楽しかった土曜日も終わりに近付いている。
あすかちゃんと2人で寝室に入っている。
あすかちゃんもマンション部屋にしばらく滞在するコトになったので、寝室の使用に『ローテーション制』を導入するコトになった。『わたしとアツマくんが寝室を使う日』をA、『わたしとあすかちゃんが寝室を使う日』をBとして、A→B→A→B……と繰り返していく。わたしは寝室で毎日眠れるけど、アツマくんとあすかちゃんは寝室で眠る日とリビングで眠る日を繰り返すコトになる。『全然OKですよ~』とあすかちゃんは言ってくれていた。『リビングで寝ると熟睡感が減るんだよな』とアツマくんは不平を漏らしていたが完全に無視した。
本日は『わたしとあすかちゃんが寝室を使う日』である。
ダブルベッドの上で2人とも身を起こしている。身を横たえる前のおしゃべりタイムといったトコロだ。
「おねーさん、髪が限界近くまで伸びてきてるから、乾かすの大変じゃないですか? ついさっきまでドライヤー使ってたし」
わたしの髪の長さが気がかりなあすかちゃん。
気がかりなのはもちろん嬉しいんだけど、
「わたしの髪の長さ云々は、また今度よ」
と敢えて言う。
「え……。『また今度』って、なんですか」
狼狽(うろた)えるあすかちゃんに、
「わたしはもっと大事なコトについて話したいの。大事なコトっていうのは、あなたのお兄さんの『優しさ』のコト」
「やさしさ……?」
狼狽え続けているのが顕(あら)わな声を出すあすかちゃんに、
「あなたのお兄さん、あなたに1日中優しかったじゃないの、今日」
と言ってあげる。
アツマくんの妹の視線はやっぱり下降していく。
「『1日中』とか……そういうワケでは」
素直になり切れない彼女に、
「あなたが肩叩きしてくれたお礼に、アツマくんがあなたに肩叩きしてあげてたわよね? それ以降は、アツマくん、優しくなりっ放しで」
可愛く首を横に振りながら、
「優しく『なりっ放し』だとか……大げさですよ」
と強がるけど、
「お兄さんに甘える自由があるのよ、あなたには」
と愛情で包み込むように言ってあげて、右隣の彼女の頭頂部にぽむっ、と右手を置いてあげる。
× × ×
頭頂部に右手を置かれて火照ってしまったからか、あすかちゃんの方が先にベッドにごろり、となった。
わたしも既に横になっている。わたしもあすかちゃんも掛け布団の中にカラダを収めている。
あすかちゃんの左肩に右手で触れてみた。
「ビックリさせちゃったかな」
甘めの声で問い掛けてみる。
「そんなにビックリしてないです。予測の範囲内だったし」
そう答えてくるんだけど、あすかちゃんがわたしの反対側に眼を向けているのは疑いようも無い。
「暖房弱めに設定したから、わたしの体温を分け与えてあげたいの」
「……なんですか、そのリクツ」
ツッコミを入れてきてから、
「エアコンのリモコン、わたしが独り占めにするべきだった。おねーさんの手に渡ると、自分勝手な温度調整されちゃうし」
「そーね。たぶん自分勝手だったのよね、今の弱暖房も」
「今さらリモコンを取りに行くのも、果てしなく面倒くさいし……。責任取ってくださいよ、自分勝手に弱暖房にしたからには」
「だったら――」
身勝手な姉貴分たるわたしは、
「こうやって、責任を取るわ」
と告げてからすぐに、妹分の左肩から右手を離し、密着同然レベルまでカラダを寄せていく。
瞬く間に抱き寄せてから、
「『お兄さんに甘える自由がある』って言ったけど」
と声を寄せていって、
「『『おねーさん』に甘える自由』も、あるんだからね?」
と、野球の試合だったら『決定打』になるようなコトバを言い、妹分の体温の急上昇を味わい始めていく。