
(写真)トヨタ創業期試作工場の展示室。
2024年(令和6年)12月、愛知県刈谷市の愛知製鋼刈谷工場内にある見学施設「トヨタ創業期試作工場」を訪れました。なお、見学後にはWikipedia記事「トヨタ創業期試作工場 - Wikipedia 」を作成しています。
1. 建物の歴史と見学の流れ
1.1 建物の歴史
碧海郡刈谷町(現・刈谷市)に豊田自動織機製作所が設立されたのは1926年(大正15年)のこと。
1933年(昭和8年)9月には豊田喜一郎が主導して製作所内に自動車部が設置され、1934年(昭和9年)3月には自動車部の試作工場が建てられました。1934年(昭和9年)9月にはこの試作工場でトヨタ・A型エンジンが完成し、1935年(昭和10年)5月にはこの試作工場でトヨダ・A1型試作乗用車が完成。1936年(昭和11年)4月には刈谷駅北側の工場(現・トヨタ車体刈谷工場)でA1型の量産モデルであるトヨダ・AA型乗用車の生産が開始されています。
その後、この建物は豊田自動織機製作所の製鋼部門が独立した愛知製鋼の建物となりました。今日までに3億台を販売したトヨタグループにとっての0台目が作られたのがこの場所であり、2018年(平成30年)5月10日には「愛知製鋼刈谷工場旧試作工場東棟・西棟」として登録有形文化財に登録されています。同年7月18日には一般公開が開始され、平日のみ予約制で見学者を受け入れています。
1.2 見学の流れ
トヨタ創業期試作工場のウェブサイトに見学予約フォームがあり、3営業日後以降の見学を申し込むことができます。見学回は9時30分~、11時~、14時~、15時30分/16時~の1日4回であり、所要時間は約40分です。
10分前に愛知製鋼正門前に集合します。守衛さんがいるので試作工場の見学者である旨を伝えましょう。愛知製鋼の敷地内はガイドの引率で試作工場に向かいますが、試作工場以外の敷地内の撮影は不可です。
展示室がある東棟での説明が中心です。立入禁止の西棟も入口までは見学でき、見学終了後には記念品として今治産地のハンカチをもらえます。今治産地では豊田自動織機製の織機が活躍しているそうです。

(写真)記念品のハンカチ。
2. トヨタ創業期試作工場(刈谷市)
2.1 東棟の工場内
最初の撮影ポイントは東棟の外観です。1934年の竣工時には既に挙母町(現・豊田市)への移転が検討されており、豊田喜一郎は「試作工場はさしあたりバラックでよい」と考えていたとのこと。当時の平均的な工場の建物だったようで、建築面で際立った特徴は内容に見えます。

(写真)東棟の外観。

(写真)展示室の入口。
東棟の建築面積は934m2、西棟の建築面積は758m。1934年(昭和9年)の竣工当初は東棟と西棟が同一の建物であり、解体された部分を含めると現在の東棟の約4倍の面積だったそうです。
屋根は三角屋根を基調としていますが、わずかにのこぎり屋根の要素があります。北側の斜面の一部に開口部として波板が設置されていますが、のこぎり屋根工場と比べて傾斜が緩く、太陽光が直に工場内に入ってしまっているのが気になります。開口部の波板は倉庫への転用後の改編でしょうか。

(写真)東棟の工場内。
屋根のトラス構造部分は竣工時からの残存部分です。床面にはトロッコ線路の遺構も見えます。東棟の奥部南側、東棟全体の10分の1程度の部分は、2004年(平成16年)にトヨタ産業技術記念館に移築されています(後述)。

(写真)トラス構造の屋根。

(写真)残存部分の説明。

(写真)トロッコ線路の遺構。
2.2 展示室
見学者が入れるのは工場内の展示室部分のみ。展示室部分は鉄筋コンクリート造で耐震性を考慮して作られており、愛知製鋼の敷地内でも特に地震に強い部分だそうです。

(写真)展示室。

(写真)展示室。

(写真)往時の豊田自動織機や愛知製鋼の構内図。刈谷駅からの引き込み線や転車台があった時代。

(写真)展示室内に残る往時の柱や梁。
2.3 西棟の工場内
東棟の展示室から西棟の入口前に移動して説明を受けます。西棟は耐震補強などがなされていないため、見学者が立ち入ることはできません。柱や梁がまだら色に見えますが、もとは白色に塗られていたそうです。

(写真)西棟の外観。

(写真)西棟の工場内。立入禁止。
3. トヨタ産業技術記念館(名古屋市)
3.1 試作工場東棟の部分移築
1994年(平成6年)に豊田自動織機栄生工場跡地に開館したトヨタテクノミュージアムは、2005年(平成17年)に自動車館を増築してトヨタ産業技術記念館に改称しました。増築時には愛知製鋼刈谷工場敷地内にあった試作工場が部分的に移築されています。現在の東棟の奥部です。


(写真)部分移築の説明。

(写真)A1型乗用車の外板用ゲージ。

(写真)部分移築された試作工場の外観。
3.2 材料試験室の部分移築
愛知製鋼刈谷工場にある試作工場東棟の南側、2013年(平成25年)に新築された事務所棟の場所には、1934年(昭和9年)時点で材料試験室なる建物がありました。2005年(平成17年)には材料試験室の一部もトヨタ産業技術記念館に移築されています。


(写真)部分移築の説明。
移築の痕跡が最も分かりやすいのは床板です。鑑賞者が通る通路部分の床板は新しいものですが、展示品が置かれている部分の床板は移築だそうです。

(写真)床板の残存部分(展示部分)と新築部分(手前や右側)。

(写真)部分移築された材料試験室の外観。
3.3 トヨタ産業技術記念館の展示


(写真)1935年のG1型トラック発表会の漫画。