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【愛の◯◯】60%ぐらいは埋めてあげたいと言いつつも

 

夕食後。『リビングC』。

ノートPCの準備は既にできている。クラフトビールを飲みながら、アツマくんからの『通話OK』の知らせを待つ。

今日の夜のアツマくんの『事情』を把握しているから、『どういう風にイジっていこうか?』と思って楽しくなる。

 

画面上に現れたアツマくんはダイニングテーブル前に着席している。卓上に発泡酒が置かれているのも見える。

私は、先制パンチで、

「ヤケ酒(ざけ)するつもりなの? 愛(あい)ちゃんと土曜の夜を過ごせないが故に」

苦しそうな顔になっていくアツマくんが、

「ちがいますっ!」

と否定する。

だが、否定したにもかかわらず、発泡酒を鷲掴みにして、グイグイと呑んでいく。

矛盾してるなー。

図星だから、否定する。図星だから、否定したにもかかわらず、逆の行動をとってしまう。

クラフトビールの瓶にそっと触れて、アツマくんの矛盾ぶりと呑みっぷりを楽しむ。

 

× × ×

 

「梢さん。告知なんですが」

「なーに」

明後日の24日、月曜日は、ブログお休みなそうで

「ほー。唐突にメタフィクションなコト言ってくるんだね」

「『中の人』から手紙が来て……」

ブログ更新休みを伝えるために、わざわざ手紙書いて、アツマくん&愛ちゃんのマンションに送るんだ。律儀というかなんというか、だな。

私は左腕で軽く頬杖をついて、

「取材旅行だとか?」

「まさに」

答えるアツマくんは、

「日帰りみたいですけど」

ふむふむ。

私は、

「『中の人』が住んでるのって、確か――」

と『中の人』の居住地を開示しかけるんだけど、発泡酒の缶を一気にあおっていくアツマくんが画面に映り込んだから、開示しようとするのをやめて、彼の様子を見守るコトにする。

眼を凝らしてみたら、BIGサイズのポテトチップスが画面の端っこに映り込んでいるのが見えた。……そーだよね、発泡酒のお供、欲しいよね。だから、BIGサイズのポテトチップス、用意してるんだよね。カ◯ビーさんの売り上げに貢献していて、偉いね。

彼は、今晩3本目の発泡酒に右手を伸ばし、ガブガブと呑んでいく。そして、結構大きな音を立てて缶を置いたかと思うと、缶から離した右手をポテトチップスの袋に伸ばしていこうとする。

彼がポテトチップスの袋を掴み取る寸前、私は、

「――そんなに愛ちゃんの不在が淋しいんだ」

と、からかう声を出していく。

彼の右手は予測通り硬直する。

「愛ちゃん、葉山(はやま)むつみちゃんのお宅にお泊まりなんだよね?」

と言ってから、彼の右手が震えだすのを眼に焼き付けた後で、

「きみ、もしかして、葉山ちゃんに妬いてるの? 『あいつをあのオンナに取られてしまった!!』みたいに」

右手を握り始める彼は、

「……ノーコメントで」

と便利なコトバをこぼしてくる。

『ノーコメントで』と言ってはぐらかそうとするのは、幼い証拠だ。

私には、年下男子のそういう幼さが『たまんない』から、

「『おねえさん』が存分に相手してあげるよ~~?」

と、『からかい』の度合いを3段階ぐらい上げていく。

「――もっとも、愛ちゃんがそばに居てくれない淋しさを、100%埋めるコトは、無理だけど。それでも、60%ぐらいなら、埋めてあげられると思うし」

『からかい』の後のフォローも、私は忘れない。

「梢(こずえ)さんの優しさ、ありがたいんですけど」

真面目な声音で言う彼は、

「『話題』は、選んでくださいね? 梢さん、『西日本研究会』の名誉会員であるが故に、西日本に関するコトを話し出すと、止まらなくなるでしょ。ですから、できれば、西日本に関するコト以外の、『話題』を……」

と要求してくる。

だけど私は、そう要求してくるが故に、

宝塚ファミリーランドって遊園地があったの、知ってる?」

と、すごく強引に、兵庫県宝塚市にかつて存在した遊園地の名前を出して、アツマくんを呆然とさせていくのである。

 

 




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