
(写真)石川町立図書館が入る文教福祉複合施設 モトガッコ。
2025年(令和7年)4月、福島県石川郡石川町を訪れました。かつて石川町には映画館「石川座」と「さくら館」(石川映画劇場)がありました。「福島県石川町を訪れる」からの続きです。
1. 石川町立図書館
1.1 図書館の施設
2015年(平成27年)4月には6校が統合されて(新)石川小学校が開校すると、(旧)石川小学校の校舎を大規模改修して複合施設とすることが計画されました。西村浩のワークヴィジョンズと梓設計によってリノベーションされ、2019年(平成31年)4月に文教福祉複合施設モトガッコが開館し、内部に石川町立図書館が設置されています。既存の公共施設をリノベして再活用したり、単独施設ではなく様々な施設の複合施設とするのは小都市や町村部における社会の趨勢であり、図書館利用者にとってもよいことだと思われます。
2023年(令和5年)時点の福島県における図書館設置率は57.6%であり、全国平均の77.4%を大きく下回っていました。石川町立図書館設置条例の制定は2018年(平成30年)12月のことであり、モトガッコの開館以前の石川町には図書室しか存在しなかったようです。なお、モトガッコは2021年(令和3年)に福島県建築文化賞やグッドデザイン賞などを受賞しています。

(写真)開架室。

(写真)書架。
東西方向に140mと長い校舎の1階のうち、玄関を入って左側半分が図書室となっています。フロアマップを見ると教室6個分が図書室に転用されているように見えます。図書館内には3か所の凸部があり、それぞれ学習室、よみきかせ室(いわゆる「おはなし室」)、地域資料学習室(いわゆる「郷土資料室」)となっています。

(写真)モトガッコのフロアマップ。

(写真)スリッパで入る図書館。
1.2 地域資料学習室
地域資料学習室における特色ある見出しとしては、鉱物の本コーナー東日本大震災関連コーナーがありました。

(写真)地域資料学習室。

(写真)鉱物の本コーナー。

(写真)東日本大震災関連コーナー。
2. 石川町の映画館
各年版の映画館名簿には石川町の映画館として石川座とさくら館(石川映画劇場)が掲載されているのですが、ウェブ検索では全く情報が見つかりません。

(写真)石川座と石川映画劇場が掲載されている『映画便覧 1965年版』時事通信社、1965年。
2.1 さくら館(1956年8月-1965年頃)
所在地 : 福島県石川郡石川町高田(1965年)
開館年 : 1956年8月
閉館年 : 1965年頃
1955年の映画館名簿には掲載されていない。1958年の映画館名簿では「さくら座」。1960年の映画館名簿では「さくら館」。1963年・1965年の映画館名簿では「石川映画劇場」。1966年の映画館名簿には掲載されていない。跡地は「長泉寺」南東90mの敷地。
鈴木重謙屋敷でスタッフの女性に映画館について聞いてみると、石川座のこともさくら館のこともご存じでした。北須川と今出川の合流点近くに信号がありますが、この信号から県立高校や合同庁舎に向かう道に入ると、すぐ左側にさくら館があったとのこと。映画館名簿にはさくら座/さくら館/石川映画劇場という3通りの名称で記載されていますが、この女性はさくら館という名称で記憶していました。
江戸時代から石川町は「桜谷」と呼ばれていたそうで、現在も北須川と今出川の河岸には計2000本にも及ぶ桜並木がありますが、この桜並木は戦後の昭和20年代に町職員有志が植えたものだそうです。この女性の一押しは福島県天然記念物でもある一本桜の「高田桜」だそうですが、標高280m程度にある石川町の桜の開花時期は平地よりもだいぶ遅いようです。

(写真)さくら館。『ビジュアル 石川町の歴史』石川町、2000年。
なお、跡地には近年まで建設業の城野組の建物(城野会館?)が建っていましたが、現在は駐車場となっています。敷地奥部には民家と思われる建物があります。

(写真)さくら館の跡地にある駐車場。

(写真)1970年代中頃の航空写真におけるさくら館の建物。地理院地図
2.2 石川座(1928年11月-1965年頃)
所在地 : 福島県石川郡石川町下泉(1965年)
開館年 : 1928年11月
閉館年 : 1965年頃
『全国映画館総覧 1955』によると1928年11月開館。1950年・1953年・1955年・1958年・1960年・1963年・1965年の映画館名簿では「石川座」。1966年の映画館名簿には掲載されていない。跡地は「華蔵寺」北西50mの駐車場。
2000年(平成12年)に石川町が刊行した『ビジュアル 石川町の歴史 』(石川町史別巻)にはさくら館の写真が、2005年(平成17年)に石川町が刊行した『石川町史 第6巻 各論編1 文化・旧町村史』には石川座の写真が掲載されているのですが、これらはデジタル化されておらず、また福島県立図書館での調査時にも閲覧していなかったため、石川町立図書館で閲覧して初めて写真の存在に気づきました。
時事通信社の『全国映画館総覧 1955』によると石川座の設立は1928年(昭和3年)11月とのこと。石川座という名称からして伝統的な芝居小屋建築かと思っていましたが、『石川町史 第6巻 各論編1 文化・旧町村史』の写真を見ると洋風建築です。正面は左右対称で両側が手前にせり出しており、奥には塔屋も見えます。入口上部には「座川石」という文字が読め、その下部などには複数個所に三角形の意匠(鋸歯紋)があります。

(写真)開館直後の1933年の石川座。『石川町史 第6巻 各論編1 文化・旧町村史』石川町、2005年。

(写真)石川座に言及している『石川町史第7巻 下 各論編2 民俗』石川町、2011年。
鈴木重謙屋敷の女性に石川座について聞くと、クリスタルロードまで出て跡地を教えてくれました。恵季菓子みはるやという洋菓子店の南側には1軒分の更地があり、その奥が駐車場となっています。石川座はこの駐車場の場所にあったとのことです。なお、みはるやにいた年配の女性も石川座のことを覚えておられました。

(写真)石川座の跡地にある駐車場。右は恵季菓子みはるや。

(地図)石川座跡地。地理院地図
1925年(大正14年)に松井天山が描いた鳥瞰図「福島県石川町真景」にも「三春屋」が描かれていますが、数年後に開館するはずの石川座は描かれていません。

(地図)松井天山「福島県石川町真景」1925年。
1960年代の航空写真を見ると、恵季菓子みはるやの数軒北側、現在のセブンイレブン石川南町店の場所に巨大な建物が写っています。石川町の訪問前にはこの建物が石川座ではないかと推測していたのですが、もともとセブンイレブンの場所にあったのは警察署とのことです。
福島県石川町の映画館について調べたことは「福島県の映画館 - 消えた映画館の記憶」に掲載しており、跡地については「消えた映画館の記憶地図(福島県版)」にマッピングしています。