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【愛の◯◯】守ってやらなきゃいかん背中

 

23歳になったばかりの愛(あい)が、邸内の自室にて、ベッドに腰掛け、文庫本を読んでいる。

邪魔するのはマズいだろうか、とも思う。誰だって読書に集中しているトコロを邪魔されたくないだろうし、読書にとりわけこだわりのある愛ならば尚更だ。

ただ、マンションに戻るために邸(ここ)から出る前に、おれには愛に『してやりたい』コトがあるのだった。

いつもは、愛の方から『してくる』コトが多い。多いからこそ、おれの方から『してやる』回数を増やしたくなる。

読書に集中しているトコロに割って入ってでも、行動に移したかった。

愛が23歳のバースデーを迎えたばかりなので、「祝福」の意味も多く含まれる。そんな行動。

 

姿勢を崩すコト無く愛は文庫本読書を続けている。その持続力に素直に感心する。

『教育実習のために切った髪も、ずいぶん伸びてきたものだ』と思いながら、カーペットに腰を下ろしたまま、愛の読書姿を見やる。

しかし、あまり悠長にはしていられないので、できるだけガサツな音を立てないよう丁寧に、カーペットから腰を上げていく。

読書に絶賛熱中状態の愛は気付かない。

ゆっくりとカーペットを踏み、ゆっくりと目前まで近付く。

「なあ、愛よ。文庫本に熱中してるトコ悪いが、少し手を止めてくれないか」

愛は、文庫本のページを凝視したまま、

「ほんとーに良くないわね、読書大好きっ子であるわたしの最高の楽しみの邪魔をしてくるなんて」

「……だよな。良くないとは、思ってるよ」

おれが一気に声をマジメにしたから驚いたのか、視線がかなり上昇した。

戸惑い気味の眼を向けてきて、

「大事なオネガイ……があるとか?」

「かなり大事なのがあるんだ」

ハッキリと答えたら、戸惑い気味の眼のままに、文庫本を閉じてくれて、自分の右サイドに置いてくれた。

「ありがとう」

読書の手を止めてくれたコトに感謝してから、

「――立ち上がってほしいんだがな」

と『オネガイ』を声に出す。

両膝の少し上に両手を置いた愛は、

「なんのために」

と強さの感じられない声で言う。

「おまえは賢いから、おれの意図も読めるんでねーのか?」

と言ったらば、

「もしかして……スキンシップ?」

と見事に言い当ててくれる。

言い当ててから、

「昨日のバースデーパーティーで、あなたと離れてる時間帯が結構長かったのが……良くなかったのかしら」

「カンケーねーよ」

やんわりと言った後で、

「おれはただ、イマ・ココに居るおまえと、触れ合いたいってだけだ」

と思いを伝えていく。

伝えられた愛は、眼を大きくして、逡巡するように口を引き結ぶが、やがて、

「……触れ合いたいのね、どうしても」

と言いながら、ベッドから腰を離し始めていってくれる。

おれの相方は身長160.5センチ。約17センチ背が低い相方を微笑みつつ見つめてみる。キレイでカワイイ眼におれが視線を合わせたら、相方は少しだけ猫背になった。

「はやくしてよ」

コドモっぽい声が聞こえてきた。23歳になったクセに中学生みたいな声を出しやがるんだもんな。

「はやくしてってば」

眼の前の慌てぶりが頂点に近付こうとしているので、

「わかった」

と答えてから、カラダの前側同士がぶつかる寸前まで距離を詰める。

素早くおれは抱き締める。素早くおれは包み込んでいく。

フワフワしたカラダだ。23歳になったというのに、凝り固まった箇所が少しも無い。

柔軟さなどを瞬時に感じ取った後で、栗色超ロングヘアを優しく優しく撫で、背中をぐっ、と押さえてやる。

守ってやらなきゃいかん背中だと思った。

「あったかいだろ?」

カラダの温(ぬく)みには自信があるので、そう訊いてみる。

「あなたのカラダがあったかくないワケが無いじゃないのよっ」

愛は、コトバをがんばって出してきてくれる。

「アツマくん」

名を呼んできてから、

「23歳になっても、あなたのコトが、ダイダイダイスキっ」

「おれもダイスキだ」

1秒と経たずにキモチを伝え返した。

愛の発熱がより一層ハッキリと感じられるようになった。

胸元に押し当ててくるオデコの熱さが、デレデレな状態に限りなく接近している証拠だった――。

 

 




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