あけましておめでとうございます。令和8年? すごいわね。
葉山(はやま)むつみと申します。本来、このブログの主人公且つメインヒロインは羽田愛(はねだ あい)さんという女の子なんですが、(なぜか)わたくし葉山が新年1発目の「当番」に指名されてしまったんです。で、指名されてしまったからには、軽い自己紹介みたいなモノをせざるを得なくなってしまったワケで。仕方ありませんよねぇ、年、改まっちゃったんだし。
えー、葉山むつみというオンナでございます。11月21日生まれ、現年齢25歳、東京都出身、住まいは東京23区で山手線の外側で『渋』という漢字の付いた駅が近かったり近くなかったり……。最終学歴は都内のとある名門女子校高等部卒、なんですが、もう幾つ寝ると、約7年間の『睡(ねむ)り』から覚めて、京都府京都市というところに在(あ)る某・国立大学法人の受験にチャレンジするコトになります。
趣味? 趣味ですか? まず、フランス文学やフランス現代思想の本を読むコト。それから、ピアノを弾いたりピアノを弾きながら歌ったりするコト。それからそれから、若い女の子が手に取るコトはそれほど多くないかもしれない漫画を読むコト――たとえば、『天』『アカギ』『カイジ』などなど福本伸行先生の諸作品、他には『哭きの竜』とか『天牌』とか『凍牌』とか……。お気付きかもしれませんが、麻雀牌が大好きです。もちろんもちろん、知的遊戯として麻雀が好きなんですよ!? ――でも(?)、お馬さんのぬいぐるみも、自分の部屋のクローゼットの中にたくさん入っております。アイドルホース的なのとかそうでないのとか、いろいろ入っております。最近のお気に入り騎手は、美浦(みほ)の若手の石神深道(いしがみ ふかみち)くん……。
これぐらい、かしらね?
まだ自己を紹介しようと思えばできるんだけども、わたしの自己紹介なんかで文字数浪費しちゃったら日が暮れちゃうもんねー。『彼氏持ちなんですか?』とかそーゆークエスチョンはまた今度!!
× × ×
戸部(とべ)アツマくんの実家のお邸(やしき)に来ている。『戸部アツマくんって、だれ?』みたいな質問に答えるのは本当にダルいから先送りにするけど、わたしが『お正月、あなたの実家に2泊3日してもOK?』と電話で訊いたら、さほどためらうコト無く『わかったよ』と承諾してくれたのは嬉しかった。
お昼過ぎにおせち料理の残りなどをいただいて、今は午後3時を少し過ぎたところ。
わたしは戸部アツマくんと『リビングB』で向かい合ってソファに座っている。お邸の中で2番目に広いリビング、だからリビング『B』であるというワケ。わたしんちのリビングとダイニングとキッチンの面積を全て足しても『リビングB』には及ばない。
わたしは某・純文学系文芸誌を読んでいて、戸部くんは音楽雑誌『開放弦(かいほうげん)』を読んでいる。
戸部くんの方をチラッ、と見る。『開放弦』が気になるのだ。『開放弦』は、自由過ぎる誌面で異彩を放っている音楽雑誌である。ロ◯キング・オン・ジ◯パンやミ◯ージック・マガ◯ンよりも数倍はっちゃけていると思われる。往年の『フ◯◯通』みたく過剰にキャラ立ちした編集者、そして恒例の『架空2万字インタビュー』……。しょーじき、わたしが今読んでいる中篇小説よりも、戸部くんが今読んでいる今月号の『開放弦』に載っている『架空2万字インタビュー』の方が、何倍も面白そうだ。
戸部くんにオネダリして、『架空2万字インタビュー』を読ませてもらう……って選択肢もあった。
でも、文字に眼を走らせるよりも更に面白く愉しいコトが、この世の中には在るんであって。
戸部アツマくんというオトコノコを前にしているんだから――なおさら。
『戸部くんほどイジり甲斐のある男子もなかなかいない』
わたしは、120%そう確信している。
身長は180センチに迫るくらいだからわたしより20センチ近く高くて、ヒトコトで言えば『タフ』なカラダつき。絶妙にガッシリしていて、見た目に違(たが)わず体力無尽蔵・運動神経抜群……なんだけど、女の子にイジられた時のリアクションが、驚くほどに、カワイイのだ。
わたしも女の子であるから、わたしがイジってみた時も例外ではない。うろたえたあとで反発してきたりは、する。だけど、反発の仕方が、バリエーションに富んでいるし、面白いし、カワイイ。彼をイジっていく時、わたしは『お姉さん』になり、彼は『弟』になるのだ。
決心して、つまらなくなった文芸誌を手放す。
それから、
「戸部くぅん」
と呼び掛けてみる。
戸部くんは、やや警戒気味な表情で、
「なんじゃいな?」
微笑みを絶やさぬように心掛けるわたしは、
「ねぇ知ってる? 今日は元日なんだけど……競馬が開催されてるのよ」
と、情報を提供。
戸部くんの眉間がかなり険しくなってきている。おもしろい。
わたしはそう付け加えるのを忘れない。
南関東競馬は中央競馬と被る日以外は原則年中無休(中央競馬が終わったあとにナイター開催をする日もある)。お正月の川崎開催は関東の地方競馬ファンには風物詩。まさに、お年玉競馬……!!
さて戸部くんのお顔の険しさは着実に度合いを増してきている。そんなにムーーッとしちゃってぇ。お説教でもぶつけたいのかしら? 動じないわよ、わたし。動じるものですか。むしろ、愉快よ。あなたのフキゲンな眉間もフキゲンな口元も、ぜーんぶ愉快なの。感謝してあげてもいいのよ、愉しませてくれてるんだから……!
「あのなあ、葉山」
ついに、戸部くんの口が開かれて、
「おまえ、もう幾つ寝ると共通試験なんだろ? 競馬とかに現(うつつ)を抜かしとる場合かっ」
という『正論』が出てくる。
『抜かしとる場合かっ』なんて、面白過ぎる言い回しだコト。
『言及するのはJRAのメインレースぐらいにしておいたらどーなんだ』と彼が言ってくる前に、
「それもそーね」
と、右手をヒラヒラさせながら彼の『正論』を認める。
しかしながら、ここからが、わたくし葉山むつみの腕の見せドコロ。
戸部くんの両眼に柔らかく視線を合わせてあげるわたしは、
「それはそうと……」
とパーフェクトにシットリした声で言い、直後、温かきジト目を作り上げて、
「戸部くんは、今年は、羽田愛さんを、どーゆー風に愛していきたいの?」
と問いの弓矢を放っていく。
ジト目な視線はもちろん彼の顔面から離さない。
「なななななななっなんだソレはっ」
大声を出しながら戸部くんは戸部くんのソファからガバリ!! と立ち上がる。
彼の両手にジト目な視線を寄せてみたら、強く握られていた。
でも、顔の方に視線を移していったら、見事に照れ照れな表情になっていた。赤くなるのが分かりやすい!!
予想通り、わたしにクルリと背中を向けて、
「飲み物持ってくる……」
と、『まいりました』の声を出す。
戸部くんはダイニング・キッチンの方面に歩き出そうとするけど、
「メロンソーダ持ってきてよ!! わたしのために」
と言って呼び止める。
ぴくんっ、と静止する戸部くん。チカラ強い体格とは裏腹のカワイらしさ。
ややあって、
「わかっとるわ!!」
と、120%やけっぱちな声を発して、再び脚を動かし始める――!!