きっかけは、わたしがFacebookに投稿したこの発言。
JustRightは、一定範囲では役に立つし、だからこそ利用価値があるんだけど、同音異義語の指摘はダメなこと多いんだよなぁ。
「期待に」は「沿う」でも合ってるだろ。記者ハンでは「沿う」になってる。ただし、『漢字の使い分けときあかし辞典』では「どちらもあり」になってるし、『広辞苑』だと「添う」だね。
話の元になった JustRight の指摘はこれ。

つまり、「期待に沿って」と書いたら「期待に添って」だよと指摘されたわけです。『記者ハンドブック 第14版』を確認したところ、「沿う」でOKと書いてありました。

ちなみに、
- 最新 用字用語ブック 第8版(時事通信社)
- 朝日新聞の用語の手引 改訂第2版(朝日出版社)
- 読売新聞 用字用語の手引 第7版(中央公論社刊)
- 毎日新聞用語集 2020年版(毎日新聞社)
- 使える! 用字用語辞典 第2版(三省堂)
など、用字用語集はすべてこれと同じ、つまり「方針」でも「期待」でも「沿う」と書くことになっています。
翻訳案件などでも、表記の基準にするよう指定されることが多い『記者ハンドブック』ですが、これはあくまでも「ひとつの目安」であって、ここに書かれているルールが絶対ではないことに注意しましょう。
そもそも、漢字、特に訓読みというのは日本語に漢字を「当てた」にすぎないわけなので、漢字の使い方に絶対はない、ともいえるのでしょう。それでも、わたしたちは漢字をどれかに(いちおう)決めて日本語を書かなければなりません。そのとき参考になる本はいろいろ出ています。そのひとつを、先日の「翻訳フォーラム式辞書デー2026」でも井口耕二さんが紹介なさっていました。
漢字の起こりから説き始め、文脈に応じた書き分けが詳しく説明されています。ただし、こちらの筆者も「絶対」という態度はとっていません。どう書いてあるかは、ぜひお確かめください。同じ著者のこちらもおすすめです。
対象読者層を下げているように見えますが、どうして、こちらも役に立ちます。
ちなみに、同じ著者の「ときあかし」などのシリーズには、これ以外にもいろいろ楽しいタイトルがあります。
まあ、これは仕事に直結はしませんが……^^;
さて、「沿う」と「添う」。国語辞典ではどうなっているか、次の記事でもう少し調査を続けてみます。結論めいたことを先に書いておくと、用字用語集の(つまり新聞業界の)基本方針は
書き分けを減らして社会全般で漢字の使い方を平易にする
ということのようです。これはこれでひとつの考え方なのですが、うるさい使い分け派からすると
安直な統一
に見えるのかもしれません。