
(写真)建中寺本堂。重要文化財。
2025年11月1日(土)、文化財建造物の特別公開イベント「あいたて博」で名古屋市東区の建中寺、名古屋市緑区の春江院を訪れました。
1. 建中寺を訪れる
建中寺のガイドは近世建築史を専門とする杉野丞先生(愛知工業大学名誉教授)。建中寺は名古屋市東区にある浄土宗の寺院であり、尾張徳川家の菩提寺です。
1.1 本堂と御霊屋(重要文化財)
尾張藩2代藩主の徳川光友が創建した時期の建物として、慶安5年(1652年)竣工の三門と総門が残っているほか、本堂などは大曽根の大火後の天明7年(1787年)に再建されたものです。建中寺は戦災での焼失を免れており、本堂と御霊屋は名古屋市指定文化財に指定されていましたが、この2025年(令和7年)8月には重要文化財に指定されました。

(写真)建中寺御霊屋。重要文化財。
本堂の裏手にある御霊屋は初代藩主徳川義直を祀る建物です。唐門、拝殿、本殿及渡廊からなり、拝殿の格天井は各地の東照宮のように鮮やかな彩色がなされていました。住職によると尾張家の御霊屋には波の絵が描かれていることが多く、名古屋の地名の由来の一つとされる「浪越」に関係があるのではないかという話がありました。

(写真)建中寺御霊屋。拝殿の天井。
浄土宗の総本山は京都の知恩院であり、他に増上寺(東京都港区)、金戒光明寺(京都市)、知恩寺(京都市)、清浄華院(京都市)、善導寺(久留米市)、光明寺(鎌倉市)、善光寺大本願(長野市)という7寺の大本山があります。建中寺の本堂の間口は27mあり、総本山・大本山と比較した際には知恩院と知恩寺に次ぐ規模とのことでした。

(写真)建中寺御霊屋。唐門。
1.2 徳興殿(登録有形文化財)
建中寺の登録有形文化財としては徳興殿があります。1896年(明治29年)に名古屋商業会議所本館として建てられ、1934年(昭和9年)に建中寺に移築されました。名古屋市街地にある最大級の木造建築とのことで、2階にある125畳もの大広間は希少性が高いようです。

(写真)徳興殿。2階の大広間。登録有形文化財。

(写真)徳興殿。階段。
なお、徳興殿は書院や庫裏の奥にあり、境内からは屋根の一部しか見えません。今回のような特別公開イベントなどの際にしか見学できませんが、結婚式などに用いられることはあるようです。徳興殿に入れたのは貴重な体験でした。
なお、愛知登文会が行っているワークショップ「ウィキペディア愛知登文会」の一環で、2024年(令和6年)9月にはWikipedia記事「建中寺徳興殿」を作成しています。

(写真)建中寺境内から見た徳興殿。

(写真)名古屋商業会議所時代の写真。
2. 春江院を訪れる
春江院は名古屋市緑区大高にある曹洞宗の寺院。ガイドは文化財建造物の修理工事を手掛けている魚津社寺工務店の小山興誓さんです。
1. 本堂などの建物(登録有形文化財)
本堂はやや珍しい北向きですが、これは(名古屋城ではなく)大高城を向いているからだそう。私は2025年(令和7年)6月以後には刈谷市周辺の寺院を400~500寺巡って梵鐘の調査を行っていますが、真宗大谷派が多い西三河南部と比較すると、知多半島は曹洞宗の寺院の多さが目につき、境川の両岸で宗派の傾向の違いが顕著です。小山さんによると、知多に曹洞宗が多いのは水野家菩提寺の乾坤院が曹洞宗だからではないかとのことでした。

(写真)春江院本堂。登録有形文化財。

(写真)春江院本堂を見学する参加者。
春江院では本堂、玄関及び書院、不老閣、茶室、庫裏、山門、鐘楼の7件が登録有形文化財です。書院、茶室、不老閣はいずれも境内からの撮影が不可能な場所にあるため、Wikipedia記事「愛知県の登録有形文化財一覧」にはこれまで写真が掲載されていませんでした。この日に撮影した写真は既に一覧記事に追加しています。

(写真)春江院書院。登録有形文化財。


(写真)春江院茶室と不老閣。いずれも登録有形文化財。
1.2 鐘楼(登録有形文化財)と旧梵鐘
鐘楼は慶應元年(1865年)竣工であり、春江院の建物としては文政13年(1830年)竣工の本堂や山門の次に建てられた建物です。小山さんの開設には袴腰の鐘楼は曹洞宗に多く、真宗には少ないという説明がありました。袴腰鐘楼の比率には地域性があるのではないかと推測していましたが、宗派による差異とのことで勉強になりました。
なお、本堂の縁側には旧梵鐘が置かれており、本堂側の目視できない部分に鋳造者名が刻まれています。1951年(昭和26年)に京都の若林仏具製作所が鋳造した梵鐘であり、愛知県内では比較的珍しい鋳造者です。


(左)鐘楼。登録有形文化財。(右)本堂軒先に置かれた旧梵鐘。