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【愛の◯◯】桜並木からネットカフェへ

 

黄緑色のロングスカートに、エメラルドグリーンのカットソー。

『色合いがなんだかアンバランスだなあ……』

姉のコーディネートについてそう感じつつ、家を一緒に出たのだった。

ロングスカートがエメラルドグリーンで、カットソーが黄緑色だったならば、あまり疑問符は付けなかったであろうに。ぼく個人の意見に過ぎないが、本日の姉の衣服の取り合わせは、ボトムスに対してトップスの色が主張し過ぎていると思う。上下ともに緑系統なのだから、なおさら。

 

華々しいルックス・輝かしい栗色ロングヘア・均整の取れた体型……にもかかわらずファッションセンスが幾つになっても向上しない姉の背中を見ながら、桜並木の道を歩いている。

某・都市公園に来ているのだ。3月も終わりを告げようとしている。満開と言っていい桜並木が遊歩道の両サイドに立ち並んでいる。

そうだ。誰が何と言おうと、満開と言っていい桜並木が遊歩道の両サイドに立ち並んでいる。

『誰が何と言おうと』と記したのは、本ブログの制作体制ゆえに……なんであるが、

「利比古(としひこ)、ちゃんとついてこれてる?」

と振り向いてきた姉に言われてしまったので、ブログ制作体制云々を地の文でこねくり回している場合では無くなってくるのである。

姉との距離が若干長くなってしまっていたので、立ち止まる姉に向けて距離を詰めるコトにする。

「清々(すがすが)しい空気ね。そして、桜が満開。ここまで出かけて正解だったわ」

最高に麗しき微笑をたたえながら姉が言う。服装の色合いがアンバランスじゃなかったら、もっともっと完全無欠の23歳女子だったのに……。

「これで、あんたの気分も、完璧に晴れやかになるはず」

ぼくがココロの調子を崩してしまったコトに姉は言及しているのである。

塞ぎ込みまくっていたぼくを姉は付きっ切りで慰めて癒やしてくれた。真夜中に眼が覚めて涙を流してしまうほどダメになっていたぼくに愛情を降り注いでくれた。

愛情を絶え間なく降り注がれてしまったから、恥ずかしさのようなモノが胸の奥まった部分に未だ残っている。

でも、今歩いている公園の空気は本当に清々しいし、姉が言うように、恥ずかしさのようなモノも次第に消えていってココロの曇りも着実に晴れていくコトだろう。

「そうだね」

短く応えてから、姉により一層歩み寄る。

それから、

「ねえ、お姉ちゃん。このあと、どうするの? いつまでも桜並木の中を歩き続けるワケじゃないんでしょ? ――昨日、言ってたよね、『とっておきのデートスポット』があるって」

と訊く。

訊いた途端に、姉の微笑がイタズラでイジワルな笑みにシフトしていった……ような感覚を覚えてしまう。

なにその邪(よこしま)なスマイル。

不穏だよお姉ちゃん。

突拍子もなくてぼくを困惑させてくるような発言が口から出てくるとしか思えないんですけど。

「わたしの、『とっておきのデートスポット』はねぇ……」

わざとらしくコトバを溜めてから、

「……ネットカフェ。」

と言い放つ姉。

ぼくの不安が的中してしまった……! 

『ネットカフェ』。突拍子もないワードが口から飛び出てきて、ぼくに頭痛を催させる。

ネットカフェって、なに。

どーして、ネットカフェなの。

ここまで伏せてきた『とっておきのデートスポット』が、ネットカフェだなんて。

ぼくを困惑させてくるのもほどほどにしてよ……。実の弟だからって、なんでも要求していいわけじゃ、ないと思うよ!?

「『2人用の個室にお姉ちゃんと入るなんてイヤだ』だなんて、絶対に言わせないわよ?」

だからぁっ。

端麗過ぎる容姿に相応しくない口ぶり、しないでよっ。

どーして、下品な言い回しになっちゃうの!? 

ホントにホントにもったいないと思うよ。アンバランスな色合いの服装に加えて、下(くだ)らなさ過ぎる発言……。

「うつむかないでよぉ~」

当然のごとく、弟の心情に姉は一切配慮しない。

「わたし、気になる漫画がいっぱいあるのよ。『漫研ときどきソフトボールの会』に5年間も入り浸ってたんだから、気になる漫画作品だらけになるのも、当然の成り行きよね」

そう言いながら、ぼくの左肩まで右手を伸ばしてきて、

「4月になったら、平日の昼間のネットカフェに3時間以上滞在するコトなんて不可能になっちゃうんだし」

と、3時間以上のネットカフェ滞在を一方的に決定してくる。

ぼくの左肩に姉の右手が置かれる。

姉は姉の右手の熱を容赦無くぼくの左肩に染み込ませてくる。

お姉ちゃんが3時間以上漫画を読み続けるあいだ、ぼくは何をしていればいいの……と問うていく元気も萎(しぼ)んでしまう。

せめて、個室備え付けのPCぐらい、自由に使わせてほしいトコロなんですがね……。

 

 

 




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