
(写真)柄沢神社梵鐘。
2025年(令和7年)11月には神奈川県藤沢市を訪れ、様々な神社や寺院の梵鐘を巡りました。
1. 神社の梵鐘
藤沢市では神社にも梵鐘があることに驚きました。これは藤沢市に限ったことではなく、神奈川県や関東地方の一定数の神社に戦後鋳造の梵鐘があるようで、廃仏毀釈が穏やかだったことと関係してるという意見があるようです。〈梵鐘は寺院にあるもの〉という固定観念が覆されました。
愛知県にも神社の梵鐘は数例がみられますが、津島神社や深川神社などの大規模な神社にある、中世以前の文化財級の梵鐘に限られます。ウェブ検索した限りでは、愛知県において戦後に鋳造された神社の梵鐘は1例も確認できません。
1.1 上高倉諏訪神社(藤沢市高倉)
境川の河岸にある藤沢市高倉の上高倉諏訪神社の梵鐘。1975年(昭和50年)10月に京都市の岩澤徹誠(会社名は岩澤の梵鐘)によって鋳造されました。手書きの字体で梵鐘の由来記が刻字されています。
諏訪神社の由来
大東亜戦争に際会し昭和十九年国家に供出し爾来終戦後町内並に有志崇敬者敬神の念厚く子孫繁栄を祈願し再建を企画茲に完成奉納するものなり
昭和五十年十二月吉日


(写真)上高倉諏訪神社梵鐘。


(写真)上高倉諏訪神社の社殿と鐘楼。
1.2 飯田神社(横浜市泉区上飯田町)
藤沢市と横浜市の境界に近い横浜市泉区上飯田町の飯田神社にも梵鐘があります。1971年(昭和46年)9月に京都市の岩澤徹誠によって鋳造されました。

(写真)飯田神社梵鐘。

(写真)飯田神社梵鐘。


(写真)飯田神社の社殿と鐘楼。
1.3 柄沢神社(藤沢市柄沢1丁目)
藤沢駅の北東1.5kmにある藤沢市柄沢1丁目の柄沢神社にも梵鐘があります。1956年(昭和31年)9月に茨城県真壁郡真壁町の小田部庄右衛門(会社名は小田部鋳造)によって鋳造されました。

(写真)柄沢神社梵鐘。


(写真)柄沢神社の境内と鐘楼。
1.4 羽鳥御霊神社(藤沢市羽鳥3丁目)
羽鳥3丁目の羽鳥御霊神社には藤沢市指定文化財に指定された梵鐘があります。室町時代の至徳3年(1386年)に鋳造され、もとは下総国(現・千葉県香取市)の香取神宮にありましたが、神仏分離が行われた明治維新後の1872年(明治5年)に羽鳥村民が購入したとのことです。

(写真)羽鳥御霊神社梵鐘。

(写真)羽鳥御霊神社。
2. 撞くことができる梵鐘
「勝手に撞いてよい」というニュアンスの張り紙がしてある梵鐘がいくつか見られるのにも驚きました。このような張り紙を愛知県内では見たことがありません。大みそかに除夜の鐘として鐘撞き体験ができる寺院は一定数あると思いますが、〈梵鐘は寺が撞くもの〉だと思っていました。
2.1 柄沢神社(藤沢市柄沢1丁目)
柄沢神社の鐘楼にある貼り紙には、「鐘を撞く時間は午前8時より午後5時まで ご協力をお願いします」と書いてあります。

(写真)柄沢神社梵鐘。
2.2 普門寺(藤沢市本鵠沼5丁目)
藤沢市本鵠沼5丁目の普門寺の鐘楼にある貼り紙には、「しずかに鐘をついてください」と書かれています。

(写真)普門寺梵鐘。

(写真)普門寺の本堂。
3. 小田部庄右衛門の梵鐘
小田部庄右衛門という銘のある梵鐘を初めて見ました。愛知県を含む西日本では一例も見たことがありません。小田部庄右衛門という名跡が当主を務める小田部鋳造は関東(東日本)最大の梵鐘メーカーであり、現在の当主は37代目という名家です。茨城県桜川市真壁にある小田部鋳造の建物群は登録有形文化財に登録されています。
3.1 妙善寺(藤沢市藤沢1丁目)

(写真)妙善寺梵鐘。

(写真)妙善寺の本堂と鐘楼。
3.2 柄沢神社(藤沢市柄沢1丁目)

(写真)柄沢神社梵鐘。
4. 老子次右衛門の製品
富山県高岡市の老子次右衛門(会社名は老子製作所)は全国有数の梵鐘メーカーであり、愛知県を含む全国各地に老子次右衛門が鋳造した梵鐘があります。なお、2021年(令和3年)時点で老子製作所は梵鐘の全国シェア7割を占めていたとされますが、同年には富山地方裁判所に民事再生法の適用を申請して経営破綻しています。同年時点で、全国には両手で数えられるだけしか梵鐘メーカーが存在しないとされています。
4.1 万福寺(藤沢市鵠沼神明3丁目)
藤沢市鵠沼神明3丁目の万福寺には、1983年(昭和58年)10月に老子製作所が鋳造した梵鐘、1985年(昭和60年)に老子製作所が鋳造した天水桶、1986年(昭和61年)に老子製作所が鋳造した手水鉢があります。

(写真)万福寺梵鐘。


(写真)万福寺の手水鉢。


(写真)万福寺の天水桶。