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# 辞書の序文を読む―その1「うんのさん」

辞書は
序文(はじめに)と凡例
を読むべし。

と言いながら、わたしもすべての辞書の序文を隅々まで読んでいるわけではないので、この際すべてに目を通し、ついでにブログのネタに使おうと思い立ちました。

辞書の序文ということなら、有名な『三省堂国語辞典 第三版』や『新明解国語辞典 初版』の話から始めてもいいのですが、ここはやはり英語屋さんとして、「うんのさん」から始めることにします。

ちなみに、以下の文中ではEPWINGデータを紹介しています。最新版以外はなかなか手に入らないでしょうが、いまでもオークションやメルカリを根気よく探していると出品があったりします。

データ

最新版:6.3(2025年4月刊)。
発行元:プロジェクトポトス
媒体:専用CD-ROM、ジャパンナレッジ(パーソナル+R)

正式名称の変遷

通称「うんのさん」。正式名称は『ビジネス技術実用英語大辞典』ですが、実は過去の各版を振り返ると、正式名称には微妙な変遷があったりします。

  • 初  版『最新ビジネス・技術実用英語辞典 英和・和英』
  • 第2版『ビジネス/技術実用英語大辞典 第2版』
  • 第3版以降『ビジネス技術実用英語大辞典』

「ビジネス」と「技術」の間が、中黒→スラッシュ→なし、と変化しています。それ以外にも、「大」が付いたりなくなったり、「英和・和英」が付いたり消えたり。ちなみに、初版の書籍版はこんな箱です(書籍版は持っていなかったので、8年くらい前に中古を買いました)。

このほか、第4版の書籍版は英和と和英が別々で販売されていたので、『ビジネス技術実用英和大辞典』と『ビジネス技術実用和英大辞典』と分かれています(実物がいま手元にないので写真はなし)。

発行年

初版から最新版まで、発行年を振り返っておきます。わたしたち翻訳者は、30年以上も「うんのさん」のお世話になっているのでした。

  • 初  版 1994年
  • 第2版 1998年
  • 第3版 2000年
  • 第4版 2002年
  • 第5版 2010年
  • 第6版 2018年
  • 第6.3版 2025年
序文(はじめに)はどこで見られるか?

わたしの手元にはEPWING版ですべての版がそろっていますが、それでもすべての「序文」(はじめに)のありかを確認するのはけっこう手間がかかります。版によって、収録されている場所が違っていたりするからです。

EPWING版で使っている方はご存じのように、「うんのさん」のデータは〈本文〉と〈用例〉が分かれています。そして、古い版では序文や凡例がさらに別データになっていたものもあります。

初版――

本文および用例データとは別の「*使い方ガイド・著作権」から[メニュー]を開くと、「はじめに」と「謝辞」があります。このうち「謝辞」だけは、これ以降も第4版まで収録されていました。また、こちら ↓ のページでも読むことができます。

www.hi-ho.ne.jp

「はじめに」を差し置いて「謝辞」だけが、かなりあとあとまで残されていたのは、最後のパラグラフのためだろうと勝手に想像しています^^ 一方、「はじめに」のほうはネットに残っていないので、持っていないと読めませんね。あとで、一部を引用してご紹介します。

同じ[メニュー]から、「凡例」はありませんが、[ビジネス・技術実用英語辞典]などをたどると凡例と同じような内容を確認できます。

第2版――

どういうわけかEPWINGデータ上にはなく、データフォルダーに入っている README.TXT というファイルを開く必要があります(製品によって違う可能性あり)。このファイルに、「はじめに」「謝辞」「前版『最新ビジネス・技術実用英語辞典 英和・和英』の謝辞」が載っています。「凡例」に当たる内容は、EPWING上でもデータフォルダーでも確認できません。

第3版――

初版と似た構造に戻り、「*使い方ガイド・著作権」から[メニュー]を開くと、「はじめに」「謝辞」「初版の謝辞」があります。凡例に当たる内容の見方も初版と同じです。

第4版――

名称は変わりまたしたがこれまでと同じで「序文・凡例」から[メニュー]を開くと、「はじめに」「謝辞」「初版の謝辞」があります。凡例に当たる内容の見方は初版・第3版と同じです。

第5版――

本文ファイルから[メニュー]を開くと「はじめに」と「謝辞」があります。「検索方法・凡例」もあります。第5版の「はじめに」は、こちら ↓ でも読めます。

www.hi-ho.ne.jp

「うんのさん」の特長がこれまでで最も簡潔にまとまっているので、ぜひこちらをお読みください。

ちなみに、この謝辞には翻訳フォーラムでおなじみの須田隆久氏と深井裕美子氏の名前も挙がっています。

第6版――

[メニュー]から「英和・和英の検索方法などについて」はあるのですが、どうしたわけか「はじめに」に当たる内容がなくなってしまいました。販売会社であるプロジェクトポトスさんのサイトにも載っていません。

第6.3版――

[メニュー]から「英和・和英編について」を開くと、「この辞典の特徴」というセクションがあります。

ジャパンナレッジ版――

ジャパンナレッジ(パーソナル+R)には、従来の「はじめに」とは違いますが、それに近い内容が載っています。

japanknowledge.com

序文を読む

お待たせしました。実際の「はじめに」を一部引用してみます。

初版の「はじめに」

この辞典は,用例を集めてアルファベット順と五十音順に並べたもので,いわば用例集です。用例は,実務和英翻訳に携わる私達二人が既存の辞典に無い有用な表現を拾い集め始めたものがベースになっており,それに基本的な表現もある程度加えてあります。

初版で宣言されているように、「うんのさん」は用例集です。しかも、著者ご夫妻が実際に「拾い集め始めた」内容。わたしたち翻訳者が「生きた英語とその訳語」の拠り所にできる最大の特長がここにあります。一部のレビューなどで「使えない」という声を見かけることもありますが、この辞書の価値をわかっていない見当外れの評です。

続いて挙げられている「この辞典の特徴」も引用します。以下がその小見出しです。

(1)技術分野とビジネス分野を一つにした実用辞典
(2)用例は,すべて実際に使われている自然な英語から取材
(3)文章や複合語の組み立て方の参考になる用例
(4)同じ用例が英和からも和英からも直接引ける
(5)特殊な専門用語よりもそれらをつなぐ一般的な動詞が中心

翻訳者であれば、これを見ただけでこの辞書の有用性は想像できるはず。

最後に、「はじめに」の最終パラグラフから引用します。

この辞典の出版を思い立った頃からずっと,序文に必ず書こうと思っていたことがあります。それは,「この辞典が皆様からご支持いただけたら是非とも増補改訂版を出したい」ということでした。
1993年11月にこれを記したご夫妻の思いは、幸いユーザーに通じたようです。これからも、わたしたちは何としてもこの辞書を
買い支え
ていきたいものです。

第2版の「はじめに」

大筋は変わっていませんが、第1パラグラフに見える

英語から日本語に, 日本語から英語にと, 2言語間を縦横に行き来し, 用例を参考に自在に英語を組み立てられる。そんな理想をめざして作りました。

この部分が「うんのさん」の特長を端的に言い表しています。そして、

十分に網羅的ではありませんが, ほかの辞典を補う情報が豊富です。既存の辞典の代わりにではなく, 既存の辞典と相互に補い合うものとして使っていただければ幸いです。

(赤字は引用者)

「うんのさん」の基本方針が、初めてこの赤字部分で宣言されています。また、初版と同じように列挙されている特長も、さらに具体的かつ明確になってきました。

(1) 用例は, ネイティブによる自然な英語から取材
(2) 実際に即した生きた用例
(3) 英和と和英の両方向で引ける
(4) 英文の組み立て方の参考になる用例
(5) 豊富な言い替え
(6) 今の時代を反映

第3版の「はじめに」

前版と大筋は変わっていません。

第4版の「はじめに」

前版までと大筋は変わっていませんが、表現が少し変わっていっそう明確になっています。

(1) 他の辞典と併用する二冊目の辞典
(2) 受け身の英語ではなく英語での発信に
(3) 用例は、ネイティブによる自然な英語から取材
(4) 実際に即した生きた用例
(5) 豊富な言い替え
(6) 今の時代を反映

前版までと同じ表現もありますが、「二冊目の辞典」という言葉が、ここで初めて登場します。この辞書を愛用している人には当たり前のことなのですが、そこからもう少し引用します。

本書は、「これ一冊で大方用が足りるように」との意図で作られたものではありません。メインに普通の英和/和英辞典を用意していただき、二冊目として補助的に使用されることを想定しています。というのも、この辞典づくりの発端は、既存の辞典が知りたいことすべてには答えてくれない不満から、それを補う情報を収集し始めたことだったのです。

第5版の「はじめに」

第4版で列挙された6項目の特長は第5版でも引き継がれており、つまり「うんのさん」はいまもこの方針で編集・更新されているとわかります。

ちなみに、第4版から第5版までには7年かかっていますが、

見出し数は第4版の10%ほど,用例は第4版の25%ほど増えました.

7年間で、個人がこれだけの見出しと用例を増やしていくというのは、なみたいていの営みではありません。

第6.3版の「この辞典の特徴」

これまでの「はじめに」と並ぶほど詳しくはありませんが、著者ご夫妻がわたしたちユーザーに向けて発している最新のメッセージということになります。

お持ちのほかの辞書と併せて 「二冊目の辞書」(または三冊目以降)としてお使いください。

 

こんな風に、各辞書の編集方針や特徴をまとめているのが「序文」「はじめに」です。ここをしっかり読んでおくことも、辞書引きの

効率

につながります。

 

 

 

 

 

 




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