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【愛の◯◯】2人の先輩との「女子飲み」で◯◯

 

「昨日、利比古(としひこ)が反抗期っぽかったんですよぉ」

洋風居酒屋といった趣(おもむき)のお店。白ワインの入ったグラスを片手に、女子校で2期上だった小泉小陽(こいずみ こはる)さんを眼の前にして、わたしの弟について言及する。

「どーいう御様子だったのかな。興味あるから、詳しく」

小泉さんと利比古には共通の趣味があって、親しい。小泉さんがわたしに向かって前のめり気味姿勢になって興味を示すのも自然の成り行きと言えるだろう。

白ワインを口に含んでジックリと味わった後で、小泉さんにニッコリと微笑みかけてから、昨日の利比古のツンデレぶりを詳細に語っていく。本人の名誉のために、マンションの入口近くでわたしがカラダを包み込んじゃったコトだけは伏せておいた。

「羽田(はねだ)さんは利比古くんのコトが本当に好きなんだね。好きだから、それだけ上手にからかったりできるんでしょ」

「ハイ、大好きですよ」

「わたし、羽田さんと違って、きょうだい居ないからなー」

「彼氏さんは居るんでしょ?」

箸を動かそうとしていた小泉さんの手がビタァッ!! と止まった。

「……話したっけ。伝えたっけ」

俯く小泉さん。

「筒抜け、という感じです」

そう伝えたら、彼氏さんとはまだ初々しい小泉さんの顔がほんのりと赤くなった。まだそれほど呑んでないのに。

「たいへんなんだよ」

小泉さんは、弱めの声音で、

「社会人同士だし」

それから、モスコミュールをぐぐっ、と飲んだ後で、

「浮気もコワいし」

そんなコトをおっしゃる小泉さんだったんだけど、わたしは、

「――不安がってばかりじゃ、ダメだと思うな」

眼を見開く小泉さんが、

「えっ、羽田さん、厳しい」

「ゴメンナサイ。」

即座に軽く謝るけど、

「小泉さんともーっと仲良くなりたいから、敢えて厳しいコト、言っちゃったの」

と、タメ口で、コドモっぽく言って、向かいの席の彼女の顔をさらに赤くさせる。

 

× × ×

 

「八木(やぎ)のヤツ、遅いね」

お店の入口方向を小泉さんが見た。小泉さんの女子校同期の八木八重子(やぎ やえこ)さんも来て呑むコトになっているのだ。

「お仕事が忙しいんでしょ」とわたし。

社畜気味なのかな」と小泉さん。

「心配なんですね」

わたしが言うと、小泉さんはテーブルの上で両手指を軽く組んで、

「親友なんだもの」

それはそうかー。

そうよねー。そうなのよねー。

小泉さん、八木さんに対して、優しい。

愛情がにじみ出てる感じ。

愛情がにじみ出てるのは、しっとりした彼女の髪質を味わうコトでも感じるコトができちゃう。

髪質しっとりで、わたしよりオトナだ。小泉さんみたいな社会人に、なってみたいな。

「……待ってあげるとするか」

そう呟いてから、小泉さんは、

「……あのさ。空気を読めてなかったりしたら、すっごく申し訳ないんだけど」

「わたしの教員採用試験大失敗のコトですか?」

うぐ、と小泉さんはうろたえる。

高校教師生活3年目の小泉さんは、うろたえの持続する眼で、

「他人事(ヒトゴト)じゃないって、思うし。正直に言うと、羽田さんなら、『1発で合格(パス)して当たり前』って思っちゃってた」

「『1発で合格(パス)して当たり前』なのは、わたしなんかよりも、小泉さんの方です」

「え!?」

「小泉さんは私立だけど、新卒で採用されたでしょ?」

わたしは、グラスの中の白ワインをもてあそび、くいっ、と少しだけ飲んでいった後で、

「わたしよりも先を行ってる小泉さんだから――背中を、追いかけてみたいな。これからも」

「ん……」

「戸惑わせちゃったか」

背中を追いかけたい彼女を「くすぐる」ように、左手で頬杖をつきながら、

「悪いわたしで、すみません」

と言ってみる。

言ってみた直後に、わたしと小泉さんのスマートフォンからLINE通知音が鳴り響いた。

 

× × ×

 

「羽田さん、精神状態だいじょうぶ!?」

「ちょっとっ八木っ、着席していきなりそれは無いんじゃないの」

「だって、わたしも羽田さんと同じぐらいショックだったんだもん、筆記試験通れなかったって聞いて。戸部(とべ)くんがちゃんとケアしてあげられてるかも心(ココロ)もとないし」

わたしから見て小泉さんの右側に着席した八木さんに向かって、

「アツマくんは、ちゃんとケアしてくれましたよ。アツマくんに対して過小評価なのは、八木さんらしいですけど。わたし、段々と落ち着いてきてます。そんなに心配要らないです」

「だけど、だけどね、大事な後輩の未来が、わたしはとっても心配だから。『これから羽田さんはどうなるんだろう!? どうしていくんだろう!?』と思っちゃうと、仕事もあんまり手につかない……」

「仕事は、手につかなきゃ」

苦笑しながらわたしは言って、

「わたしを想ってくれてるのは、もちろん嬉しいですけど」

と感謝の意を伝え、それから、

「ところで! ――高知旅行に役に立つ情報をたくさん提供してくれて、ありがとうございました」

と、なかば強引に話を曲げていき、

「八木さんが何冊も貸してくれた高知のガイドブック、とっても役に立ちました!」

と、愛情タップリに、高知ガイドを提供してくれた彼女に笑いかける。

「……流されちゃった、羽田さんのコトもっと励ましたかったのに」

と八木さん。

「流しました☆」

とわたし。

八木さんの手元にビールジョッキが置かれる。

ジョッキの中身を結構な量減らす八木さん。

とんっ、とジョッキを置いて、お通しに箸を伸ばしつつ、

「3泊4日なんでしょ? ひとり旅でもあるし、戸部くんのコトが途中で恋しくなっちゃうんじゃないの」

「寂しがるのはアツマくんの方です。わたし断言します」

断言した途端に、八木さんの箸からお通しがポロッとこぼれた。

小泉さんが堪(こら)え切れずに笑い出した。

 

 




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