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【愛の◯◯】センパイは薄(うす)メイクが台無しな口ぶり

 

本日のスペシャルブレンドをコーヒーカップに注ぎながら、羽田(はねだ)センパイをチラチラと見る。

「川又(かわまた)さぁん」

カウンター席の羽田センパイにあっさりと気付かれてしまい、

「見惚(みと)れてるわねぇ」

と図星な指摘をされてしまうから、危うくスペシャルブレンドを注ぎ過ぎそうになってしまう。

わたしが何も言わずにスペシャルブレンドをセンパイの手元に置いたら、

「うつむき気味なのも、わたしのオトナっぽさに魅了されてる証拠なのよね?」

という美しくもイジワルな声が降り注いできて、

「薄(うす)メイクなんだけどなーっ☆」

と、トドメのヒトコトを付け足されてしまう。

薄メイクなのは紛れもない事実なんだろう。薄くメイクを施しただけで、これほどまでにオトナっぽさを際立たせるコトに成功しているなんて。彼女は23歳、わたしは22歳。1つしか歳(とし)が違わないのに、わたしという存在がお子様ランチのように思えてきてしまう。

 

4杯目の本日のスペシャルブレンドに早くも突入しているセンパイが、音も立てずにコーヒーカップを置いたかと思うと、

「芳醇(ほうじゅん)だわ」

とコーヒーカップの中身を称え、

「オリジナルブレンドよりも200円高いワケはあるわね」

と、右手で頬杖をつきながら、コーヒーカップにオトナの女性的な視線を送る。

「ウチの売り上げに貢献してくれて、ありがとうございます」

形式的な感謝になってしまう。彼女を見つめ続けると彼女のオトナっぽさに完全に引き込まれてしまうと思ったから、チラ見するコトしかできない。

「眼が泳いでるじゃーないの」

鋭い指摘をされる。ヒヤリとなる。

「わたし、いいコトを思いついたわ」

……え?

「あなたが上手にわたしの顔を見られないから、あなたの部屋にお邪魔する」

……えっ!?

 

× × ×

 

『見た目はとってもオトナっぽいけど、ロジックは全然オトナびてないですよね……』

わたしの部屋のわたしの勉強机手前の椅子に腰掛けて、こんな思いを胸の中にくすぶらせていたら、

「今は、わたしの顔を上手に見られるようになってる」

とベッド付近のセンパイに言われて、

「進歩よ、ほのかちゃん」

と、ついに下の名前呼びに移行されてしまう。

胸の奥やオデコに熱を感じながら、

「わたしの部屋に何時(なんじ)までいるつもりなんですか」

と問うと、

「気が済むまでに決まってるじゃないの~」

と答えられたから、焦って、

「それ、『無制限』ってコトですよね!? もしやセンパイ、最初から……」

「お泊まりまでは行かないから」

センパイは即座に返答するけど、

「わたしにも、わたしの時間というモノが、ありまして……」

「ほのかちゃんがほのかちゃんの世界に閉じこもっちゃうのは、おねーさん心配だなっ☆」

「せせせセンパイっ」

思わず腰を浮かせてしまうわたしに、

「どーしたのほのかちゃん? わたしのワガママぶりにビックリしちゃったとか??」

というセンパイの弄(もてあそ)びコトバが飛んできて、つらくなる。

 

卒業論文を提出したのをセンパイは報告してきたけど、軽く聞き流した。

ただ、軽く聞き流してしまったのがマズかったのか、

「わたし、丸田吉蔵(まるた よしぞう)くんにまだ一度も会ってないのよね。彼もまた、『しゅとらうす』の常連なんでしょ? 一度でいいからカウンターで同席したいと思ってるんだけどなーっ」

という都合の悪いコトを言われてしまう。

『しゅとらうす』は、さっきまでセンパイがスペシャルブレンドを堪能していた、川又家(かわまたけ)と一体になった喫茶店。丸田吉蔵くんは、いつの間にか『しゅとらうす』の常連と化してしまった、わたしと同年度生まれの男の子。

丸田くんの名前を出されると、免れがたくモヤモヤしてくる。苦手なタイプの男子であるのに加えて、常連と化してしまったから顔を見る機会が激増して困り果てている。

「丸田くんとは、『わたしの彼氏の出身ジムに通っている』って接点がある」

軽く言うセンパイ。それは『接点』と言えるんですかね?

「丸田くん、俳句大好きっ子なのよね。近い内に是非とも、俳句に対する熱い想いを間近で聴いてみたいモノだわ」

楽しそうに言うセンパイ。間近で聴いた結果グッタリとなっても知りませんよ!?

センパイは好き勝手に、

「12月も後半になったんだし、『年(とし)の暮(くれ)』や『年用意(としようい)』が季語の俳句がたくさん詠(よ)まれてそうよねぇ。丸田くんも、『年の暮』って季語だけで、既に15句以上作ってるんじゃないのかしら?」

とか言ってくる。

『15句以上』って生々しい数を出してきたのは何故(なにゆえ)なんでしょーか!?

「あー」

センパイが、間の抜けたような声を出してきて、それから、

「ほのかちゃんゼッタイ思ってる!! ゼッタイ思ってるわよね!! 『丸田くんと会ったコトも無いのに、既に会ってきたような口ぶりになってる』って!!」

……わたしの◯◯な導火線に火がついてしまって、

「センパイ、テンション高過ぎっ!! 薄(うす)メイクのオトナっぽさが台無しじゃーないですかっ!! もっと弁(わきま)えてくださいよっ!?」

と……大声を発してしまう。

「ほのかちゃん怒った~~☆」

わたしの大声に動じないセンパイが腹立たしくて、

「怒るからっ!!!」

と、ガマンできずに再び大声を振り絞ってしまって……。

 

 




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