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【愛の◯◯】24時間365日反抗期の終わり

 

利比古(としひこ)の様子を見るために階段をのぼる。

利比古は、わたしが昨夜寝ていたベッドに腰掛け、タブレット端末の画面に眼を凝らしていた。

タブレットを見られるぐらい回復したのね。

お姉ちゃんのわたしが全力で慰めてあげた甲斐があったわ……!!

わたしの入室を受けて、利比古はタブレットから眼を離す。

気恥ずかしいのか、姉に向かってまっすぐ目線を伸ばしていけない。

「おとうさんとお母さんだけど」

出張で住み家(か)を空けている両親にわたしは言及し始める。

「午後の1時ぐらいに、家(ここ)に戻ってくるそうよ。お昼ご飯は自分たちで食べるんだって」

そう情報を伝達してから、

「わたしとあんたの分のお昼ご飯は、朝に引き続いて、わたしが作ってあげるから」

と言いながら、微笑みかける。

姉の手料理を2連続で味わえるのが確定した弟の目線がさらに逸れていく。

「利比古」

敢えて名前を呼んでから、

「おとうさんとお母さんが帰ってきたら、おとうさんとお母さんにも優しくしてもらいましょ? わたしから2人に働きかけてあげるから☆」

と畳み掛ける。

弟の顔が微熱を発しているのが手に取るようにわかる。

 

× × ×

 

午後3時を少し過ぎた。日本全国コーヒータイムだ。

ダイニング・キッチンのダイニングテーブルでお母さんと向かい合って熱いコーヒーを味わっている。

・今わたしが飲んでいる熱いコーヒーは何杯目なのか

・おとうさんはどこに行っているのか

・利比古はどうしているのか。結局、おとうさんとお母さんに優しくしてもらったのかどうか

このような点は、主に文字数の都合によって省略。

――さてわたしはマグカップを軽快に置いて、

「お母さん、わたしをもっとホメてよ」

お母さんもマグカップを置いて、

「利比古を立ち直らせたのが、そんなに誇らしいの?」

わたしはすぐに、

「誇らしいのよ」

と答え、

「オトナのオンナになったって感じするでしょ。愛すべき弟を、闇の中から救い出してあげたんだから」

「確かにね」

軽く頷くお母さんが、

「10代の頃の『じゃじゃ馬(うま)』みたいなあなただったら、利比古のココロを上手に癒やしてあげるのは難しかったかもしれないわね」

とか言ってくるからほんのちょっとだけムカつきを覚えるけど、

「――10代の頃のわたしとは丸っきり違うの。細胞が全部生まれ変わったのよ」

と、すぐに立て直す23歳のわたしはそんな風に断言して、それからゆっくりと腰を上昇させていく。

それからそれから、

「もう、オトナでもコドモでも無いような時期は終わったんだから」

と言った直後に、お母さんが着席している側(がわ)まで歩み寄っていって、

「お母さんにだって――素直になれる」

「あらあ」

お母さんは面白そうに楽しそうに、

「つい最近まで、24時間365日、わたしに対して反抗期だったのに?」

動じないわたしは、

「反抗期は『店じまい』よ。5年かかったけど、大学も卒業したコトだし」

と応えて、お母さんの上着の左袖(ひだりそで)に右手で触れていく。

「……今は、逆に、甘えたいかも」

左袖をフニュフニュといじりながら、甘い声を出す。

思春期以降お母さんに対して1回も出したコトの無かった甘い声、出しちゃった。

恥ずかしいキモチとかは無い。

10代の頃のわたしとは全然違うんだから。

「ベタベタしたいのね」

お母さんは言う。

「反抗期が長過ぎたから、なのかしら」

お母さんはさらに言う、けど、

「理由なんて探る必要も無いでしょっ」

と、わたしは早口気味に言って、自分のカラダをお母さんのカラダにかぶせていく――。

 

 




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