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# 期待に「沿う」か「添う」か―その2

「沿う」と「添う」について、手元の国語辞典(の一部)を調べてみました。

「辞書デー2026」でもご覧いただいたように、今回もまずEvernoteで元ネタとして整理しましたが、見やすいようにまとめたExcelデータをこちらからダウンロードできます。

全体として、こんな結論が出ました。

  • 中辞典とやや古めの小型辞典は、ほぼ使い分け派
  • 最近の小型辞典は、両方容認派
  • 「副う」を推す辞典もあり
調べた辞書/用字用語集

今回は以下の辞書に当たりました。(カッコ)内はこの記事での略表記。[カッコ]は使ったプラットフォームです。

  • 岩波 広辞苑 第七版(広辞苑 七)[LogoVista]
  • 大辞林 第四版(大辞林 四)[DONGRI]
  • デジタル大辞泉(D大辞泉)[ジャパンナレッジ]
  • 岩波国語辞典 第八版(岩国 八)[LogoVista]
  • 明鏡国語辞典 第三版(明鏡 三)[DONGRI]
  • 新明解国語辞典 第八版(新明国 八)[DONGRI]
  • 三省堂国語辞典 第八版(三国 八)[LogoVista]
  • 三省堂現代新国語辞典 第七版(三現新 七)[DONGRI]
  • 現代国語例解辞典 第五版(現国例 五)[DONGRI]
  • 新選国語辞典 第十版(新選 十)[DONGRI]
  • 旺文社国語辞典 第十二版(旺国 十二)[DONGRI]
  • ベネッセ表現読解国語辞典(ベ表)[紙]
  • 例解新国語辞典 第十一版(例解新 十一)[ことまな+]
  • 日本語新辞典(日本語新)[紙]
  • 集英社国語辞典 第3版(集英社 3)[紙]
  • 新潮現代国語辞典 第二版(新潮 二)[紙]
  • 角川必携国語辞典(角川必携)[紙]
  • ローマ字で引く 国語新辞典 復刻(ローマ字)[紙]
  • 新和英大辞典 第五版(新和英 五)[Logophile]

用字用語集については、ひとつ前の記事で挙げています。

立項のしかた

国語辞典でまず気をつけたいのは、「沿う」と「添う」のような同訓異字をどう見出しにしているかです。辞書によって、

  • 「そう」という見出しに複数の漢字を挙げる
  • 「沿う」と「添う」のように漢字別の見出しにする

などの方針が決まっていて、『広辞苑 七』『大辞林 四』などは「そう」でまとめてあります。また、漢字の使い分けについての示し方もいろいろです。

「沿う」と「添う」―使い分け推奨派

『広辞苑 七』『大辞林 四』『現国例 五』『旺国 十二』『集英社 3』『角川必携』『新和英大』は、わりときっぱりと使い分けするように記述されています。これらを見て気づくのは、

  • 方針に → 沿う
  • 期待に → 添う

という使い分けです。「方針や基準にそう」とは「主となるものから離れないようにする」ことであり、「期待に添う」とは「要望・目的などにかなう」だ意味を区別しています(大辞林の例)。前の記事で書いたように、各種の用字用語集は、このふたつの語義をひとまとめにしているのだとわかります。

「沿う」と「添う」―両方容認派

認める程度の差はあるものの、『明鏡 三』『新明国 八』『三国 八』『新選 十』『例解新 十一』は「区別が難しい」「どちらでもよい」という姿勢です。

そのなかでは、わたしの推し辞書『三省堂 例解新国語辞典 第十一版』の記述が群を抜いています。その素晴らしさをお伝えするために、「ことまな+」から画面を共有させていただきます。

(クリックで拡大できます)

これのどこがいいのか―

まず、語義としては違いがあることを示しています。

「一」の②、

②ある方針や基準に はなれないようにして行動する。
|例| 最初にきめた計画の線に沿って作業を進める

(赤字は引用者。以下同)

と「二」の②、

②目的にあう。期待にこたえる。|例| 目的に添う。期待に添う

がそうです。語義によって使い分けがいちおうある、ということがわかります。そのうえで、「表記」欄が見事です。

「一」 ②は、「方針からはなれない」という意味で「沿う」と書くが、「方針に合う」という意味にとって「添う」と書くこともできる。同様に、「二」②は、「目的に合う」という意味で「添う」と書くが、「目的からはなれない」という意味で「沿う」と書くこともできる。また、「二」②は、「副う」と書かれることもある

こういう記述を見ると、「もともとは(おおむねの)かき分けがあって、そうはいっても曖昧だから便宜的にどっちも『沿う』にするね」と変わってきたらしいと想像できます。

「副う」推し派

おもしろかったのは、高校生向け国語辞典の『三省堂現代新国語辞典 第七版』です。

そ・う【沿う】〈自動五段〉
①あるもののそばを離れないようにして進む。あるもののそばに、それとならぶようにして続いている。「線路に沿って歩く・道に沿って花が植えられている」
〖△副う〗基準になるものから離れないようにする。「従来の方針に―・希望に―ように努力する」[「添う」とも書く
そ・う【添う】△副う〗〈自動五段〉
①いつもそばにいる。「影の形に━━ように」
②結婚する。つれ添う。「添いとげる」[古い言い方]
③合う。かなう。「ご期待に―よう努力します」【三現新 七】

「副う」という読みは、常用漢字表外の読みで、その目印として△が付いています。表外の読みであるにもかかわらず、「沿う」の項では②の語義に「副う」の字を当て、「添う」の項でも「副う」を併記しています。今回調べたなかではダントツで「副う」推しなのでした。高校生向けなのに表外読みの漢字を推している。なかなか意表を突かれました。

このほか、『岩国 八』も「副う」という漢字をわりとはっきり打ち出している印象です。

その他

ところで、今回は国語辞典のほかに『研究社新和英大辞典』も載せてみました。Excelにも載せていますが、この辞書は持っている人も多いと思うので、手元で引いてみてください。「沿う」には in line/alignment with のような訳し方、「添う」には measure /come up tomeet your wishes といった対訳が載っています。こういう風に英語で示されると、「沿う」と「添う」の意味の違いが少しクッキリしてきます。「和英辞典を国語辞典として使っ」てみた一例です。

それから、ふだんはほとんど紹介しませんが、今回は『ローマ字で引く 国語新辞典 復刻』というちょっと変わった辞書も動員していることに中目です。研究社の国語辞典という珍しい辞書ですが、上に書いた『研究社新和英大辞典』の編集にも影響していると思われる国語辞典です。

添う(自・四)1. 離れず、つきしたがら。[atend](例)影が形に添う. 2. 夫婦になる、つれそう[marry](例) 長年添うた夫と別れる.
副う(自・四)1. かなう[suit](例)趣旨に副わない。2.こたえる。[answer](例)御期待に副う覚悟.
沿う(自・四)1. ものについて進む。[go along](例)川に沿うて上る. 2. 面している [be on](例)道に沿うた家が二軒. 【ローマ字】

3種類の漢字をしっかり分けて挙げています。わたしが持ってる「復刻版」は2010年刊行ですが、元本は1952年刊行。この時代ならでは、かもしれません(余談ですが、品詞欄には「四」とあります。自動詞で、五段活用ではなく四段活用と分類されています)。

  • 研究社

 






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