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【愛の◯◯】声に出してはいけなかったコトバを

 

FMラジオを聴いていたら、パーソナリティがクリスマスの話をし始めた。

クリスマスの話題が随分長引く。いくら来週がクリスマスだからって、話が長くなり過ぎじゃないの、FMなんだからもっと曲を流してよ……と思ってしまう。

それに、クリスマスの話題はわたしにとって少し耳障りなのだ。それは、現在彼氏が居ないから。

『その点、川又ほのかちゃんは良いよね』

胸の中でそう呟きながら、わたしの部屋の出入り口ドア方面を見る。

『利比古くんとクリスマスデートできるんだもの』

さらに胸の中で呟いてしまう。

部屋の出入り口ドア方面を見たのは、この部屋を出てすぐそばの部屋で現在利比古くんが過ごしているはずだから。

自分の部屋に居るとしたら、利比古くんは何をやってるんだろう。

もしかすると、ほのかちゃんとクリスマスデートの打ち合わせでもしてるのかな。

「……うらやましい」

気付いたら声に出ていた。

慌てる。

だって、どちらかといえば声に出してはいけないコトバが、声になって出ちゃったんだもの。

背筋がサーッと冷え込み、FMラジオが全く耳に入ってこなくなった。

 

× × ×

 

利比古くんも、うらやましい。ほのかちゃんも、うらやましい。

だけど、比較をするならば、ほのかちゃんの方が、より一層うらやましい。

大親友の女の子へのうらやましさを自覚した。そのことが、わたしの胸を締め付ける。

罪の意識に苛(さいな)まれる。

それと同時に、利比古くんのそばに寄り添っているほのかちゃんのイメージに襲われる。

例えば今、ほのかちゃんが電話をかけてきたりしたら。

わたしにはマトモに会話できる自信がない。

たぶん、ヒリついた声で応答してしまう。そうなったら、ほのかちゃんとギクシャクしてしまう。

彼氏持ちの大親友に羨(うらや)みの感情を抱くだなんて。

築き上げた友情の地盤を脆くしてしまうようなものだ。

イヤだ。友情を崩したくなんかない。

でも、コントロールできる自信がない。

なにを?

……様々(さまざま)に、揺れ動く、感情を。

 

× × ×

 

最悪のタイミングで利比古くんがノックしてきた。

『今、大丈夫ですか? あすかさん』

ドアを開けてあげないまま、ドアの間近に立っている。胃がチクチクしている。

『あすかさんが作ってる雑誌の『PADDLE(パドル)』を見せてほしいんですけど』

俯きながら、情けなくも、

「見て、どうするの?」

と返事してしまう。

『え、見せたくなかったり?』

後悔がやって来た。

見せたくないワケもないんだから、「見て、どうするの?」だなんて拒絶する必要もなかったのに。

素直になれない。

素直になるべき。

でも、素直になって、このドアを開けたら、入ってくる利比古くんを見た途端に、ココロがザワザワと蠢(うごめ)く……。

じゃあ、結局、拒んでしまうのか。

わたしの「エゴ」を優先させるのなら、彼をこの部屋に入れてあげない。

彼の願望を優先させるのなら、彼をスンナリと部屋に迎え入れてあげる。

どっちが良いの?

以前ならば、こんなコトで迷ったりしなかったのに。

胸の奥で幾つもの感情の糸が絡まっている。

『えーっと、あすかさん……? 何か言ってくれると、嬉しいんですけど。ダメなら『ダメ』って言ってください。急を要する用事とかではないんですし……』

追い込まれた。

こんな状況にまでなってしまうと、もう何にも考えられない。

考えない代わりに……手を伸ばしていた。

どこに?

ドアノブに。

 

 

 

 




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