
(写真)「港町キネマ通り」のデジタルブック化の告知。
映画館専門サイト「港町キネマ通り」が、サイト設立25周年を記念してデジタルブック化を計画しており、2025年(令和7年)1月29日から45日間に渡ってCAMPFIREにおいてクラウドファンディングを実施しています。
1. 「消えた映画館の記憶」と「港町キネマ通り」
1.1 「港町キネマ通り」に触発されて
「港町キネマ通り」は大屋尚浩さんが日本全国の映画館を訪れ、経営者やスタッフにインタビューした結果などをウェブページとしてまとめたサイトです。430館超というすさまじい数の映画館が取材の対象となっており、取材後に閉館した映画館も多数含まれています。館内の写真などが掲載されている点も価値が高いです。2017年(平成29年)には辰巳出版から大家さんの著書『日本懐かし映画館大全』が刊行されています。
私が「消えた映画館の記憶」の作成を始めたのは2016年(平成28年)のことですが、その動機は「港町キネマ通り」に触発された部分が大きいのです。今も昔も【映画館文化】は軽んじられているように思われ、映画作品の批評は映画本や映画雑誌やSNSに溢れていても、映画館に関する言及は映画作品への言及の数パーセントにも満たないと思われます。その風潮に一石を投じたくて「消えた映画館の記憶」の作成を開始しました。「港町キネマ通り」は営業中の映画館を対象としていますが、「消えた映画館の記憶」は閉館した映画館の情報が主体であり、すみ分けができているともいえます。
1.2 25年間の映画館環境の変化
『映画館名簿 2000年版』で名古屋市を見てみると、既に中川コロナシネマワールド、ヴァージンシネマズ名古屋ベイシティという2サイトのシネコンがありました。とはいえ、名古屋市の全63館のうちシネコンは22館のみであり、まだ3分の2近くが既存興行館/ミニシアター/名画座/成人映画館だった時代です。
名古屋市においては都心の名古屋東映劇場や名鉄東宝、映画館ビルの名宝会館やヘラルドシネプラザ、百貨店内にある三越映画劇場、成人映画館の円頓寺劇場と多様な映画館があり、愛知県を見渡すとショッピングセンター内の映画館やドライブインシアターなどもありました。
その後の25年間で既存興行館が淘汰され、日本の映画館環境はシネコンが9割を占めるような状況となっています。動画配信サービスで映画を鑑賞することが当たり前となり、シネコンでさえも映画鑑賞方法の主流であり続けるかどうかは不明確であり、遠くない未来には映画館という施設の存在を知らない世代が現れるかもしれません。
「港町キネマ通り」はSNSでバズるようなサイトではありませんが、映画館環境の変化によってじわじわとその価値を高めているサイトであると思われます。デジタルブック化(PDFデータ化)によって「港町キネマ通り」の内容が後世まで残る可能性が高まりますし、これまでサイトを知らなかった層に届くのではないでしょうか。クラウドファンディングの成功にも期待しています。