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泉佐野市の映画館

(写真)泉佐野駅。

2026年(令和8年)2月、大阪府泉佐野市を訪れました。

戦後の映画黄金期の泉佐野市には映画館「春日座」と「阪南劇場」(泉佐野東映)と「国見館」がありました。平成初期の泉佐野市には「シネマスペース泉佐野」があり、映画館が入っていたビルは現存しています。「熊取町の映画館」に続きます。

 

1. 泉佐野市立中央図書館

1.1 図書館の歴史とネーミングライツ

泉佐野市は大阪府泉南地域にある人口約10万人の都市であり、沖合に関西国際空港があることで知られています。1994年(平成6年)の関空開港後に大規模な都市整備を行った結果、多額の地方債を抱えて深刻な財政危機に陥り、2009年(平成21年)から2014年(平成26年)には財政健全化団体への転落を余儀なくされています。

1996年(平成8年)には泉佐野市立生涯学習センターが竣工し、施設内に泉佐野市立中央図書館が開館しました。2000年代の財政難の結果として、2012年(平成24年)には様々な公共施設のネーミングライツを募集し、販売物の中に「市名」まで含まれていることが話題となりました。2014年(平成26年)には図書館の命名権名称がレイクアルスタープラザ・カワサキ中央図書館となっています。

大阪府は公共図書館にネーミングライツを導入している自治体が多く、和泉市のTRC和泉図書館、河内長野市の河内長野市立図書館 Supported by TONEなどがあります。大阪市は中央館の命名権名称が辰巳商会中央図書館であり、その他にもM&A総合研究所〇〇図書館、西淀川こうのとり図書館、ケア・キューブ生野ライブラリー、FPO北図書館など、ネーミングライツを積極的に導入しています。

(写真)泉佐野市立中央図書館。

 

1.2 郷土資料『百人の佐野物語』

郷土資料コーナーでは『百人の佐野物語』というハードカバー製本の雑誌が目に留まりました。これは郷土史家の北山理が地元住民からの聞き書きで制作した冊子であり、泉佐野の歴史と今を知る会の刊行物の一つです。商店街、娯楽施設、個別の集落など、一般的には言及されにくい郷土の話題について年配者の証言を通じて詳細に記録している点で大きな価値があります。『百人の佐野物語』の中には映画館に関する言及も多く、泉佐野市の映画館文化を知るうえでとても役に立つ郷土資料でした。

(写真)郷土資料。『百人の佐野物語』など。

 

2. 泉佐野市の映画館

2.1 国見館(1926年-1963年頃)

所在地 : 大阪府泉佐野市若宮町1233(1963年)
開館年 : 1926年、1938年10月
閉館年 : 1963年頃
跡地は南海泉佐野駅北口70mにあるクラブ「キャッツ」。

1924年(大正13年)に開場した芝居小屋の春日座に続いて、1926年(大正15年)には家路国太郎によって活動常設館の国見館が開館しました。この時代の芝居小屋や映画館は有力者が連名で発起人に名を連ねる株式組織で建てられることが多いですが、春日座や国見館の開館を記した文献には株式組織という記述はなく、特定の個人名に焦点が当てられています。国見館があったのは泉佐野駅前の新地通りであり、1897年(明治30年)の泉佐野駅開業後に発展した地域です。家路国太郎は昭和初期頃に死去し、野出墓地の墓石には「興行人 家路国太郎」と刻まれているそうです。

なお、1921年(大正10年)には佐野町初の活動常設館として電気館が開館しています。1930年の映画館名簿において、府下で2館以上の映画館を有する自治体は、大阪市、堺市、岸和田市、三島郡吹田町、豊能郡池田町、中河内郡小阪町、泉南郡貝塚町と佐野町の計8市町のみです。電気館もやはり新地通りにありました。

(写真)佐野町に電気館と国見館が掲載された『日本映画事業総覧 昭和5年版』国際映画通信社、1930年。

(写真)1958年頃の国見館の広告。『泉州佐野・熊取 懐かしの劇場風景』北山理、2007年。

 

戦後の経営者は神宮司徳市であり、神宮司は国見館のほかに阪南劇場も経営していました。1960年代前半には国見館が閉館し、建物が解体されてパチンコ店の花柳会館が建ちました。現在の国見館跡地にはラウンジのキャッツが建っていますが、映画館跡地が風俗営業法の1号営業店(接待営業店)となっている例は珍しいと思われます。

(写真)国見館の跡地にあるラウンジ「キャッツ」。

(写真)国見館の跡地にあるラウンジ「キャッツ」。

(写真)国見館が面していた新地通り。

 

2.2 阪南劇場(泉佐野東映、1956年頃-1978年頃)

所在地 : 大阪府泉佐野市大西町1601(1978年)
開館年 : 1956年頃
閉館年 : 1978年頃
跡地は「谷口病院」。

1956年頃には国見館の経営者である神宮司徳市によって阪南劇場(佐野東映)が開館しました。泉佐野市初の鉄筋コンクリート造かつ冷暖房完備の映画館であり、東映作品の上映館でした。神宮司は1960年代中頃に国見館を閉館させますが、その後も長らく阪南劇場は営業し続けました。

(写真)1958年頃の佐野東映の広告。『泉州佐野・熊取 懐かしの劇場風景』北山理、2007年。

(写真)泉佐野市に3館が掲載されている『映画便覧 1963』時事通信社、1963年。

 

阪南劇場があったのは新地通りの西側であり、跡地には谷口病院が建っています。

(写真)阪南劇場の跡地にある谷口病院。

 

2.3 春日座(1924年-1981年頃)

所在地 : 大阪府泉佐野市大宮町14-8(1983年)
開館年 : 1924年
閉館年 : 1983年頃
跡地は「大西鮮魚店」東側にある6軒分の分譲住宅地。煉瓦塀の一部が現存。

泉佐野には醤油・味噌醸造を生業とする旧家の熊取谷家があり、1924年(大正13年)には熊取谷ヒサによって春日座が建てられました。夫の熊取谷清太郎は戦時中に岡田村長を務めた人物です。実質的には西野竹三郎が経営を担い、1947年(昭和22年)に映画館に転向したことで、戦後には映画館名簿にも掲載されています。日活と松竹の上映館だった時期が長く、晩年は日活ロマンポルノを上映していたようです。

映画館名簿では1983年(昭和58年)版まで春日座の名前が見られますが、1981年(昭和56年)頃には経営者の西野英一から熊取谷家に敷地が返還されたようです。1986年(昭和61年)には跡地の一部に福徳相互銀行泉佐野支店が建ちました。

(写真)昭和初期の春日座の平面図。『佐野町場歴史散歩』 泉州佐野にぎわい本舗、2012年。

 

全蓋式アーケードの北端近くにある森金商店が春日座跡地の目印であり、森金商店の正面にある6軒分の戸建て住宅地の場所に劇場がありました。森金商店や春日座跡地が面する部分にもカラー舗装がなされていますが、かつてはこの部分も全蓋式アーケードで覆われていたようです。

『佐野町場歴史散歩』(泉州佐野にぎわい本舗、2012年)には、春日座跡地には煉瓦塀が残されているという記述がありました。現地ではこのことに気づかなかったのですが、Googleストリートビューで春日座跡地の東端部を見てみると、確かに煉瓦塀と思われる塀が確認できます。

(写真)春日座の跡地(右側)と孝子越街道。

(写真)春日座の煉瓦塀。Googleストリートビュー。

 

孝子越街道沿いには春日神社があり、この神社が春日座という名称の由来だと思われます。春日座跡地の近くには上善寺があり、泉州大仏と呼ばれる阿弥陀如来像の存在で知られています。

(写真)春日神社。

(写真)上善寺の泉州大仏。

 

2.4 シネマスペース泉佐野(1988年頃-1995年頃)

所在地 : 大阪府泉佐野市上野3-7-11(1995年)
開館年 : 1988年頃
閉館年 : 1995年頃
映画館があったエースビルは「串カツえべっさん泉佐野駅前店」が入るビルとして現存。

泉佐野市から映画館がなくなって約7年後の1988年(昭和63年)頃、泉佐野駅の山側の商業ビル内にシネマスペース泉佐野が開館しました。映画館名簿によると経営会社は泉州映画センターであり、50席の小規模な映画館だったようです。中江克己 著『「人が集まる」法則』には、昼間は映画館として営業し、夜間は(巨大なホールを用いた)カラオケ店に変貌するという記述があり、他に類を見ない個性的な営業形態だったようです。

1993年(平成5年)4月には日本で2番目の本格的シネマコンプレックスとして、岸和田市にワーナー・マイカル・シネマズ東岸和田が開業しています。映画館名簿を見ると、1995年(平成7年)版を最後にシネマスペース泉佐野の名前が消えており、再び泉佐野市から映画館が消滅しました。

(写真)シネマスペース泉佐野があったエースビル。

(写真)エースビルの平面図。

(写真)泉佐野駅東口の駅上商店街。

 

泉佐野市の映画館について調べたことは「大阪府の映画館 - 消えた映画館の記憶」に掲載しており、その所在地については「消えた映画館の記憶地図(大阪府版)」にマッピングしています。

hekikaicinema.memo.wiki

www.google.com




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