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【愛の◯◯】リスペクトしているから忘れられない先輩

 

誰がどう考えても2月だ。2月に入ったということは、3年生が自由登校期間に入ったということ。他の学校の事情は知らないけど、少なくともわたしの高校では、3年生は2月になったら自由登校である。ただ、本日2月1日は土曜日なので、自由登校期間に入った実感はあまり無い。

何のための自由登校期間なのか? 当然、自分の進路のために努力するための自由登校期間なのである。全員ではないけど、進学を希望する3年生が大半の高校である。わたしも進学組だ。共通試験の自己採点結果とかはまた別の話として、勉強机の上には志望大学の過去問集が複数積まれている。

ただ、本日は受験勉強をするのは午後からにして、過去問集を勉強机の端っこに追いやって、机上(きじょう)のド真ん中にスマートフォンを置き、LINEアプリのアイコンをタップした。

 

スマホの画面にオンちゃんが映っている。高画質であるのも手伝って、お肌のコンディションが良好なのを感じ取れる。

「調子良いみたいだね。この調子なら、何の不安も無く『スポーツ新聞部』を任せられるよ」

前・部長のわたしは現・部長のオンちゃんに力強く言う。

「頼むぞ~。貝沢温子(かいざわ あつこ)部長」

敢えてニックネームではなく本名フルネームで呼んでみた。

『なんですかー、その呼び方』

オンちゃんは可愛く苦笑し、

『なつきセンパイ、すこぶる元気なんですね。わたしも安心しました。これぐらい元気なら、何の不安も無く大学受験に送り出せる』

ほーーっ。

「ありがと、オンちゃん。背中を押してくれて嬉しいよ。――スポーツ新聞部ってさ、『ジンクス』みたいなモノがあって。稀(まれ)な『例外』を除いて、ほとんどの部員が大学に現役合格してるんだよ」

『あー。そういえばそうかも、ですね』

「例えば、昨年度の3年生トリオも、みんな某有名私立大学に現役合格してるじゃん?」

『えっと、日高ヒナ先輩はワセダに、水谷ソラ先輩と会津ダイチ先輩は――』

「慶応の次の元号の大学に」

わたしがそう言うと、オンちゃんは可笑(おか)しそうに、

『もーっ。なんでそんなボカシ方するんですかー』

「ボカシた方が面白いから」

『あははっ』

とても可笑しそうに笑ったオンちゃんだけど、やがて、微笑みながらも幾分真面目な顔つきになって、

『なつきセンパイ、さっき『例外』って言いましたけど。……わたしの3つ前の部長の加賀真裕(かが まさひろ)さん、ですよね?』

「そ。加賀先輩は、浪人した。珍しいパターン。――でも、彼がスンナリ現役で大学に入ってるトコロの方が、わたしは想像しづらいんだけど」

『なんだか辛口ですね。なつきセンパイのセンパイなのに』

「んーっ。『辛口』とはちょっと違うかなあ」

『違うんですか?』

わたしは、少し間(ま)を置いてから、

「だってわたし、加賀先輩のコト、とってもリスペクトしてるし。だからこそ、『現役合格してる姿なんて想像しづらい』って言うんだよ。というのはね……」

 

× × ×

 

……説明していたらカラダが温(あった)まった。

 

時刻は正午に近付いていて、陽射(ひざ)しが部屋の窓を温めている。

オンちゃんとの通話はとっくに終わっている。

終わった直後にぽしゅん、とベッドに着座して、通話内容を振り返った。やがて振り返るのに飽きたから、ごろん、と寝転んで、時折寝返りを打ちながらダラけていた。現在(いま)は、左半身を下にして横向きにダラけている状態。

さっきまでのオンちゃんとの通話は飽きるぐらい振り返ったはずだった。

だけど、加賀先輩のコトについて触れたコトがやっぱり脳味噌に張り付いていたみたいで、横向き寝で何もしていないわたしに彼への意識がひとりでに芽生えてきた。

横向き寝のまま眼を閉じたら、高校生時代の加賀先輩の顔が浮かび上がってくる。

わたしは2学年下だったから、高校3年生の時の加賀先輩しか知らない。

だけど、あの1年間で、わたしは彼のコトをとってもリスペクトするようになった。

キッカケを説明すると長くなる。

「文字数の都合もあるしね……」

そんなどうしようもないヒトリゴトを呟いた後で、わたしは寝転ぶのをやめて、ベッドを離れて勉強机に再び歩み寄り、引き出しを開ける。

2つの写真が入っている。

1つは、卒業間際の加賀先輩の写真。もう1つは、この前の冬休みに親友の『クミコ』と撮ったツーショット写真。

クミコはわたしと同じ中学で、中学ではわたしと同じくバレーボール部所属だった。同じ高校に入学した後、クミコはバレーボールを続けたけど、わたしはバレーボールを続けなかった。

「……長い間、『亀裂(きれつ)』が、入ってたんだけど」

立ったまま、クミコとのツーショット写真に眼を凝らし、呟く。

それから、加賀先輩の写真の方に眼を転じる。

「加賀先輩のお陰で……友情を、修復できた」

また呟いちゃった。

「完全に修復できたのは……最近になって、やっと、だったけど」

呟きを抑え切れない。

抑え切れない結果として、

「ありがとうございます、加賀先輩……」

という感謝が自然と口から漏れてくる。

胸の奥から暖かいキモチが膨らんでくる。キモチが膨らんだ結果、上半身に暖かみが広がって、それから、カラダの全部に暖かみが行き渡っていく。

気付けばわたしは、上半身の中心で、2つの写真をギュッ、と抱き締めていた。

 

 

 

 

 




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