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# シンポジウム2025資料の訂正と補足

先月開催された「翻訳フォーラム・シンポジウム2025」、アーカイブの視聴は明日7/27の23:00(日本時間)までです。

そんなタイミングでたいへんゴメンナサイなのですが、わたしの午後の部「翻訳添削の舞台裏パート2」で、資料に誤りと不足があることに気づきました。

きっかけは、アーカイブを視聴してくださった方のツイートから始まった以下の流れです。

わたしが取り上げた2つの単語「帯同」と「向上」についてです。「帯同」については説明不足、「向上」については資料の誤りがありました。慎んでお詫びするとともに、こちらの記事で訂正・補足しておこうと思います。

該当するのは、「翻訳添削の舞台裏パート2」の資料、スライド10です。

「向上」は自動詞か他動詞か

まず、「向上」についての囲み部分が変です。たぶん、何かからコピーしてきて書き換えるつもりだったのをそのままにしてしまったようです。この囲み部分は、以下のように修正します。

向上:
三省堂『現代新国語辞典』では、第六版のとき「自・他」だったが、第七版では「自」になった

これを調べたのはずいぶん前なのですが、『現代新国語辞典』第六版(2019年発行)でだけ他動詞としても認められていたので、かなり驚いた記憶があります。私が調べた限りでは、これが唯一でした。

このように、〈名・自動サ変〉と書かれていたのです(付箋は、臨場感のためにあえて残しましたw)。しかし、第7版(2023年発行)では〈名・動サ変〉に変わっており、「向上」を他動詞と認める国語辞典は皆無になりました。この変更の理由は不明です。第六版のときの記述が誤りだったのか、それとも第六版の時点ではそれなりに根拠となる他動詞の用例を認めていたのか……

辞書の新しい版が出ると、世間では語句の追加や削除ばかり話題になりますが、こんな風に細かい情報が書き換えられることも少なくありません。版違いも、言葉を調べるうえでは貴重な資料になるという一例です。

「帯同」の使い方

こちらの例は、単に自動詞か他動詞かという問題だけではなく、もう少し込み入った用法の話でした。詳しい説明が必要ですね。

上に引用したツイートでも言われているように、「帯同」はほぼ他動詞です。自動詞としても認めているのは、『三省堂国語辞典』がほぼ唯一。これについては後述します。明鏡の例だけ載せておきます。

[名・他サ変]一緒に連れていくこと。
「秘書を帯同して渡米する」 【明鏡三】

つまり、「○○帯同する」という言い方が標準ということになります。したがって、このときの課題文でいえば、

 パーシビアランスがインジェニュイティ帯同した〈他動詞〉

という使い方が基本になります。あるいは、

 インジェニュイティが火星ミッション帯同した〈自動詞〉

となります。ちなみに、「パーシビアランス」は火星探査機、「インジェニュイティ」は小型ヘリです。

上にあげた画像を改めて見ていただくとわかりますが、今回わたしが引っかかったのは、

 ミッションに帯同されていた

という言い方でした。受動態になっているということは他動詞として使っている。なのに、ヲ格の目的語をとっていない(ニ格に続いたのでは、「帯同される」が尊敬の意味にもとれてしまう)。そこがおかしいわけです。

さて、「帯同する」を自動詞としても認めている『三省堂国語辞典』、第七版から第八版になって記述が少し変わりました。

第七版はこう。

(名・自他サ)〔文〕
① 一緒に連れていくこと。「司令官が副官を―する」
② いっしょについていくこと。「スタッフが―する」 【三国七】

第八版では語誌が増えています。

①⦅名・他サ⦆ いっしょに連れていくこと。「司令官が副官を―する・家族―」
②⦅名・自サ⦆ いっしょに ついていくこと。同行。「コーチがチームに―する」 〔スポーツの分野で使われだし、二十一世紀になって広まった用法〕 【三国八】
自動詞の使い方が新しいというのは(個人的に)意外でした。
 
ということで、リアルタイムで、あるいはアーカイブで「シンポジウム2025」をご覧くださった皆さん、訂正をよろしくお願いいたします。m(__)m

 




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