
(写真)宇美八幡宮。
2024年(令和6年)9月、福岡県糟屋郡宇美町を訪れました。「宇美町の映画館」に続きます。
1. 宇美町を訪れる
糟屋郡は福岡市の東部郊外にある郡であり、全国の郡の中で最多の約23万人という人口を有しています。いずれの町も福岡市のベッドタウンとして発展しており、郡の南端にある宇美町にも大規模な新興住宅地が存在します。
1.1 宇美八幡宮
JR香椎線宇美駅の東側に新興住宅地が広がっている一方で、宇美駅の西側には宇美八幡宮を中心とする旧市街地が存在します。
1万平方メートルを超える宇美八幡宮の境内にはクスノキの大木が林立しており、うち衣掛の森と湯蓋の森は国の天然記念物に指定されています。それぞれ単一のクスノキですが、あまりにも規模が大きいために「森」という名称がつけられています。同一敷地内に2件も国の天然記念物があるのは稀なことだと思われます。

(写真)宇美八幡宮の衣掛の森。国の天然記念物。

(写真)宇美八幡宮の湯蓋の森。国の天然記念物。
1.2 宇美町立歴史民俗資料館
宇美八幡宮の境内に隣接して宇美町立歴史民俗資料館があります。常設展示の考古資料室と民俗資料室に分かれており、2階の特別展示室で企画展を開催することもあるようです。

(写真)宇美町立歴史民俗資料館。

(写真)考古展示室。

(写真)民俗展示室。
民俗資料室では中央部の民具が広いスペースを占めていますが、宇美町の現代史に焦点を当てた北側のガラスケースが気になりました。近代の糟屋郡には筑豊炭田とは異なる糟屋炭田があり、宇美町には勝田炭鉱(三菱鉱業勝田鉱業所)がありました。
1950年(昭和25年)に約2万2000人だった宇美町の人口は、勝田炭鉱が閉山した1963年(昭和38年)から1970年代前半まで一時的に減少したものの、その後福岡市のベッドタウンとして宅地化が進み、ピークの2005年(平成17年)には3万9136人にまで増加しています。宇美町を含む糟屋郡は、全国の炭鉱地域の中でも異例の人口推移を示した地域と思われます。

(写真)民俗展示室。勝田炭鉱の資料。

(図)2つのピークがある宇美町の人口推移。宇美町都市計画マスタープラン
現在の宇美町にはJR香椎線が通っていますが、福岡市街地に出るには長者原駅でJR篠栗線に乗り換える必要があります。しかし、1985年(昭和60年)までは国鉄勝田線も宇美町を通っており、福岡市街地の吉塚駅に直行していました。
Wikipedia「勝田線」には「一日の運転本数は全線通し列車が5 - 6往復」「国鉄から廃線を提案されても沿線住民に大きな廃止反対運動が起こることもなく」などと書かれているのがもの悲しさを感じます。民俗資料室内には勝田線に関する資料もありました。

(写真)民俗展示室。国鉄勝田線の資料。


(写真)民俗展示室。国鉄勝田線の資料。


(写真)民俗展示室。蓄音機やカメラ。
1.3 宇美町立図書館
宇美川の北側にはふみの里まなびの森という公共施設ゾーンがあり、西から宇美町中央公民館、宇美町住民福祉センター、宇美町地域交流センター(うみ・みらい館)、宇美町働く婦人の家し~ず・うみの4施設が並んでいます。最も新しい施設は2007年(平成19年)9月27日開館のうみ・みらい館であり、1階に宇美町立図書館、2階に多目的ホールがある複合施設です。
うみ・みらい館の設計者は日本設計であり、2015年(平成27年)に日本図書館協会建築賞を受賞しています。ワンフロア型の館内は長方形の一般書エリアと楕円形の児童書エリアに分かれており、一般書エリアの手前には雑誌コーナー、奥には地域資料コーナーがあります。オーソドックスなレイアウトがとても使いやすそうに見え、エリアごとに多くの利用者がいました。

(写真)うみ・みらい館。
1975年(昭和50年)には自治体史として『宇美町誌』が刊行されていますが、2020年(令和2年)には半世紀ぶりに『新修宇美町誌』が刊行されました。写真や図表が豊富で現代的な自治体史であり、勝田炭鉱や国鉄勝田線など現代の記述に力が入れられています。
国立国会図書館デジタルコレクションには多くの自治体史が収録されていますが、1975年(昭和50年)の『宇美町誌』は収録されていません。2020年(令和2年)の『新修宇美町誌』もデジタル化はなされておらず、今後のデジタル化に期待します。

(写真)2020年刊行の『新修宇美町誌』における映画館への言及。