レビュー

1~3万円台の注目デスクトップスピーカー聴き比べ。FIIO「SA1」、EDIFIER「MR3」、PreSonus「Eris 3.5BT 2nd Gen」

パソコンを核としたデスクトップオーディオ。DAC・アンプ・スピーカー・ヘッドフォンはその主なメンバーだ。中でも“スピーカーの設置”は、スペースが狭いデスクにおいて難題だ。それでもクオリティに妥協しないパッシブスピーカーを、以前の記事で探求した。

本稿はこの第2弾として、アンプを内蔵したアクティブスピーカーを試してみる。PCデスクが手狭なすべてのオーディオファンに向けて、筆者の気になる3製品が、以下の通りだ。これらの小型アクティブスピーカーは、スモールデスクトップオーディオをどのように彩ってくれるのだろうか。

  • FIIO「SA1」(直販34,830円)
  • EDIFIER「MR3」(直販14,980円)
  • PreSonus「Eris 3.5BT 2nd Gen」(実売約22,000円前後)
左からFIIO「SA1」、EDIFIER「MR3」、PreSonus「Eris 3.5BT 2nd Gen」

試聴するデスクトップ環境

最初に筆者のデスクトップ環境を説明しよう。我ながら、なかなかに厳しい状況だと思う。

デスクは、ネット通販でもよく見かけるタイプで、モニターを設置するための台がメインの天板の上に配置されている。このモニター台の上にスピーカーを設置する前提だ。モニターは27インチを設置。周辺環境的に机は真後ろの壁に近接する以外になく、背面の空間は窮屈となっている。

筆者のデスクトップ環境

置けるスピーカーは、幅15cm・奥行き17cm程度が限界だ。モニター台の奥行きは20cmだが、各種ケーブル結線を考えると多少の余白は必要となる。

現在はJBLの「Control 1 PRO」を使っている

前回のパッシブスピーカー編では、この奥行き17cmというシビアな条件のもと、JBL「Control 1 PRO」、YAMAHA「NS-B700」、Polk Audio「ES10」を試した。最終的には、それぞれ魅力的な製品であるものの、Control 1 PROが絶妙なバランス感を備えており、筆者の好みに近いことが分かった。

これらは別途アンプが必要なスピーカーだったが、今回はアンプ内蔵で、RCA入力に対応したアクティブスピーカーを厳選。FIIO「SA1」、EDIFIER「MR3」、PreSonus「Eris 3.5BT 2nd Gen(Pair)」の3セットだ。

彼らが接続される筆者のデスクトップシステムは、このようになっている。

WindowsのノートPCから伸びるケーブルはThunderbolt 4互換のUSB-Cケーブル1本のみ。40Gbps対応のケーブルは240WまでのUSB-PDに対応し、パソコンへの電力供給も担ってもらっている。

ケーブルの先に繋がるのは、DELLのUSB-Cハブモニター「U2725QE」。そのハブ経由でUSB-DAC「SWD-DA15」が接続されていて、RCAアウトから各スピーカーに結線した。音質や安定性を考えれば、USBケーブルはPCに直結させたいところだが、利便性を優先してハブからの出力としている。

USB-DAC「SWD-DA15」

普段は、RCAケーブルはパワーアンプの「FX-1001Jx2」に繋がっており、Control 1 PROを鳴らしているが、今回はSWD-DA15の出力を、可変から固定に変更。アクティブスピーカー側で音量を調整することにした。ボリュームを2箇所経由させないという点でこだわったが、現実的にはスピーカー側で音量調整か、DACなどのプリ側で音量調整するかは、実用性を鑑みて決めてしまってよいと思う。モニター機では、むしろ後者が一般的だ。

なお、3機種はいずれも、片側チャンネルはパッシブ型。SA1以外のMR3とEris 3.5は、スピーカーケーブルが必要だ。試聴においては、普段使用している「SPC-AV」を使用した。PC-Triple Cの単線導体にポリエチレン絶縁の構造で、音に癖がなく、極細ながら中低域の量感も申し分ない。

FIIO「SA1」

FIIO「SA1」

最初に取り上げるのは、FIIOのSA1。今回選んだ3機種では最も小型のモデルである。脚部を含めてメイン側が約135.5×155.6×185mm、セカンダリ側が約129×141.6×185mm。両者の間は専用のケーブルで結線する。これは低域側と高域側を別々のアンプで駆動するためだ。

左右チャンネルは専用ケーブルで接続する。低域側と高域側を別々のアンプで駆動するためだ

豊富な入出力インターフェースが特徴で、RCA/PHONO IN、AUX IN、USB IN(96kHz/32bit)、同軸デジタル IN(192kHz/24bit)、光デジタル IN(96kHz/24bit)、Bluetooth5.4(SBC、AAC、LDAC)と小型ながら多機能だ。メインスピーカーとサブスピーカーは、それぞれ2ウェイ駆動され、ウーファー出力最大20W、ツイーター出力最大5W。RCAサブウーファー出力を備え、2.1chシステムへの発展もできる。

入出力が豊富なのが特徴

ユニットは、3.5インチのミッドウーファーと3/4インチ アルミニウム・マグネシウム合金ドームツイーターを搭載。リアガイドチューブ設計により、65Hzまで低音域を拡張し、コンパクトスピーカーながら力強い低音を実現したとする。周波数特性は65~20kHz。

3.5インチのミッドウーファーと3/4インチ アルミニウム・マグネシウム合金ドームツイーターの2ウェイ

8種類のプリセットサウンドエフェクトと3種類のユーザー定義サウンドエフェクトを内蔵。ポップ、ロックなど一般的なスタイルに加え、モニタリング用に特化したスタイルカーブも。

さらにこだわる方向けに31バンドプロ仕様の高精度ロスレスPEQ(パラメトリックEQ)を搭載。エフェクトとEQは、FIIO Controlアプリから操作する。

FIIO Controlアプリ

付属品はACアダプター、RCA - 3.5mmオーディオケーブル、ユニット接続ケーブル、リモコン。

リモコンも付属する
デスクに設置してみた

本体デザインは、筆者のPCデスクにとてもマッチする。カラバリは、黒と白があるが、黒といってもご覧の様にグレーに近く、サイドの9mm圧の無垢材風合板がメカっぽくなりやすいアクティブスピーカーを家具の1つに仕立てている。振動板が金属ネットに隠れている点も、デスクに設置するスピーカーとして向いている。

リアバスレフ型だが、奥行きが小さいので、低音のだぶつきは無かった。中低音がエネルギッシュに出るため、低音ノブは絞り切り~10時くらいで試聴している。

Audirvāna Studioを立ち上げて、ローカル音源やQobuzを聴く。エネルギッシュなサウンドが楽しめる一方で、解像感は、もう一声欲しい。音像が膨張気味で、特にシンセなどの輪郭表現が甘めだ。劇伴は奥行きと広がりをもうひとこえ!と感じる。

ホールで録ったジャズカルテットを聴くと、ドラムとギターの前後感が狭まるが、アコースティックベースはキレイにセンターに定位してくれた。

そこでイコライザーを試す。「リスニング」というモニター向けのモードを選ぶと、中高域の抜けが良くなり、相対的に中低域のモコモコした違和感が緩和された。加えて、サイドにある低音調整のノブで適当な位置までカットしてあげるとバランスが整った。

イコライザーの精度は高く、鮮度の劣化は微々たるもので、効能を考えればトレードオフで納得できるレベルだ。他にも多数のプリセットがあって、追加ダウンロードもできた。

イコライザーで「リスニング」を選択

映像コンテンツも試す。Huluで海外ドラマ「FBIインターナショナル」。イコライザーはオフに戻して視聴した。スリリングなクライムサスペンスを、濃厚かつ豊潤なミッド&ローでムードたっぷりに盛り上げてくれる。

一方で、台詞のディテールはきめ細かさがもう一声欲しい。奥行きがやや平面的だ。ただ、小さな効果音も逃さず伝えるのはさすが。小音量でも音は死なない。普段、PC内蔵のスピーカーやタブレットを使っている人が、SA1を聴いたらきっとビックリする。

そういえば、電源はACアダプター供給だった。DC 18V/2.8Aということで、手元のDCノイズ対策グッズが使える。FX-AUDIO-の「Petit Susie」を挿入した。

これは激変だ。DCノイズ対策は、ぜひ検討してほしい。台詞の音像の周りのモヤがクリーンになって、豊かなディテールが復活した。小さい音量で鳴っているガヤも驚くほどスーッと耳に入ってくる。

高域の伸びはよくなり、劇伴の広がり感も豊かになった。中低域のモヤモヤが改善するため、イコライザーでリスニングモードを選ばなくても抜けがよく、そのままでいいのでは? と思えるほど。

慌てて、Audirvāna Studioでさっき聴いた曲を再生。生楽器の立ち上がりがシャープに、キレが改善している。楽器音の音像がだいぶクリアに、奥行き感も改善した。

ただ、見通しの良さはいまひとつだ。スピーカーからの音離れがあまりよくない。中央付近の定位はしっかりしているが、左右に振っている楽器がスピーカーから聴こえている感が強め。

ポップスやフュージョンをいくつか流してみると、分離が弱いことに気付く。古楽器を使った劇伴では、中域のふくよかさとマッチする。かといってトラディショナルなサウンドに寄りすぎることはなく、スピード感の表現はしっかりしているから、リズムのもたつきとは無縁だ。

SA1は超小型のため、スペースが限られた場所でも置ける点が魅力だ。多様なソース機器に対応するなど高級DAPや据置きDACで定評のあるFIIOだからこその高い機能性は魅力的だ。

また、コンパクトボディを裏切るように、驚くほどの低域の量感を備えている。イコライザーやPEQで好みのサウンドに追い込んでも、鮮度の劣化は小さいから、安心してカスタムしていける。

EDIFIER「MR3」

EDIFIER「MR3」

続いては、EDIFIERのMR3だ。EDIFIERは、ワイヤレスイヤフォンやヘッドフォン、アクティブスピーカーを手掛ける中国のメーカーで、Amazonや楽天市場のランキングでも上位を席巻している。最近、とても売れていると噂を聞き、候補に選んだ。

PCスピーカーやBluetoothスピーカーもリリースしているEDIFIERはモニター機も展開している。MR3もモニター用に分類される製品だ。サイズは、125.5×185×220mm(幅×奥行き×高さ)と狭いスペースにも置けるコンパクトさ。

1インチのドームツイーターと、3.5インチの中低音ドライバーを搭載し、周波数特性は52Hz~40kHz。18W+18WのクラスDアンプを搭載。RCAとTRS入力を備え、3.5mm AUX INとヘッドフォン出力をフロント側に持つ。Bluetooth 5.4対応。2台同時接続が可能なマルチポイント機能にも対応する。

背面の入力端子部分
3.5mm AUX INとヘッドフォン出力をフロント側に持つ

ディンプルツイーターウェイブガイドによって、平坦で拡張された高周波応答をもたらし、鮮明で正確な音の再現、広いリスニングエリアで一貫した音質を確保したという。

リアパネルのノブは、Highノブで10kHz以上の高音域を±6dBだけブーストまたはカット。Lowノブで125Hz周辺の低音域を±6dBだけブーストまたはカットできる。

専用アプリ「Edifier ConneX」を使用すれば、「低音域周波数のカットオフ」、低音のゲインレベルを変えられる「音響空間」、「デスクトップ・コントロール」の3種類が調整できる。

アプリ「Edifier ConneX」

付属品は、スピーカー接続ケーブル、3.5mm-RCAオーディオケーブル、3.5mm-3.5mmオーディオケーブル、AC電源ケーブル(メガネタイプ)。

EDIFIER「MR3」を設置したところ

小型とはいえ、奥行きが17cmを越えているMR3は筆者のデスクだと後ろのケーブル結線がちょっと大変だ。特にRCAケーブルはパツパツで、ギリギリ背面の壁に触れないように配線した。ウーファーの銅色は、ノブと同じカラーリング。黒い本体に対して目立つので、アクセントを効かせたい方には魅力的か。

イコライザーは、アプリだけでなく本体ノブでも切り替え可能だ。短押しすると、モニタリング、音楽、ユーザーカスタムの3種類が切り替わる。音楽を再生して聴き比べると、音楽モードとモニタリングモードの違いが見えてきた。音楽モードはメリハリが強調されて、中高域が若干煌びやかになる。ベースは、さりげない程度に押し出し感のあるサウンドに。

イコライザー選択画面

モニタリングモードは、地味目な音作り。音楽モードは、リスニング目的で楽しく聴けるという方向性を感じるが、言うほどバランスが崩壊する訳ではないので、好みで選んでしまっていいと思う。筆者はモニタリングモードで試聴を進めた。

にしても、中低域が盛り盛りだ。ベーストラックがモッコモコで明らかに不自然。リアバスレフだから壁との距離も影響していそう。アプリから「低音域周波数のカットオフ」の初期設定を見ると、周波数は35Hzで減衰量は-24dB/octaveだった。周波数設定こそ低めだが、減衰カーブはかなり急峻である。

いろいろ試したところ、我が家の環境では、70Hzの-18dB/octaveが良さそう。モコモコ感を緩和しつつ、量感が減りすぎないよう案配を調整した。周波数は10Hzか20Hz刻みで変えるのがお勧めだ。減衰量は低域をカットするカーブの形を決める。緩やかにカットして自然さを残したいなら、数字は大きくし過ぎないようにしよう(例:-24よりも-18の方がカーブは緩やか)。

スピーカーのロケーションが壁際や隅っこに近いときに、低音の音響特性を補正する「音響空間」も気になるので、試してみる。初期値は0dBだ。低域周波数のカットオフを初期値(35Hz、-24dB/octave)に戻して、音響空間だけで調整を試みる。

まず、最大値の-4dBを試す。低域のモコモコは緩和されたが、相対的に高域が派手に聞こえてしまう。-2dBにすると違和感があり、-3dBがちょうどいい感じ。

音響空間-3dBと、低音域周波数のカットオフ70Hz -18dB/octave、どちらがより理想の音を近いか比較してみると、音響空間-3dBの方に軍配が上がった。音楽のバランスが保たれて、低域の出方は理想に近い。あくまで筆者の環境での一例のため、環境によっていろいろ試してみてほしい。

参考にするのは、いつも使っているヘッドフォンとかだと指針になりやすい。筆者のようにエンジニアリングをしている人間は、自然なバランスを体感で覚えているが、慣れない方が何度もパラメーターをいじっていると迷ってしまうこともあるだろう。そんなときは、ヘッドフォンのサウンドを参考によく聴く音楽を掛けて調整するとよい。

デスクトップ・コントロールは、机の上に置くとき(スピーカー前方に棚板)や、正面にモニターがあるときの補正と思われる。やってみたが、筆者環境では特に有用性は感じなかった。

Audirvāna Studioで音楽を掛けてみる。高域はややブライトだが、雑味は感じない。ミッドは演出なく素直に鳴らす印象。ボーカルはナチュラルで、肉厚でもなく、かといって薄っぺらい訳でもない。ローは、前述のように調整次第だが、環境によって過多気味になるだろうから、調整は推奨したい。

解像感は、1万円台前半という価格を考えると、驚異的なレベルだと感じた。ボーカルのファントムセンターはクッキリと浮かぶし、ライブ音源など音数の大きいソースでもコーラスやベース、打楽器などそれぞれの輪郭は明瞭に描く。

分離感はもう少し上のレベルを求めたくなるが、スピーカーからの音離れは良好。前後感もしっかり出ている。奥行き感があっても、ユニットに音が張り付いているように感じられるスピーカーもあるが、自然に前に出てくる。一方、リバーブの余韻はやや滲みを感じる。

ジャンルを選ばないニュートラルなバランスは、初めての小型アクティブスピーカーに最適だと個人的には思う。好みのサウンドで選んでもいいけれど、「正しい音」という方向性も決して悪くない。

自分で録ったボイスサンプルもいくつか聴いてみる。ディテールをもう少し克明に描いてほしいが、価格を考えれば完成度は十二分。周波数バランスも申し分ない。これなら音声コンテンツ制作用のモニターとして使えそうだ。サイズに似合わぬ、ローエンドの深さも魅力的。この価格と小型ボディを踏まえれば、重心が高くなってもしょうがないのに予想をいい意味で裏切ってくれる。

HuluでFBIインターナショナルを視聴。「ああ、こういうのでいいんだよ」ってため息が漏れる。音に対して、感想がないのが感想といってもいい。欲を言えば、もう少しSEが明瞭に鳴ってほしいとか、劇伴は奥行きが広がりをもうひとこえ!とか思いつくものの、違和感を抱かせない音で聴ける喜びをかみ締める。

やはりサウンドが正確だと、音の個性やウィークポイントに気を取られにくく、ひたすらドラマに集中できる。音をチェックしているはずなのに、夢中になって事件の行方にのめり込んでいる自分がいた。

PreSonus「Eris 3.5BT 2nd Gen」

PreSonus「Eris 3.5BT 2nd Gen」

最後に紹介するのはPreSonusのEris 3.5BT 2nd Gen。PreSonusは、オーディオインターフェースやコントロールサーフェスなどを手掛ける音楽制作者の間では名の知られたメーカーだ。Studio Oneという音楽制作アプリ(DAW)もPreSonusが開発している。

筆者は、自宅スタジオでヘッドフォンアンプの「HP4」、さらにDAWを操作するためのコントローラー「FaderPort」も愛用している。モニタースピーカーというイメージはなかったが、製品の良さは日ごろから実感していたし、迷わず候補に加えた。寸法は、140.5×164×210mm(幅×奥行き×高さ)とMR3より少し大きいくらい。

ユニットは、1インチの超軽量シルクドーム・ツイーターとウーブン・コンポジット製の3.5インチウーファーを搭載。50WのクラスABデュアルアンプで駆動する。周波数特性は80Hz~20kHz。TRSとRCAの入力に加え、3.5mmステレオAUX INを装備。フロントには3.5mmヘッドフォン出力を備える。リアパネルのノブで高音域(±6 dB, center 10 kHz)と低音域(±6 dB, center 100 Hz)の調整が可能だ。

フロントには3.5mmヘッドフォン出力を備える
背面端子部

付属品は、スピーカーケーブル、RCA - 3.5mm ケーブル、3.5mmステレオミニケーブル。

本体は3機種の中で最も大きいが、質量は見た目よりもずっと軽い。持った瞬間、あまりの軽さに不安がよぎったが、後述の試聴チェックで杞憂に終わった。ユニットは、ブランドカラーであるブルーだが、目立たない暗めの水色となっており、空間に溶け込むタイプのデザインだ。

音楽を聴いた印象だが、高域はシルクドームだけあって優しい耳当たりで、上までクリーンに伸びている。生楽器との相性がよく、質感も適度に有機的だ。ユニット間の音の繋がりは素晴らしく、2WAYらしさを感じにくい。クロスオーバーの技術や位相管理が徹底されているのだろう。他の2機種とは別格の仕上がりだった。

中域の量感の無さは唯一のネックで、”上品なドンシャリ“となっている。ボーカルや台詞の骨格が強調されて、肉付きが物足りない。ただ、音像の輪郭は無駄に膨張しておらず、ディテールもよく見える。高域がシャカシャカしていないのは救いだ。

低域の量感は十分以上にあるため、アコースティック・チューニングで適正調整するといいだろう。試しにLOWを-6dBいっぱいまで回してみたら、明らかにやり過ぎに。少しずつ上げていき、適切なバランスに調整した。

先に映像からチェックする。同じく、FBIインターナショナルを視聴。ミッドの抜けてる感(量感不足)は、どうしても気になるところだ。シルクドームのおかげでハイに耳障りな成分はなく、ローエンドはこのサイズのスピーカーなら申し分ないほど。

筐体が軽いことから、もっとエンクロージャーが共振して音が濁ると予想していただけに、その気配すらなく、いい意味で拍子抜けした。劇伴のストリングスはオーガニックな質感をまとっており、温度感もあって適度に暖かい。かといって、滑らかに依りすぎず、モニター機としてのラインを崩さないチューニングが成されていた。トランジェントは鋭敏で、音にスピード感もある。

音楽をチェック。劇伴を聴くと、ストリングスの解像感の高さにニンマリ。奥行きや広がりもレコーディング現場の空間を思わせる再現性。コントラバスの重厚な低音は、小ぶりな見た目に反して味わえる。定位表現も緻密だ。ディテールの描写力は3機種中一番好み。

それだけにミッドの量感が物足りない点は惜しい。楽器音の説得力って、高域の鳴りも大事だけど、中音域の鳴りがしっかりしていることが欠かせないと考えていて、その観点で見ても残念さはあった。

他の2機種がアプリで音量を調整できたのが、何気に便利だったと実感する。スピーカーのボリュームノブまで手を伸ばすのは案外面倒だった。モニター機の一般的な使い方からすれば、USB-DACやオーディオインターフェースなどのアウトプットボリュームで調整するのが常道。今回は、純粋にスピーカーの性能をチェックするため上流を固定音量とした。

ボイスサンプルもいくつか聴く。ミッドが抜け気味なので、声の骨格が強調される印象。解像度は高く、発声の細かなニュアンスがよく伝わる。アタックも明瞭だ。

見た目よりも低域は下まで出ているので、ヘッドフォンを併用しつつも、ある程度までスピーカーだけでサウンドメイクはできると思う。低域の安定感やクリアネスは優秀。MR3も尋常ならざるコスパだったが、Eris 3.5BT 2nd Genもこの音で実売2万円台前半とは恐れ入る。

3台それぞれの魅力がわかった

ということで、全3機種試してみたが、なかなかどうして、狭いデスクでもテンションの上がる試聴タイムが楽しめた。SA1は、超小型ながら十分な低音の鳴りと、FIIOらしい多機能性を備えたエンターテインメントタイプのスピーカー。3機種の中では高価だが、オーディオ機器ライクなデザインが楽しめる。

MR3は、3機種の中で最も低価格であり、大人気メーカーの貫禄を感じさせる異次元のコストパフォーマンスで、万人にお勧め出来る初めてのアクティブスピーカーとして適任。

そして、Eris 3.5BT 2nd Genは、気になる所もあるけれど、総合的なステータスが高いレベルで整っており、2WAYとは思えない繋がりの良さが価格を超えた満足感を与えてくれた。

一番いいのは環境を改善すること。しかし、誰もが理想のシチュエーションを準備できるわけではない。デスクトップオーディオは制約と隣り合わせだが、きっと理想に近い逸品がある。諦めずに、探求することもオーディオの醍醐味だ。

橋爪 徹

オーディオライター。音響エンジニア。2014年頃から雑誌やWEBで執筆活動を開始。実際の使用シーンをイメージできる臨場感のある記事を得意とする。エンジニアとしては、WEBラジオやネットテレビのほか、公開録音、ボイスサンプル制作なども担当。音楽制作ユニットBeagle Kickでは、総合Pとしてユニークで珍しいハイレゾ音源を発表してきた。 自宅に6.1.2chの防音シアター兼音声録音スタジオ「Studio 0.x」を構え、聴き手と作り手、その両方の立場からオーディオを見つめ世に発信している。ホームスタジオStudio 0.x WEB Site