見方はどれも共通なので、覚えておくといいでしょう。

EPWINGの場合

今となっては骨董品プラットフォームですが、[検索方法]とか[検索]というメニューから[メニュー]という項目を選べるはずです。そこから「まえがき」や「凡例」を見ることができます。

物書堂の場合

[コレクション]画面で「リーダーズ」を選んでから、画面上部に表示されるメニューバーの[付録]を選択すると「まえがき」や「凡例」があります。

[コレクション]画面の上部メニューにも[付録]があるので、そこからでも行けます(その場合は、あとから辞書を選択します)。

LogoVistaの場合

新インターフェースについてだけ。検索フィールドの横にアイコンが並んでいます。そのなかに[辞典固有の機能を開く]というアイコンがあるので、それをクリックすると別ウィンドウが開きます。ドロップダウンメニューから各辞書の「序文」「まえがき」「凡例」、あるいは「付録」を見ることができます。

KODの場合

いったん何か引くと、検索結果の画面で辞書名の右に[メニュー]という文字が表示されます(上のDab Dabとhackの画面にあります)。ここからです。ちなみに、KODの[メニュー]からは、「第3版まえがき」「初版まえがき」のほか、「プラス」の「まえがき」も読めちゃいます。これ以降、全文は引用しないので、見られる人はぜひ自分で「まえがき」を読んでみてください。

序文を読む

では、あらためて初版から序文を読んでみます。

初版の「まえがき」(1984年)

与えられたスペースにできるかぎり多くの語を入れるようにした結果,本見出し,追込み見出しおよび成句を合わせて約26万項目を収めることができた.これはこの種の比較的小型の辞典としては最高ではないかと思う.(中略)本辞典は単に収録語数が多いというにとどまらず,その種類にも幾つかの特色があると自負している.このことは,本辞典の語彙は類書のそれに比較して格段に百科事典的であると言い換えることもできる.

とにかく収録語数が多く、百科項目が多い。リーダーズといえばこのイメージでしょう。続いて、収録されている語句の特徴が列挙されます。

  1. 熟語・成句
  2. 口語・俗語・卑語
  3. 固有名
  4. 科学技術用語
  5. 新語
  6. 略語
  7. 語源、句源
  8. 擬音語

このなかで、科学技術用語については

科学技術が進歩すればそれにみあったことばが必然的に生まれる.われわれはこの分野にもあえてドンキホーテ的に踏み込んで科学技術用語を貪欲に取り入れた.

と述べられており、擬音語については

擬音語の多くは英米の漫画から採集したものである.

と記されています。

プラスの「まえがき」(1994年)

しかるに,実際の英文では一般語と百科語は同一テキストに混在しているのである.情報検索のためには,一般語も百科語も同じ辞典にあったほうがいい.

「百科項目を積極的にとりいれる」という初版の方針が、第1パラグラフであらためて強調されています。だからこそ、「プラス」にはEncyclopedic Supplementという英語名称が付いているわけです。具体的にどんな項目が拡充されたかということも、もちろん書かれています。箇条書きでまとめます。

  • 人名と地名
  • 劇場,博物館,ホテルその他,公共の建物の名前,商品名
  • 『リーダーズ英和辞典』出版後の新語
  • 人名,地名,歴史上の出来事
  • 文学,神話,民話などに現われる架空の人名,地名
  • 現代の人名と出来事
  • 商品・製品名
  • アジア,オセアニア,アフリカ,中東,東欧,ロシアの人名・地名
  • 生物学,医学,コンピューター,経済および金融の語彙
  • trivia とよばれる雑学的情報と大衆文化についての情報

この辞書の強みは、「まえがき」にこのようにしっかり書かれているのでした。

第2版の「まえがき」(1999年)

 生きた言語は生々発展してやむことがない.英語のような巨大でダイナミックな文化の反映である言語は特にそうである.その一端を追跡記述しようとしたのが 1994 年の『リーダーズ・プラス』であった.この第二版は『プラス』の情報も活用しつつ,この間の英語の変化発展に対応したものである.

「『プラス』の情報も活用しつつ」という書き方を見ると、「プラス」の内容を踏襲した部分と、していない部分があることが察せられます。

生活様式の変化と科学の発達によるものが顕著で,科学の中では殊に情報科学のそれが突出している.科学の進展と並んで 20 世紀末を特徴づけるのは経済活動の世界的拡大であり,第二版が特に注意を払った分野の一つである.

プラスから第2版の間には一気にパソコンが普及しているので、その方面の語彙が拡充されたのは当然ですね。

第3版の「まえがき」(2012年)

IT系の変化が大きいのは第3版刊行の頃になっても変わりません。

インターネットが地球上を覆い,政治・経済・文化活動のグローバル化が進行する中で,英語が共通言語としてますます大きな役割を担うようになっている~

しかし、第3版で最も注目したいのはここです。

 今回の改訂の目的は,コンテンツの物理的拡大だけにあったのではない.それと並んで,あるいはそれ以上に私たちが重視したのは,旧版の訳語が英語の意味を正確に反映しているか否か,また現代日本語として的確であるかどうかの検証であった.

第2版と第3版を両方持っている人は多そうなので、ぜひ同じ単語を引き比べてみてください。たとえば、start-upという項目も、訳語にわずかな改訂があります。「新企業」が「新企業」になっており、この一文字の違いは小さくありません。

おまけ―非売品『リーダーズプラス』の「まえがき」

さて、初版から「プラス」までは10年間空いていますが、実は「プラス」の原型は、初版が出て半年ほどで出現しています。初版の「まえがき」に記された日付が1984年5月、この原型の日付が同年11月という早さです(奥付は1984年12月10日)。

実はこれ、初版刊行後にアンケートに回答した人に進呈された「非売品」なのでした。

わたしは当時入手したわけではなく、これはあとから入手したものの写真です。中古でしたが、開いたら回答者への礼状が挟まったままでした。

この珍しいミニ辞書の「まえがき」も紹介しておきます。

 別冊補遺に盛り込むべきものはいろいろ考えられるが『リーダーズプラス』には一般の新語のほかにいわば特殊語彙をできるだけ広い範囲から集めることにした.その多くは固有名である.(中略)劇場・博物館・ホテルその他公共の建物の名前・商品名などを多く採り入れた.

固有名のなかでもこういう名前を積極的に採用するという方針は、これ以降も引き継がれていたことがわかります。さらにおもしろいのがこの続きで、少し長くなりますが引用させてください(許容量を超えるのかもしれませんが、貴重なこの文章を紹介する意図ということで、なにとぞご了承ください -> 関係各位)

 『リーダーズ英和辞典』のもう一つの特色である俗語もできるかぎり追加したが,今回は特に「押韻俗語」と「ハッカーの俗語」を大幅に採り入れた.
 押韻俗語はロンドン子のことばに対するセンスとユーモアを反映したもので,その存在はずっと以前から知られていたが,これまで英和辞典はほとんどこれを扱わなかった.英和辞典で押韻俗語を正面から取り上げるのは本書が最初ではないかと思う.
 「ハッカー」(hacker)というのはコンピューターを使うのがうれしくてたまらない人のことであるが,この人たちの俗語には独特の想像力がみられる.ハッカーの俗語のうちどれが定着するかは予測できないが,コンピューターが社会できわめて重要な役割を果すようになった現在,ハッカーの俗語は注目に値する.ただし,ハッカーの俗語はコンピューターの専門用語とはちがって一種のことば遊びである.それはコンピューター社会で生きる人が見いだした一つの息抜きの方法かもしれない.

1984年当時、日本ではまだまだ「ハッカー」(hacker)という言葉が新鮮だったことが伝わってきます。「コンピューターを使うのがうれしくてたまらない人」という表現がたまりません。The Jargon File(最終更新2003年12月)の記述が今なお有用であることを考えると、「ハッカーの俗語は注目に値する」という視点はさすがです。

一方、「押韻俗語」というのもおもしろい。辞書がなかったら絶対にわからない世界です。記事が長くなってきたので詳しくは書きません。興味がある方は、「リーダーズ」各辞書を"韻俗"というキーワードで全文検索してみてください。

*1:本体と「プラス」を別々に引いてみたいという方は別ですが……。




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