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【愛の◯◯】窮地を救ってくれたけど◯◯

 

寝不足だった。

月曜日の15時を過ぎていた。お邸(やしき)に『プチ帰省』していたわたしは、約束通りにお邸を訪ねてきてくれていた徳山すなみさんと共に、わたしの部屋に入っていた。

さっきまで、少し早いコーヒータイムだった。階下(した)のダイニング・キッチンで、クッキーを食べながら2人でコーヒーを飲んでいた。砂糖・ミルク入りのコーヒーを1杯だけ飲んだ徳山さんに対し、わたしはブラックなコーヒーを3杯も飲んでいた。しかしそれでも、寝不足は消えてくれなかった。

チカラ無く座り込むようにベッドに腰掛けているわたし。カーペットしか見ていない。寝不足に起因するストレスめいたモノが、乱調の一歩手前へとわたしを持って行く。

こんなのでは、せっかく邸(ここ)まで来てくれた徳山さんに申し訳無さ過ぎる……。

さらに沈み込もうとしていた。乱調になってしまいそうだった。

しかし、ここで、わたしの勉強机手前の椅子から徳山さんが立ち上がる音が聞こえてきた。

1つ年下の彼女は、わたしのベッドに近付いて、わたしの右隣に腰を下ろした。

俯(うつむ)いたまま視線を右に寄せた。徳山さんの長くて羨ましい脚が視界に入った。

身長165センチの彼女が、身長160.5センチのわたしに、

「調子が悪いんですか?」

と、ふわりとした口調で問うてくる。

約5秒間だけ沈黙してから、

「……どうしてわかったの。いつからわかったの」

と、わたしは弱々しく問い返す。

「わかったのは、コーヒーを飲んでる時」

答える徳山さん。

「愛さん、コーヒーカップ持つ手つきが、なんだか危うかったので」

的確な指摘……!

約15秒間の沈黙の後(あと)、

「わたし、昨日の夜、いろいろなコト、長時間考え続けちゃって、あまり眠れなかったの」

と、わたしは、吐き出す。

「具体的に訊かない方が良(い)いですか?」

優しく問いかける徳山さんは、わたしの右手を左手で既に包み込んでくれていた。

どんどん徳山さんに甘えたくなって、

「言っても良いわよ、具体的に。上手に説明できる自信が無いけど……」

「だったら」

徳山さんは、

「わたしが、上手に説明するのを、助けてあげる」

と温かく言ってくれる。

 

× × ×

 

徳山さんのおかげで、重かったモノを全て放出できて、寝不足が気にならなくなった。今日は徳山さんの方が断然オトナだった。

 

× × ×

 

窓の外が暗くなりかかっている。

「ごめんね。わたし、普段は1人でなんでもこなせるんだけど、イザという時になると、過剰に自分を追い込んで、誰かの手を借りるのが上手にできないの。今日の『寝不足ピンチ』でも、やっぱりそんな風になっちゃった」

「悔やんだって仕方無いですよ、愛さん」

「うん」

頷くわたし。

わたしは依然としてベッド座(ずわ)りで、徳山さんはカーペット座(ずわ)りに移行済み。

部屋のドアの方角を見たわたしは、

「やっぱり、あすかちゃんが、切羽詰まり過ぎたわたしを助けるのが上手なの」

「分かります。愛さんとあすかさん、長年の付き合いでカンペキに通じ合ってるんだし」

徳山さんはそう言ってから、

「もうほとんど、ホントの姉妹(しまい)と変わりないですよね?」

と付け加える。

わたしは、あすかちゃんの親友たる徳山さんを見下ろし、

「あなたの言う通りよ」

と応(こた)える。

そしてそれから、

『せっかくあすかちゃんが話題の中心になってきてるんだから、ここは、ひとつ……』

と、ココロの中に『イジワル』なキモチを芽生えさせる。

「――もう夕方6時、過ぎてるわね!!」

そんな声をいきなり発したわたしは、

「夕ごはんの前におフロに入るのがベターだと思うの。徳山さん、あなたもそう思わない!?」

と言った瞬間に、前のめりになる。

「えっと、おフロ……ですか?」

わたしのテンションが唐突に上がったから、彼女は少し仰(の)け反(ぞ)る。

畳み掛けたくて、間(ま)を置かず、

「今、あすかちゃんはあすかちゃんの部屋にゼッタイ居るはずだわ。わたしが呼んでくるから、『2人で』入っちゃいなさいよ」

徳山さんはすっごく狼狽(うろた)えて、

「入る、って……階下(した)の、大きなおフロに、ですよね……??」

「当たり前でしょ」

余裕たっぷりになってきたわたしは、

「『2人で』ってゆーのは、とーぜん、あなたとあすかちゃんの2人だけで、脱衣所に行って、脱衣して、それからそれから……」

「だだだだだダメですっっ!!!」

ものすごい勢いで徳山さんが拒絶した。不可解な程の拒否反応。

同じ年代の女子ゆえに、徳山さんの『恥ずかしさ』を直(ただ)ちに把握して、

「『わたしと2人』だったなら、そんなにテンパらないのよね? 『あすかちゃんと2人』って条件を突きつけられたから、そんなにテンパりまくってるのよね??」

「愛さん……!!」

図星の混じった呆然状態になる彼女がすっごく可愛かった。

なぜ、徳山すなみさんは、親友であるはずのあすかちゃんと2人で入浴するのを、ここまで嫌がるのか?

――文字数とオトナの事情で、残念ながら、割愛せざるを得ない。

 

 

 




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