西川善司の大画面☆マニア

第293回

「マイクロRGB vs RGBミニLED」騒動から学ぶ、2026年の最新テレビ技術動向

CES2026会場の外観。ついにサムスンブースがメイン会場から退き、日本勢ではついにソニーブースが消えた(ソニー・ホンダモビリティへと衣替え)。パナソニックなど数社はまだ残っているが、日本電機メーカーのブースはほとんど姿を消した。数年前までは、韓国勢が抑えていたメイン入口近辺の一等地の看板は、今や中華メーカーが支配

今年も世界最大級のエレクトロニクス関連イベント「CES 2026」が1月初頭に行なわれた。約1カ月が経過し、映像技術関連の新情報も集まったので、新年一発目の大画面☆マニアは、「2026年の最新映像技術動向まとめ」というテーマでやっていきたいと思う。

なお、本稿の内容は、筆者が実際に現地取材して取得した情報をメインにまとめているが、一部は、CES 2026会期中に配付された広報資料なども参考にしている点を了承いただきたい。

韓国発の“マイクロRGB LEDテレビ”騒動

CES 2026では、サムスンとLGが、優良誤認とも取れるような、“バズり狙い”の技術発表を行なって、映像技術界隈に物議を醸した。

日本市場では、TVS REGZA(以下レグザ)などが製品化済みの「RGBミニLEDバックライトを採用した液晶テレビ」を、なんと“マイクロRGB(LED)テレビ”と称して発表したのである。

まぁ実際のところを話すと、昨年12月頃から、韓国勢メーカーが「かつて液晶テレビのバックライトを“CCFL”から“LED”へ変更したタイミングで、液晶テレビを“LEDテレビ”と称したように、今度もバズり発表をやるらしい」という噂は、業界関係者の間には流れていたので、ビックリしたというより「本当にやったゾ」という感じの反応ではあったのだが。

実際のサムスンやLGのCESブースでは、LEDのキーワードを排除した“マイクロRGBテレビ”として展示されており、意図的に“液晶テレビ”であることを謳わないプレゼンテーションを行なっていた。

サムスンのCES 2026プレスカンファレンスより

既に数年間に渡って、業界でコンセンサスが取れた技術名を独自改名してアナウンスするやり方は、映像パネル技術への理解度がそれほど高くない一般ユーザーに対しては、混乱をおよぼすだけであり、芳しい行為とは言えない。

専門メディアでそうした混乱はなかったとは思うが、一般メディア界隈では、「え? サムスンが、ついに一枚パネルのマイクロLEDパネルの量産化に漕ぎ着けたの?」という、軽い誤解騒動に巻きこまれていところもあったようだ。

筆者の元にも、知人の技術系メディア関係者から「これって、ただのRGBミニLEDですよね?」という確認メッセージが届くくらいの騒ぎにはなっていた。

“マイクロRGBテレビ”はただのマーケティング用語か

これ、実際何が正しいの? ということになるのだが、結論としては上でも言っているように、今回、サムスンやLGが発表したマイクロRGBテレビは、“RGBミニLEDバックライトを採用した液晶テレビ”である。

韓国勢のメーカーが、RGBミニLEDバックライト技術をなぜマイクロRGBテレビと呼んだのか? といえば、ただのマーケティング戦略にほかならない。

CES2026のサムスンブースでは、“サムスンが達成した世界初技術史”が貼り出されていた。この年表にもあるように、サムスンは、似たようなことを2009年にもやっている。液晶テレビのバックライトがCCFLからLEDになっただけのものを“LEDテレビ”として発表したことがある

もともと、液晶テレビへの採用事例が増加してきた「ミニLEDバックライト」は、実発光体としての青色ミニLEDを敷き詰め、さらに青色を緑色や赤色に波長変換できる量子ドットシートを組み合わせて、純度の高い白色光を液晶パネルに照射させるものだ。

量子ドット技術を用いず、青色ミニLEDに蛍光体を組み合わせた白色ミニLEDタイプの廉価仕様もあるが、いずれにせよ、このミニLEDチップのサイズは100~200マイクロメートル程度となっている。

昨年から製品への実用化が始まったRGBミニLEDバックライトでは、赤LED、緑LED、青LEDのLEDチップ3つをワンパッケージにしたチップをバックライトに用いる。赤緑青(RGB)の単位LEDチップはそれぞれ100マイクロメートル未満だ。

韓国メーカーが目を付けたのはここだ。

「各色のLEDチップそのものは、従来の青色LEDチップよりも小さくなっているじゃないか」「これはもう、ミニではなく、マイクロと呼んでも差し支えないだろう」。まぁこんな感じだろう。

しかし、その応用先は、液晶パネルにおけるバックライト技術である。いくらRGBの各色LEDチップが微細化したとしても、ワンパッケージ化したRGB LEDチップのサイズは、従来の青色単色ミニLEDチップと、それほど変わらない。だとしたら「マイクロは言い過ぎではないか?」という反撃的意見は出てくるはずだ。

しかし、この部分。韓国メーカー側の立場になって考えると、それほど無下にもできないポイントがなくもない(笑)。

従来の青色ミニLEDチップは、LEDチップ自体を樹脂で包んだSMD(表面実装部品)チップタイプが主流で、サイズは100マイクロメートル。

対してRGBミニLEDは、COB(Chip on Board:基板直付け)チップタイプが主流。サイズ的には大差ないのだが、COBの方がバックライト用のベース基板への実装ピッチを高密度化できるメリットがある。

SMDとCOBのイメージ(AI生成した画像)

上の簡略した図解では分かりにくいが、SMDは基板への実装時、SMDチップ外殻にあるハンダポイントで実装なければならない。配線のことも考えると、SMDチップ同士の隙間をギチギチに詰めることができない。かなり攻めても、数㎜から数cmの実装ピッチになってしまう。

RGBミニLEDのCOBチップは、そもそも基板への実装用の電極ピッチが狭く設計されている。密着させて実装させても、高い廃熱効果が功を奏す。

具体的にいうと、RGBミニLED用のCOB基板には、熱電導率の高い金属系のメタルコア基板(MCPCM)やガラス基板を採用しているのだ。高熱伝導率は廃熱にプラスに働くため、RGBミニLEDのCOBチップは、実装ピッチを技術的にはギリギリ1㎜以下にまで縮められる、としている。

このことから「実装ピッチのマイクロメートル化が可能なんだから、マイクロと名乗っても良かろう」という理屈が通らないわけでもないのだ。

“本物のマイクロLEDテレビ”を何と呼ぶか問題

ただ、今回発表された、自称マイクロRGBテレビの試作機は、RGBミニLEDの実装ピッチは非公開ながらも「実は従来のミニLEDの時と大きく変わらない」(つまり数cmピッチ)という情報もある。

公開情報がないのに、そんなことが言えるのはなぜか。

1つは、バックライト照射の光学距離(OD:Optical Distance)の問題だ。

液晶パネルに対するバックライトはODを短くし過ぎると、液晶パネルに均一に光が当たらず、輝度ムラが出る。RGBミニLEDの場合は、ODが不十分だと、白色光として液晶パネルに照射できず、赤緑青が混ざりきらない色ムラを併発してしまう。ならば、高密度にRGBミニLEDを実装する意味があまりなくなってしまうのだ。

RGBミニLEDの実装ピッチを闇雲に挙げられない1つの理由

そもそも今回、CES 2026で展示された韓国メーカー勢の“マイクロRGBテレビ”なるものは、サムスンが130インチ、LGが100インチだった。

このサイズで、ドットピッチ1mm未満でRGBミニLEDを実装できているのだとしたら、それはもう液晶パネルのバックライトとして活用せず、そのまま表示に用いて“マイクロLEDディスプレイ”としてアピールした方がよいレベルだ。マイクロRGBテレビとかいう、グレーなネーミングは不要なはずなのだ。

なにしろ現在、業務用でリリースされているマイクロLEDディスプレイの最小画面サイズが4K解像度だと136インチ級であり、そのドットピッチは0.78mmくらい。

もし「RGBミニLEDを将来的には実装ピッチをマイクロメートルを実現することを公約する技術名」として、マイクロRGBテレビという名前にしたのだとしたら、それが実現したときにはマイクロLEDテレビは何と呼ぶつもりなのだろう?笑

2025年末に発売された、日本メーカー最初のRGBミニLEDバックライト採用液晶テレビ「116ZX1R」のバックライトシステム。実装ピッチは数センチだった

ちなみに、こうした事案に敏感で、すぐマネする傾向にあるTCLやハイセンスなどの中華メーカー勢はどう動いたのか? というと、さすがに今回は気が引けたのか静観。

ブースでは、日本メーカーと同じ「RGBミニLED」の技術名を使っていた。

TCLやハイセンスなどの中華勢は「マイクロRGB」というブランディングは避けて「RGBミニLED」をそのまま使っていた

今回のCES 2026の会場や、関連ブースで見かけた、RGBミニLED採用の液晶テレビを以下に紹介していこう。

色んな意味で注目を集めてしまったサムスンの“マイクロRGB”テレビは、130インチの最上位モデルを展示。シリーズ名は「R95H」。

55、65、85、100、115、130インチをラインナップ。2026年内の発売を予定しており、価格は115インチが500万円前後の見込み。

サムスンブースでは130インチの「マイクロRGBテレビ」という名の、RGBミニLED液晶テレビがお出迎え

LGは「マイクロRGB evo」の名でアピール。シリーズ名は「MRGB95」。

画面サイズは75、86、100インチ。発売時期は2026年内を予定。価格は未定。

LGも、RGBミニLED液晶テレビを“マイクロRGBテレビ”として展示。展示モデルは100インチ

RGBミニLED液晶テレビで日本市場一番乗りを果たしたTVS REGZAは、親会社ハイセンス(Hisense)のブース内で、未発表の100インチモデルを展示していた。現状は116インチ(116ZX1R)のみだが、将来的には、RGBミニLEDモデルに100インチモデルも追加するものと思われる。

RGBミニLEDモデルの100インチレグザの試作モデル。日本で発売されることは間違いないだろう。2026年2月時点で、100インチレグザは「100Z970R」「100Z770R」「100E670R」の3モデルが発売中。最安値は66万円前後の「100E670R」だが、RGBミニLEDモデルの価格はどうなるのか?
中華勢は“マイクロRGB”ではなく、しっかり「RGBミニLED」と呼称。ハイセンスが展示していたのは、116インチの「116UXS」。2026年内発売予定。価格は未定だが、日本にも導入見込みあり。レグザ「116ZX1R」より安価な価格設定になりそうだ
ハイセンスはRGBミニLED技術を超えたRGBミニLED技術として、なんとミニLEDを4原色化する「RGB MiniLED evo」を発表。これについては後編にて解説する

液晶テレビの進化は、バックライトの進化

今回騒動の中心となった「RGBミニLED」(≒マイクロRGB)技術だが、従来の「ミニLED×量子ドット」技術に対してどんなメリットがあるのか? についても軽く言及しておこう。

なお、ディープな技術解説や実際の採用製品に対する評価インプレッションについては、下記の記事を参照頂きたい。

液晶パネルはそれ自体が発光できないので、バックライトと呼ばれる光源ユニットが必要になる。

液晶パネルのRGBサブピクセルのそれぞれは、実体的には「白色光をどれくらい通すか」の制御しかできない。そのため、フルカラー表現を行なうためには、液晶パネルのRGBサブピクセルのそれぞれに、赤緑青のカラーフィルターを適用しなければならない。

また、液晶パネルのサブピクセルは、それ自体で発光することができない。局所的に明暗差の激しい映像表現を正しく行なうには、バックライトの明暗分布を、映像表現の明暗分布に連動して発光させる必要がある。

そこで、バックライトは画面全体で光らせるのではなく、細かいエリアごとに明暗を制御できるような仕組みへと進化。この技術は「エリア駆動」とか「ローカルディミング」という名称で浸透している。

そして、この先進のバックライト制御は、液晶パネルの直下に、そして格子状にLEDバックライトを配置させる必要がある。このバックライト構造は「直下型バックライトシステム」と呼ぶ。

エリア駆動に対応できる「直下型バックライト」と、対応できない「エッジ型バックライト」。エントリークラスの液晶テレビは、今でも、下のエッジ型バックライトを採用している。直下型バックライトシステムでは、背景の黒が締まって見えるが、エッジ型は黒背景がやや明るく浮いて見える。その違いは、バックライトの光らせ方にあるのは一目瞭然

このように見てみると、液晶パネルの表示性能は、かなりバックライト性能に連動して進化してきたことが分かるだろう。

そして2019年頃には、直下型バックライトシステムのエリア駆動分解能を劇的に上げる技術としてミニLED技術が台頭。これは、小さなLEDチップを液晶パネルの裏に高密度に敷き詰める技術だ。

LED数の増加に伴ない消費電力や製造コストは上がるものの、エリア駆動の分解能を液晶画素解像度に近づけることができるため、液晶テレビ/モニターのコントラスト性能を引き上げるのに大きく貢献する。

具体的には、従来は数十~数百ゾーンだったエリア駆動の分解能が、ミニLED技術によって数千ゾーンのオーダーに到達。高画質性能が求められるハイエンド製品を中心に、直下型バックライトシステムに、ミニLED採用が加速した。

テレビに採用される一般的な白色LED(左)と、青色ミニLED(右)との実層密度の比較。従来は5cm~10cm以上あったLED実装ピッチが、ミニLEDでは1cm~3cmになった

また、ほぼ時を同じくして、光の波長変換技術として「量子ドット」技術も台頭した。

青色ミニLEDと赤量子ドット、緑量子ドットを組み合わせて、高純度の白色光を液晶パネルに照射できるようになり、2020年以降、ハイエンド級の液晶テレビ/モニターは、「ミニLED×量子ドット」が採用されるようになった。

量子ドットとは、カドミウム、亜鉛、セレン、硫黄などを組み合わせて製造される数nmサイズの微粒子素材。各素材の調合の具合や粒径に応じて光の波長を自在かつ高効率に変換できる特性を持つ

そして、「ミニLED×量子ドット」の次に、2026年から積極採用が始まるとされる液晶向けバックライト技術が「RGBミニLED」(一部のメーカーで「マイクロRGB」)、ということになる。

RGBミニLEDのメリットは何か?

純度の高い白色光を液晶パネルに照射できるという点だけで見れば、RGBミニLED技術は、それほど「ミニLED×量子ドット」に対してアドバンテージがあるように思えないかもしれない。

下に筆者自身が測定した白色光のスペクトラムを示す。

実際、普通の白色LEDバックライトと比べると、RGBミニLEDは美しいスペクトラムピークになってはいるものの、ミニLED×量子ドットとの比較では、明確な差異は感じられない。

白色LEDモデルのカラースペクトラム
一般的な白色LEDベースの液晶パネルのカラースペクトラム。実態光源の青はともかく、蛍光体で生成される緑や赤の光はピークが低く、各スペクトラムの分離度も弱い
ミニLED×量子ドットモデルのカラースペクトラム
「ミニLED×量子ドット」技術ベースの液晶パネルのカラースペクトラム
RGBミニLEDモデルのカラースペクトラム
「RGBミニLED」技術ベースの液晶パネルのカラースペクトラム

両者の明確な違いを挙げるとすれば、「ミニLED×量子ドット」は、実態光源は青色LEDだけで、量子ドット技術を組み合わせて白色光を作っていたのに対して、RGBミニLEDでは、赤緑青の3原色の純色光を個別に焚けることになったことくらいだ。

では、どこにRGBミニLEDの美点はあるのだろうか。

結論から言うと、上げればたくさんあるのだが、本稿では分かりやすい4つを解説する。

美点1:広色域で高階調……つまりカラーボリュームが広い

「青色ミニLED×量子ドット」技術は、RGB 3原色光の色純度は高いが、液晶パネルに入力できる光は“白色”に限定される。これが分かりやすい弱点だ。

例えば、液晶パネル側で、暗い赤色、暗い青色、暗い緑色の単色表現をしたくても、液晶パネルに照射できる光源は、「青色ミニLED×量子ドット」技術では暗い白色に限定される。当たり前ながら、RGBの純色のバックライトを焚くことはできない。

一方で、RGBミニLEDでは、必要に応じて、フルカラーのバックライトが焚ける。

そんなことができてどんなメリットがあるのか。

漆黒の背景に、淡い光が当てられた赤リンゴの映像を表現するとしよう。

「青色ミニLED×量子ドット」技術だと、赤リンゴ本体の明るい箇所には明るい白色を照射し、暗い箇所には暗めの白色を照射することになる。背景は黒で、描き出したいオブジェクトは赤リンゴにもかかわらず、バックライトとしては白色を照射することしかできない。

赤リンゴの赤い階調部分にも、少なからず、不要な白色迷光が混じってしまうため、純色の赤で光らせたい領域に白色迷光の“雑味”が乗ることになる。

漆黒の背景についても、液晶パネル自体にはこの箇所に白色光が照射されるので、漆黒の背景側には、遮断しきれなかった白色光の迷光が黒浮きとなって現れる。

一方RGBミニLEDの場合は、液晶パネルに照射する光の色を、白色に限定されずに、RGB色を個別に発光させて照射することができる。

つまり、この赤リンゴの話で例えれば、赤リンゴ周辺には赤主体の階調でバックライトを焚けるため、赤リンゴを高品位に描き出せる。黒背景に現れる迷光も、バックライトに青や緑の光がない分、相対的にはグッと少なくできることになる。

一言でまとめるならば「青色ミニLED×量子ドット」技術よりも、大幅に豊かな彩色表現ができるようになる、ということだ。

美点2:色変移が低減……つまり視野角が広くなる

上でも述べたように「青色ミニLED×量子ドット」技術は、結局バックライトとしては白色に限定されるのに対し、RGBミニLEDでは、フルカラーのバックライトが焚ける。

これは事実上、バックライトが、低解像度のカラーLED映像そのものを表示しているようなものだ。この恩恵により、斜めから見たときに、迷光が見えやすい液晶パネルにおいて、RGBミニLEDでは迷光が既にフルカラーとなる。

つまり、迷光が白色となってしまう「青色ミニLED×量子ドット」技術に対して、色変移が少ない映像が見られるわけだ。

これは、コントラスト性能に優れながらも、色変移が起きやすいVA型液晶パネルの弱点軽減効果も大きい。

大画面テレビ製品では、ネイティブコントラスト性能の高さから、VA型液晶パネルが採用される傾向が強いので、この特性はまさに「渡りに船」といえよう。

ハイセンスブースで示されていた従来の「LEDベースの直下型バックライト」(左下)と、「ミニLED×量子ドット」(右下)と、「RGBミニLED」(中央)のイメージ。バックライトの光が既にフルカラーとなるのがRGBミニLEDの特質だといえる
視野角が広くなるイメージ

美点3:高輝度表現が格段に高まる

「青色ミニLED×量子ドット」技術では、発光する光源となるのは“青色”の単色だ。

その一部を量子ドット技術で緑色や赤色に波長変換するので、最大輝度は実光源の青色単色ミニLEDの輝度に依存する。

つまり、発光色の青色に、この青色を量子ドット変換した緑と赤の2色が加わるが、輝度エネルギーが3倍になるわけではない。

対して、RGBミニLEDでは実光源として、RGB 3色のLEDが発光できる。

RGBミニLEDの各色チップサイズが、単色青色ミニLEDに比べて小さいとはいえ、実際の発光体が3つあるため、絶対的な輝度性能は、青色単色ミニLEDを凌ぐことになる。

RGBミニLEDは「青色ミニLED×量子ドット」技術よりも輝度性能を高く出来るメリットがあるのだ。

「青色ミニLED×量子ドット」技術と比較して、実態光源の数が多いため、輝度性能やコントラストを上げやすい

美点4:任意のホワイトバランスでも広色域&高階調

「青色ミニLED×量子ドット」技術では、フルカラー表現は、液晶側のRGBサブピクセル側で行なうしかない。

しかし、RGBミニLEDバックライト技術を使えば、赤緑青の光の出力強度を個別に制御して発色できるため、色ダイナミックレンジは相当に大きくできる。テクニカルに言えば「液晶側のRGBサブピクセル×RGBミニLED」の二重変調で色が決定できる、ということだ。

これによりRGBミニLEDでは、特定の色温度を設定した時でも、高い色ダイナミックレンジでフルカラー表現が可能になる。特に、高輝度側の彩度の目減りを少なくできる。

これはもちろん、省電力モード時やブルーライト低減モード時にも、彩度落ちの抑制に貢献する。

他にもいくつかのメリットはあるが、基本的なRGBミニLEDの優位性はこんなところだろう。

フルカラー表現を液晶側のRGBサブピクセル駆動と、RGBミニLEDバックライト側の出力の二重変調で実践できるため、高い色ダイナミックレンジ表現ができる

本物の“マイクロLEDディスプレイ”はどうなっているか

いい機会なので“本物のマイクロLEDテレビ”についても、本稿で振り返っておこう。

「マイクロLEDディスプレイ」とも呼ばれ、赤緑青(RGB)の3つのサブピクセルがLED素子そのものとした映像パネル、と言う理解で良い。

サイズは、100インチ前後から、大型のものだと300インチ程度まで。価格はあくまで目安だが、136インチ/4Kで約2,400万円、163インチ/4Kで約2,700万円、217インチで約3,000万円といったところ。

価格は高いが、海外の大型イベントホールでは、プロジェクター装置からの置き換えが急速に進んでいる。

理由は、高輝度なマルチキセノンランプ搭載型の業務用プロジェクター機器とほとんど価格が同じになり、しかもプロジェクターよりも扱いやすいためである。寿命が5倍以上長い、部屋が明るくても見やすい、ピント合わせ不要など、運用面でのメリットも大きいと聞く。

いまの技術では、55インチといった“民生向けの画面サイズの1枚パネル”として、大量製造することは実現できていない。「1インチ100ドル級の民生向けが実現するには、あと10年……あるいはもっとかかる」という声もある。

現在実用化されているマイクロLEDディスプレイ技術では、例えば、27インチ程度の768×432ピクセル解像度のマイクロLEDパネルモジュールを縦5枚×横5枚に貼り合わせ136インチの4K画面を作る、というような感じで大画面を構築している。

最新の製造技術動向については、こちらの記事を参照して欲しい。

マイクロLEDディスプレイは、一部の富裕層向けのホームシアターソリューションとしても訴求されるようになってきている。近年のCESでは、半業務用的なポジションの製品訴求も目立ち始めている。

だからこそ、前半で触れた、韓国メーカー勢による「ついにマイクロ(RGB)LEDテレビがリビングにやってきた!?」的な報道の仕方は、新世代映像パネルのファン達に「何か、製造技術でブレークスルーがあったのか!?」と期待させてしまったわけだ。

ちなみに、CES 2026においては、各ブースで例年通り「○○インチのマイクロLEDディスプレイ」という形での展示はあったが、一般ユーザーが待ち望んでいるような「100インチ以下の画面サイズのマイクロLEDディスプレイが、一枚パネルで量産に成功した」というニュースはなかった。

以下は、CES2026会場で見かけたマイクロLEDディスプレイ関連展示物を抜粋して紹介する。

140型の4KマイクロLEDディスプレイ。型番はなく、技術デモ的な展示
昨年もアピールしていたサムスンの透過型マイクロLEDディスプレイパネル。今回は、実体物と映像を組み合わせた空間サイネージ用のデモを公開した。透過型有機ELパネルに対しては、より明るく、長寿命、焼き付きの心配がない利点をアピール
LGの136型4KマイクロLEDテレビ「LSAH007」。発売の予定はある模様。価格は25万ドル以上。なお、写真の中の“AM”はアクティブマトリックスの意味。現在、実用化されている多くのマイクロLEDディスプレイはすでにAMだ。最大リフレッシュレート144Hz、VRR、HDR10、Dolby Vision対応をアピール。富裕層向けホームシアターシステムとして訴求する見込み

マイクロLEDディスプレイ関連の面白ニュースとしては、ハイセンスが発表していた「4原色サブピクセルパネル」がある。

昔、シャープが発表したクアトロンパネルのような、RGB(赤緑青)に加え、黄色(Y)のサブピクセルを導入したものに近い。これについては後編で、詳細をお届けしたい。

というわけで、前編はここまで。

後編では、急に韓国勢のサムスンとLGが、これまたタイミングを同じくして、モニター向けの有機ELパネルに、RGBストライプ型のサブピクセル構造を採用しだした話題や、ハイセンスの4原色ミニLEDバックライト、RGBミニLEDへのカウンター技術として注目されているTCLの「スーパー量子ドット技術」の話などもお届けする予定だ。

<後編に続く>

トライゼット西川善司

大画面映像機器評論家兼テクニカルジャーナリスト。東京工芸大学特別講師。大画面マニアで映画マニア。3Dグラフィックスのアーキテクチャや3Dゲームのテクノロジーを常に追い続け、映像機器については技術視点から高画質の秘密を読み解く。近著に「ゲーム制作者になるための3Dグラフィックス技術 改訂3版」(インプレス刊)がある。3D立体視支持者。
Twitter: zenjinishikawa
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