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【愛の◯◯】年下のオトコノコだからテレフォンで◯◯

 

日曜の朝のお勤めが終わったトコロです。お勤めから解放されてココロ豊かなわたしは、階段をのぼって自分の部屋へと歩いていき、ドアノブを回します。

同じ階(フロア)に部屋のあるお嬢さまが既にお出かけになっているので、『自由!』というキモチが倍増しになっています。束縛が無いが故に、メイド服着用のままにベッドに飛び乗り、両脚を前方へと長く伸ばしていきます。

わたしは168センチでお嬢さまは158センチ、(言うまでも無く)わたしの方が脚が長いのですがご本人の名誉のために強調するのはやめておいて、某・白泉社から出ている某・月刊少女漫画雑誌を枕の近くから引き寄せ、まだ読んでいなかった連載漫画に眼を通していきます。

『少女漫画』『少年漫画』みたいに括(くく)りは存在していますけども、男子もかなり少女漫画を読みますし、女子もかなり少年漫画を読みますよね。もしかすると、年齢や性別に則(のっと)った伝統的な漫画雑誌等(とう)の棲み分けというのも、これからますます意味を為さなくなっていくのかもしれません。ボーダレスですボーダレス。今年度で26歳の住み込みメイド女子の個人的意見ですが、少女漫画の醍醐味を知ることのできた殿方(とのがた)はとっても幸せだと思います。

 

× × ×

 

某・白泉社の某・月刊少女漫画雑誌を最後のページまで読み終えて次なる少女漫画雑誌へと眼を向けようとしましたら、メイド服のとある場所に入れておいたスマートフォンから音楽が流れてきました。もちろん着信メロディであります。『マナーモードにしないでメイドのお仕事をしていたの!?』という批判は甘んじて受けますが、そんなコトとは関係無しにわたしの気分は高く揚(あ)がり、その帰結としてウキウキしながら画面の受話器マークに指をくっつけるのでした。

 

× × ×

 

笹田(ささだ)ムラサキくんのボーイソプラノが耳に直(ジカ)に響きます。

『お電話するのが少し早かったでしょうか』

そんな風に遠慮気味に訊いてくる彼に、

「ぜんぜんですよ~~。早くなんかありませんから~~。『フライングしちゃった!』だとか、良心を痛めるコトなんて」

と答えて、

「ムラサキくん? せっかく就職を勝ち取ったんですから、もっと『遠慮無し』になってほしいんですよ」

『遠慮無し、ですか……? ぼくが……?』

「あなた以外に誰が居るっていうんですか」

苦笑しながらそう答えたわたしは、いったんスマホをベッド上に置き、

「何年経っても、鈍(ニブ)いオトコノコね……」

と、スマホの向こうの彼に聞こえないように呟き、それから再びスマホを手に持ちます。

「就職浪人っていう過酷な状況下で内定ゲットしたんですよ、あなたは? もっと堂々としてくれなきゃ、お姉さん許したくなくなっちゃう」

イジワルなわたしの語り口に、彼は唖然となったかのような声で、

『どっ、どーゆーイミなんでしょーか』

わたしには余裕がいっぱいあるので、

「コトバ通(どお)りよ。」

と、20代中盤から後半へと移行していく年代の女性に相応しき色合いの声で応(こた)えてみます。

わたしがタメ口になったからでしょう、彼からの返答が滞ります。

腰のくびれの横の左人差し指でベッド上をポンポン、と軽~く叩いておりましたら、

『確認なんですけど』

というムラサキくんの真面目な声が、右耳にあてているスマホから響いてきました。

『明日は午前10時30分に三鷹駅集合。集合の場所はこの前もお伝えした通りに――』

愉快なわたしは遮って、

「『集合』ってなによ『集合』って。3人以上で出会うワケじゃーないでしょ? まさかあなた、デートに『特別ゲスト』を付け加えるつもりだったの? あなたとわたしのデートのはずなのに第三者を混ぜ込むだなんて、斬新な発想するのねぇ」

冗談が半分以上のわたしのコトバに、ムラサキくんはやっぱり絶句してしまいます。

ムラサキくんが絶句から立ち直るのを待つ時間すらも本当に愉快です。

『……最初に向かう先は、蜜柑さんリクエストの雑貨屋さんで良かったですよね』

徐々に立ち直りながらコトバを再び発してきてくれるムラサキくん。

でしたが、

「ムラサキくんムラサキくん、あなたとわたしが出会う場所は? さっき伝えようとしてたじゃないのよ。順序良く説明してちょーだいよ♫」

と、わたしは3つ年下の彼を「くすぐる」のをガマンできないのでありました。

 

× × ×

 

――まぁ、こういう風に、主導権を終始わたしが握っていた通話ではあったんですけども。

 

終わった後で、ベッドの掛け布団の上にうつ伏せになって、

「あの子ホントにカワイイ。ワープ装置でも発明されてたら、あの子の居る場所に今すぐ飛んで行って、あの子を抱き締めてあげられるのに」

と、どーしようも無いヒトリゴトを吐くのをどーしても抑え切れないんであります。

「土日に仕事を頑張ったから、明日は『オールフリー』の日ね。お嬢さまやお父さんやお母さんが何と言おうと、家事の要求なんか拒み続けてやるんだから。……あの子と三鷹デートなんだから、家事を担当する余裕なんてあるワケ無いでしょ」

うつ伏せのまま、掛け布団に向かい、長台詞(ながゼリフ)のヒトリゴト

どーしようも無いメイドで大変申し訳ありません。

 

 




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