「今度の3連休、小泉(こいずみ)さんのお宅(うち)にお泊まりするコトになったの」
「マンション部屋だろ? 近所迷惑にならんよーにな」
「……どこまでホンキで言ってるのよ」
「卒業式の翌日からお泊まりか。おまえも忙(せわ)しないな」
「忙しないのにはワケがあるの」
と言って、愛(あい)はマジメな顔つきに。
「『オンナノコじゃなきゃオンナノコをなぐさめられないシチュエーション』って、やっぱしあると思うのよ」
意味深だ。
ま、深堀りしないでおくか。
おれは湯気の立つ味噌汁の椀(わん)に黙って右手を伸ばす。
× × ×
夕食後。例のごとくにコーヒータイムを開始する愛。アフターコーヒーを楽しそうに楽しそうに味わう愛と向かい合うおれは、某・スポーツ雑誌をぱらぱらとめくっていく。
コーヒーカップが小気味良く置かれる音がした。
何かの合図なのか……? と思って視線を少し上昇させると、
「葉山(はやま)先輩の京都行きも近付いてるのよねえ!!」
と、半ば叫びながら両手を打ち合わせる愛がいた。
その話題かよ……!!
京大に受かった瞬間に凄まじいテンションで電話をかけてきやがったから参っちまった。その後も、新生活に関する話題をウキウキルンルンワクワクとおれに向かって何度も……!!
「あいつはちゃんと京都で勉学に励めるんだろーか」
疑わしさが拭えないので言ってみる。
葉山むつみと熱い絆(キズナ)で結ばれている愛はニコニコフェイスだ。
「だいじょーぶよ」
満面のニコニコフェイスでおれに応え、
「キョウさんと『ひとつ屋根の下』で暮らすんだし」
鎌倉(かまくら)キョウくん。葉山むつみの大好きな幼馴染のオトコノコである。
キョウくんは湘南地域某所に住んでいたが、非常にタイミング良く、京都のとある建築事務所で働き始めるコトになった。
京都に同時に移り住むコトになったので、葉山&キョウくんの幼馴染カップルは、葉山の親戚の女性宅に住み込むコトになったそうなんである。
どういう風にして住み込むとゆーのだろーか。ラブラブ幼馴染とはいえ別々の部屋を持つんであろーが。親戚の女性のお方も混じえて、どんなカタチの生活を……?
「アツマくんが思ってるより葉山先輩はマジメよ。それに、キョウさんも常に支えてくれるのよ」
ニヤつきながら愛は言う。
おれは、
「京都も都会だろ?」
と愛を見据えながら言い、
「誘惑も多そうだがなぁ」
と懸念を表明する。
いろんな誘惑、あるだろ……。葉山むつみというオンナの趣味にも合致するような。あのオンナの名誉のために詳しくは示さないでおくが。
「そこは、キョウさんに、ぜーんぶ、お・ま・か・せ・よっ!!」
スゴいテンションで叫ぶように言ってから、愛はまたもや自らの両手を打ち鳴らした。
好きなんだね、両手を打ち鳴らすのが。
……キョウくんに寄せる信頼も、スゴいんだね。