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【愛の◯◯】4杯目のコーヒーを飲み干したのを合図に◯◯

 

大井町侑(おおいまち ゆう)は社会人1年生だ。だから、休日でないと顔を合わせにくい。今日は日曜日。侑と過ごせる貴重な曜日である。

わたしが『プチ帰省』中のお邸(やしき)を侑と過ごす場所に指定した。

昼下がり。広大な『リビングA(仮)』。わたしから見て左斜め前のソファに座っている侑の脚線美が今日も素晴らしい。きっと洗いたてのジーンズなんだろう。

「エロい眼で見ないでよ」

と、侑は苦笑。

「そんな眼つきになれるってコトは、元気が戻ってきてる証拠なのかしら」

と、侑は微笑。

それから、

「前向きにね、愛(あい)」

と、暖かい声と暖かい笑顔でわたしを励ましてくれる。

 

コーヒーを飲みながら親友同士の会話に花を咲かせていた。

侑がまだ1杯目を飲み切っていないのに、わたしは3杯目を味わい始めているトコロだった。

侑と一緒にわたしを元気づけてくれるホットでブラックな飲み物への感謝のキモチを強くしていたら、

「あら、あすかちゃんじゃないの」

発見すると同時にわたしの妹分に声を掛けていたわたしがいた。

わたしの可愛い妹分たるあすかちゃんはいつの間にか『リビングA(仮)』に足を踏み入れていた。ソファに座る侑の背後を通り過ぎようとしていたみたいだ。

わたしの声掛けに呼応するように侑が顔の向きを変えて、あすかちゃんにジィーッと微笑みを寄せていく。

「あすかちゃん、こんにちは」

凛とした表情で爽やかに挨拶する侑。

「こんにちは、侑さん。久しぶりですね、お目にかかるのも」

あすかちゃんは無難に挨拶を返すけど、

「ねえねえ。どうしても急がなきゃならないんじゃなかったら――」

「……侑さん?」

「――わたしの隣に座って、お話したりしましょうよ」

突然の侑の要請に驚きとたじろぎのミックスされた反応を示したあすかちゃんが、困ったように右のほっぺたを右人差し指でぽりぽりと掻き始める。

「会話に花を咲かせるのが2人から3人になったら、楽しさが1.5倍どころじゃなくて15倍ぐらいになると思うんだけどなー」

と、侑は凛とした微笑みをあすかちゃんに見せ続ける。

「わたし、そんなに貢献できないかも、会話の『引き出し』が最近減ってるし……」

とあすかちゃん。

「そう? やってみなくちゃ分かんない面もあると思うわよ? わたしの隣に座って喋り始めたら、話題が案外どんどん出てくるかもしれないじゃない」

と侑。

こういうやり取りをゆったりと眺めていたわたしは、

「強制はダメでしょ、侑」

と、コーヒーカップを置きながら明るくたしなめる。

「あすかちゃんにはあすかちゃんの都合があるんだから」

と、明るいたしなめを続けて、それから、

「特に、あすかちゃんにとって、今は『大事な時期』なんだから」

侑が再びわたしの方に向いて、

「『大事な時期』? あすかちゃん、就職もとっくに決まったんだし、あとは卒業するだけ――」

侑が言い終わらない内にあすかちゃんが歩き始める。脇目も振らずに『リビングA(仮)』から出ていく。

出ていく背中を見送った侑が、不思議そうに、

「わたしの『押し』が強過ぎたのかしら」

と言うけど、

「ちがうわよ」

とわたしは柔らかく否定して、

「今ね、すーっごくデリケートなのよ、あの娘(こ)ってば」

と、柔らかく美しき笑顔を作り上げながら、鮮やかで美しき栗色ロングヘアを少し摘(つま)み上げると共に、侑に言う。

不変の黒髪ストレートの侑がかなり前のめりになってきて、

「それは是非とも説明して欲しいトコロなんだけど」

苦笑しながらわたしは、

「全部説明しちゃうと面倒くさくなるのが確定的だから、『ほのめかす』程度に情報を呈示するわ」

と、興味津々モードな侑に告げる。

 

× × ×

 

「十人十色(じゅうにんといろ)ね。いろいろあるのね、みんな」

2人分のコーヒーを乗せたトレーを持って『リビングA(仮)』に戻ってきたら、ニッコリしながら侑が言ってきた。侑にしては珍しく無邪気な笑顔だ。

双方の手前にコーヒーを置いてからソファの元の位置に腰掛けたわたしは、

「それをちょうど実感してるトコロだわ。あすかちゃんはいろいろ抱えていて、わたしはいろいろ引きずっていて」

「自虐的にならなくてもいいでしょ、愛。たしかに、採用試験失敗のダメージは大きかったと思うけど、あなたの今日の顔色をチェックしたら、『回復できている』って感じるコトができたし」

右手を右ほっぺたに当てた頬杖ポーズで侑はそう言って、

「何より、4杯目のコーヒーを半分以上既に飲んじゃってるのが、回復できている証拠でしょ?」

「確かにね。侑、やっぱりあなた鋭いのね」

わたしの分のコーヒーはダイニング・キッチンに居た時点で既に飲み出していた。ハイピッチで中身を減らしているコーヒーカップの把手(とって)に指をかけて、わたしは、

「顔色の良さと一緒に、お肌の潤いも感じ取ってるんじゃないの?」

と楽しく言ってから、コーヒーを啜っていく。

「出た。愛の性格不美人」

面白いコトを侑が言ったから、コーヒーカップを置く時に少しだけ音を立ててしまったけど、

「そうやって『おちょくってくる』ってコトは、『おちょくられる』覚悟があるってコトよね」

とわたしは言い返して、熱いジト目を瞬く間に作り上げる。

「反撃したいのなら、いつでもどーぞ」

『望むトコロよ……!』と胸の中で言いながら、熱いジト目を左斜め前の侑に注いだまま、4杯目のコーヒーを飲み干していく。

4杯ものコーヒーで十二分にエネルギーを蓄えられたわたしは、

「じゃあ、教えて?」

侑は、

「ちょっとちょっとぉ、『目的語』を付けなさいよー」

と、まだ余裕の笑い顔、だけど、

「『新田俊昭(にった としあき)くんとのコト』よ、『目的語』は」

と告げるコトで、わたしは一気に形勢を動かしていく。

眼が点になるかのようなリアクションのお顔を見せてきたかと思えば、

「愛……。あなたって……わたしに『ココロの準備』をさせる気なんか……全然無いみたいね」

と、侑はコトバをふるふる震わせまくる。

すかさず、

「そんな気なんかあるとでも思った? わたし、美人だけど性格が悪いのよ。あなただって当然(とーぜん)分かってるはずなのに」

と攻めていって、背筋をさらに伸ばしてから、洗いたてと思われるジーンズに包まれた侑の両膝にホットな視線を伸ばしていく。

「彼との、新田くんとの、カンケイ、に関して……何が知りたいってゆーの、あなたは」

劣勢は明らかな侑はややピリピリとしながら、わたしに言い返してくるけど、

「7月以降、新田くんの方からのスキンシップは、通算何回あったのかな??」

と、動じないわたしは、イタズラなクエスチョンをイジワルに投げつけてあげるのである。

侑が一気に幼くなった。多くの意味で幼くなった。唖然としてコトバを失った顔が、コトバで表現するのは難しいぐらい、わたしの小さな胸をくすぐってくる。

とりあえず、

「かわいいわね、今の侑、最高(サイコウ)に可愛くなってる」

と、ダメ押しの如く、わたしは。

「しゅしゅ主語、主語っ、愛っ」

慌てて言う侑に、

「顔」

と、これ以上簡潔にはできないぐらい簡潔に、わたしは応える。

「顔!? フェイス!? フェイシャル!?」

あー。

気が動転しちゃってるなー、カンペキ。

まあ、いいや。

「ねえ、あなたって、新田くんの前だと、現在(イマ)よりも15倍ぐらい、コドモっぽくてカワイイ表情になる時もあるんじゃーないの??」

そう訊いた後で、侑の右膝の横で右の握り拳が形作られているのを確認してから、

「好きなんだもんね~~、オトコノコとして、彼のコトが♫」

と、わたしはトドメを刺していく。

 

 




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