「アツマさんの隣でウェディングドレス着てる愛ちゃんが早く見たいよ」
衝撃的な発言を繰り出してきたのは城(じょう)ミアちゃんだった。
わたしの体温は当然激しく急上昇する。周りの風景が一瞬見えなくなった気がした。眼に映る風景はどうにか取り戻せたけど、ココロとカラダの激しい発熱は抑え切れない。
東京都心にも本格的な蒸し暑さは到来している。その蒸し暑さと「まぜこぜ」になって発熱が止むことを知らなくなる。絶対赤くなってる。わたしのキレイな二の腕もわたしのキレイな顔も絶対赤くなってる。肌のきめ細やかさには自信があるわたしは、透き通った二の腕や顔を一刻も早く取り戻したくて懸命に頑張るけど、自分自身の熱を冷まそうとするたびに冷ませなくなる。
「あちゃあー」
とびっきり落ち着いた声でミアちゃんが、
「炎上寸前にさせちゃったかー、愛ちゃんを」
と言ってそれから、
「ゴメンねー。そんな風に発熱してる愛ちゃんも、永遠に眼に焼き付けたいぐらい捨てがたいけど」
極度にテンパるわたしは、
「わっ、わたしっ、SNSとか、してないからっ、アカウントが存在しない代わりに、生身(なまみ)の炎上がっ、他の子よりもっ、激しくなっちゃうのよっっ」
と震えまくりの声を出してから、
「みみみミアちゃん?? あのね、あのね、幾らここがキャンパス内の究極の穴場スポットだからって、通行する人間が極度に少ないスポットだからって、言って良(い)いコトと良(よ)くないコトの区別は、やっぱりやっぱり……!!」
きょとーん、としたお顔のミアちゃんは、
「そんなにマズかったかなー、わたしのお気持ちの表明が」
究極の穴場のベンチで二人掛けというシチュエーション。すぐ右隣に座っているのがミアちゃん。自らの「慌てふためき」を鎮めたいという思いも籠めて、ミアちゃんの左手の甲にわたしの右手のひらを乗っける。
それから、
「そういった類のお気持ち表明はね、屋外だと美味しくないの。たとえば、『彼』の居ないマンションの寝室にあなたとふたりきりで入ってる時とかなら、ギリギリ美味しく食べられる……かも」
と説明。
……何言ってんのわたし。混乱してるし混濁してるじゃないの。
混乱・混濁のみならず、「混沌」という名の沼に腰の辺りまで入りそうになっていて、大ピンチ。
ミアちゃんが軽快な笑い声を発した。
カラダとココロの温度がジェットコースターみたいに急降下する。今度は冷え込みを押し留められなくなる。
「ホントーだったんだねえ。愛ちゃん、大きなピンチが来ちゃうと、世界でいちばん空回りしちゃうって」
「からまわり……」
「図星でしょ? 図星なんでしょ? しょーじき、地球でいちばんカワイイよ☆」
ベンチから腰を浮かせられないままに左右をキョロキョロと見てしまいながら、わたしは、
「きょきょきょ今日は、早めに帰宅しちゃおっかなーっ! 土曜日だし! 地球上の誰がどう見たって、土曜日だから!!」
「――だったらわたしもついてくよ」
スマートかつ強烈なコトバの「一撃」をミアちゃんから食らってしまった……。
「『あのホテル』を見ながらわたしは歩きたいなあ」
『あのホテル』!? どのホテル!?
「あるじゃんあるじゃん、花の名前に『山』がくっついた、ラグジュアリーな……」
「そそそれ以上はダメっミアちゃん」
「なんで?」
「えー、わたしたち会社でもなんでも無いでしょー?」
「ダメなものはダメなの」
わたしはミアちゃんの左手をググッと押さえ込む。
けれどもミアちゃんは15秒間しか沈黙してくれずに、
「『あのホテル』だけどさあ」
と呑気に言って、
「愛ちゃんの最愛の『彼』との、『式場』の……有力候補じゃない!?」
と結構な音量(ボリューム)を出して言いつつ、わたしに顔を寄せてくるから……二の腕をつねりたくなってしまう。