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【愛の◯◯】実作は 苦手な俳句 オタクかな

 

「清々(すがすが)しく晴れた土曜日の午前10時過ぎ。それなのに不都合にも、丸田吉蔵(まるた よしぞう)くんが来店してきて居座る気満々で……!」

「エーッその言い回しは何(なん)なの、ほのかさん」

「丸田くんのコーヒーの味わい方がいけないんだよ、だからこういう言い回しで口撃(こうげき)したくなっちゃうの」

「だったら、どういう味わい方をしたら良(い)いの?」

「それは……」

「ほのかさん、たしかに味わい方に不満はあるかもしれないけど、このコーヒーがとっても美味しいっていうおれのキモチは受け取ってもらいたいな」

「……丸田くん、ますますキモい、言い回し」

「エエッ、まさかの『5・7・5』!?」

「ちっ違うよ、悪口がたまたま『5・7・5』になっただけだよっ。意図的に俳句や川柳のリズムにしたかったワケじゃないし」

「『俳句や川柳のリズム』かぁ……」

「なっ何か企んでるんじゃないの丸田くん!? 眼つきが相当キモくなってるし!?」

「なんで『企んでる』なんて思うのかな」

「だって丸田くんは誰もが認める『俳句信者』だし。今にも俳句語(がた)りを始めちゃいそうな雰囲気に見えるし」

「俳句を語ったらダメなの?」

「ダメだよ! 夕方まで語り続けちゃいそうだし!! 『そのコーヒーを飲んだら一刻も早く出ていってほしい』、これがわたしの本音!!!」

「まあまあ、ほのかさん落ち着いて。そんなに拳を握り締めないで」

「丸田くんってホントに……!!」

「――この前、キレイに咲いている桃の花を見たんだ」

「!? も、も、もものはなっ!?」

「きみは知ってるかなあ? 『ふだん着でふだんの心桃の花』って名句(めいく)があるんだけど」

「……知ってる。悔しいけど、知ってる。誰の句なのかまでは知らないけど」

「細見綾子(ほそみ あやこ)だね」

「即答だね。流石は俳句オタクだ」

 

× × ×

 

「わたしにはやっぱり分かんないよ、『ふだん着でふだんの心』と『桃の花』がどうして響き合うのかが。『桃の花』じゃなくて『梨の花』でも良くない?」

「おれが30分間解説してあげても、まだ分かんない?」

「分かる方がおかしいと思う」

「もしかすると――ほのかさんが、『ふだん着』でも『ふだんの心』でも無いからなのかなあ」

「ままままた、とっぴょーしもないコトをっ」

「『ふだん着』とは違う接客用のエプロン。そして、『ふだんの心』と大違いなのは言うまでも無く」

「……いつにも増して、あるコトないコトばっかり」

「やっぱし『ふだんの心』じゃないね、大違いだね。とうとう背中を向けちゃうんだもん」

「誰のせいで背中を向けたと思ってるのっ!!」

「ほのかさんに 春の怒りの ありにけり」

「ままままさかの即興俳句!?!?」

「てへへ」

「……」

「どうだろうか、この句は」

「……字余り。それに、『春の怒り』だなんて、取って付けたような季語の使い方。駄句(だく)としか思えない」

「おぉーっシビアだ」

 

 




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