レビュー

フォステクス、第4世代RP搭載モニター、セミオープン「T50RPmk4」と密閉「T50RPmk4CL」を聴く

左からセミオープン型「T50RPmk4」、密閉型「T50RPmk4CL」

フォステクスのモニターヘッドフォン? 大変失礼ながら、あまりピンとこなかった筆者は、今回の試聴が終わってから自らを恥じた。正確なサウンドはもちろん、適度な温度感も備えることで、ジャンルを問わず音楽を楽しめる超優秀モデルだと実感したからだ。

フォステクスは、全面駆動型平面振動板のRPドライバーを搭載したモニターヘッドフォン「T50RPmk4CL」(直販価格38,500円)を7月に発売した。T50RPmk4CLは、昨年5月下旬に発売したセミオープン型「T50RPmk4」(同38,500円)の密閉型だ。第4世代RPドライバーを引き続き搭載し、密閉型へのアレンジに当たっては、サウンドバランスを綿密にチューニングしたという。

本稿では、新発売の密閉型T50RPmk4CLに加え、ベースとなったセミオープン型T50RPmk4も同時にチェック。4.4mmリケーブルも交えながら、リスニング用途をメインに、制作用途でも使える製品であるかをレビューしていくことにする。

第4世代RPドライバーに注目

フォステクスは、1973年創業の音響機器メーカーで、50年を超える歴史をもつ。業務用からコンシューマまで幅広く手掛けているが、音響エンジニアでもある筆者にとっては、特徴的な形状のHR振動板を備えたモニタースピーカーのイメージが強かった。また、スピーカーユニットの製造会社としても知られており、自作スピーカーユーザーにとって定番のブランドの1つでもある。

かくいう筆者の防音シアターには、トップスピーカーとサラウンドスピーカーの計6箇所にフォステクスのFF Seriesを使っている。そのニュートラルかつ、明瞭なサウンドはお気に入りだ。

フォステクスのモニターヘッドフォンといえば、1974年から進化を続ける独自技術のRPテクノロジーが注目ポイント。Regular Phaseの頭文字を取ってRPと呼び、平面振動板の全面を規則正しい位相で動かす技術を売りにしている。

T50RPmk4CLの全面駆動型平面振動板は、第4世代RPドライバーを搭載。フォステクスのモニターヘッドフォンのラインナップとしては、黒胡桃無垢材ハウジングのT60系と、樹脂製ハウジングのT50系の2ラインがあり、現行モデルの全てで第4世代RPドライバーを採用している。第4世代の初登場は2024年だ。

第4世代RPドライバーの構造

第4世代の改良点は、振動板を挟み込むマグネットを増量しプリンテッドコイルのパターン形状を新設計することで、振動領域の拡大と均一化を図った点。また、磁気回路の構成部品を一新して磁束分布を最適化させることで、振動板の不要共振を抑え、音の立上がりと立下がりのレスポンスを改善したという。

これらの改良により、感度が向上し、滑らかな周波数特性や優れた過渡特性を達成。全帯域にわたり正確かつ繊細な再生音を実現し、定位感と音場再現能力も高めている。

密閉型へのアレンジにあたっては、セミオープン型T50RPmk4との音の違いを抑えるべく、通気部の遮音とサウンドバランスのチューニングを入念に実施。ハウジングの内部形状まで同一にすることで、両機種を使い分けるユーザーにも納得の出音をかたちにした。この点については、筆者も両機種を使ってのインプレッションを解説する。

上がセミオープン型の「T50RPmk4」、下が密閉型の「T50RPmk4CL」。ハウジングに横向きにスリットが入っているが、ここがセミオープンか、密閉かが異なる。

ケーブルは、脱着式で左右コネクタのどちらでも接続が可能。モニターとして使う場合、機材の位置関係が固定になってしまうことが珍しくない。自分の座り位置に対して、機材が右側/左側という制約だ。

筆者の場合、ラックに収まったオーディオインターフェースはデスクの左側以外には置くことが出来ない。そんなとき、使いやすい方のコネクタを選べるのはとても便利だ。具体的には、左側のコネクタに挿し込むことで、(身体にとっての)ケーブルがスッキリする。

ケーブルは、脱着式で左右コネクタのどちらでも接続が可能

左右どちらでも挿せる仕様は、別の恩恵ももたらした。左右のハウジングを同じ形状とすることで、コネクタ部の有無による内部構造の差異をなくし、さらに容積の左右差で生じる音質差も低減しているという。スピーカーにおいて、キャビネットの形状や容積が音質を左右することを考えても、理にかなった配慮と言える。

ヘッドバンド部分

コネクタは、3.5mmの4極を受けられる仕様になっているので、バランス接続での駆動も可能だ。4.4mmのバランスケーブル「ET-RP4.4BL」がオプションで用意されている。

付属の3.5mmケーブル
オプションの4.4mmバランスケーブル「ET-RP4.4BL」

イヤーパッドは装着感を追求した低反発のアラウンドイヤー型。ソフトレザー調人工皮革を表面材に採用し、内部素材は低反発ウレタン。交換用のパーツも用意されている。

イヤーパッドは低反発のアラウンドイヤー型

別売オプションの東レ製Ultrasuede採用イヤーパッド(EX-EP-RP-SUEDE)は、柔らかな肌触りと適度な通気性・透湿性が魅力とのこと。

インピーダンスは28Ω、感度は97dB/mW。最大入力は3,000mW、再生周波数帯域は10Hz~40kHz。ケーブルを含まない重量は約330g。これらの仕様は密閉型もセミオープン型も同一だ。

今回は、新発売のT50RPmk4CLだけでなく、セミオープン型のT50RPmk4も合わせて試用することが叶った。箱から出して眺めると、若干のメカメカしさを感じた。ハウジングの無骨さや、スライダーのソリッドさが存在感を主張している。

装着感は、両機種とも共通だった。側圧はやや強め。スライダーを適切に調整すれば、圧力は結構変わってくるので、一度装着してまた外し、左右のスライダーの調整具合が等しくなっているか微調整をしたほうがよい。このスライダーの調整がうまくいってないと、左右の音量差を感じる要因にもなるので注意しよう。

スライダーの調整はしっかりやろう

重量は330gと重めなので、ずっと掛けていると首が細い筆者は疲れてきた。ただ、平面振動板を用いたヘッドフォンは、構造上質量が嵩むため、やむを得ない面はあるだろう。筆者も350gの他社製ヘッドフォンを所有しており、そちらはずっと付けていたくない。とはいっても、リスニング向けのヘッドフォンだと400g越えもあるから、慣れはありそうだ。

各部の造りは堅牢感があり、素材としての感触も頑丈さが感じられる。モニター機として使うと、何度も付けたり外したり、扱いもついぞんざいになってしまうだけに、丈夫さは重要なステータスだ。

そして、何気に嬉しいのがヘッドフォンを持って構えたとき、手前側にL/Rの刻印があることだ。外側や内側を見ることなく、すぐ被ることが出来るのは、制作用としてポイントが高い!

いや、これホントの話。制作中は、余計なことを考えたくないので、「付けよう」と思って、何も考えずに目線の先に必要な情報があって、ノーディレイで正しいL/Rで装着出来ることが重要なのだ。

手前側にL/Rの刻印があって左右がわかりやすい

本機の場合、コードを左右どちらでも付けられるため、コードの位置でいったんL/Rを覚えても、機材の位置が変わったら差し替えが発生して混乱してしまう。このような細かい配慮は本当にありがたいと思う。

一方、個人的に惜しいなと思う点はあった。まず、片耳モニターがしにくい。出来ないことはないのだが、片耳を外して頭の後ろとかにスライドさせると、不自然な圧迫感が強く、快適とはいえない。片耳モニターといえばDJ用途が真っ先に思い浮かぶことだろう。

ただ、筆者の場合、配信の現場とかは片耳でモニターすることが珍しくない。他にも自分のスタジオでの話だが、収録ブースの演者とトークバックで会話しつつ、コントロールルームのディレクターと生声で会話するときも片耳モニターをしたくなる。

また、折りたたみ不可のため、外部の仕事で持っていくときに、コンパクトにしてバックに突っ込めないのは不便だ。だからなのか、キャリングケースなどは付属しない。筆者は、ある程度まで折りたためるモニターヘッドフォンを使ってきたので、過度の気にしいなのかもしれないが。

タイトで輪郭はクリア、楽器の音が“生らしい”

最初は、DAPに3.5mmで繋いでサウンドをチェックしてみる。DAPはPLENUE R2を使用。3.5mmの出力は2Vrms。基本的にダウンロード販売のハイレゾ版を聴く。

PLENUE R2で試聴する

『葬送のフリーレン』のサウンドトラックから「A Well-Earned Celebration」。音数が少なく、古楽器がふんだんに使われている楽曲だ。

セミオープンから聴いてみたら、「あ、これはいい!」と頭の中で電球が光った。

トランジェントが非常に良好なおかげで、楽器の“生らしさ”が際立っている。音像のディテールは緻密で、分離もしっかりしている。ローは誇張が一切無く、タイトで輪郭がクッキリしたパーカッションに聴き惚れた。

密閉型に変えると、まず音が近くなる。音場の密度がやや上がり、左右の広がりは少しだけ狭くなるが、密閉型単体で聴いたら気にならないレベルだ。

音が近くなると言っても、セミオープンと密閉で比べて、そこまで閉塞感が増すわけではない。密閉型では開放感は多少減衰するも、いろんなジャンルの曲を聴いてみると、あまり気にならない楽曲(POPSなど)もあった。中低域を担うパーカッションは、音像がよりシャープに締まったおかげで、輪郭がさらに見えるようになる。

密閉とセミオープンで、外音に対する遮音性能に違いがあるか比較したが、筆者の感覚ではそれほど大きな差は感じられなかった。

例えば、エアコンの空調ノイズ。密閉型では、少しだけ高域が籠もったように聴こえるので、遮音の特性が違うことは明らかだ。ただ、体感的な外音のうるささは、あまり変わらなかった。よって、外からの音を遮音というよりは、レコーディング時にヘッドフォンの音がマイクに入らないようにするための密閉型と考えるのが順当だろう。

音場の広がり感、開放感、抜けの良さといった要素はセミオープンが優れるものの、密閉型もかなりのレベルであり、単体で聴いたら不満は抱かない方もいると思う。また、音色のバランスは驚くほど2機種で同じだ。

ゆったりしたアイリッシュを聴いた後は、テンポの速い曲も聴いてみる。SANOVAのZIPANGより「東海道メガロポリス」。キーボードとベースとドラムだけの、シンプルなピアノジャズロック。聴きどころは、ドラムやピアノのリズムの早さに出音が付いていけるか、スピード感や制動の効き具合もチェックする。まずは密閉型から。

SANOVA『東海道メガロポリス』Music Video Full Ver.

スネアの素早いドラミングをキレよく聴かせる。バスドラはタイトにキマり、緩みなく収束していく。音の立ち上がりから最大音量に達してただちに収束する、スネアのあっという間の時間経過を忠実に鳴らしている。モニター機らしい大真面目なサウンドにグッとくる。

セミオープンに変えると、キーボードの音の広がりがダイナミックに。低域の量感は、音像がやや大きくなる分、セミオープンの方が上回る。個人的な好みは、ベースやバスドラがシュッとする密閉型の方だが、セミオープンも音場が広く楽器同士の密着感がないので、リラックスして聴ける。肝心のスピード感の表現力は、わずかに密閉型がセミオープンより勝っている印象だった。

映画『きみの色』の劇中歌「水金地火木土天アーメン」。牛尾憲輔氏によるポップなシンセチューン。密閉型から聴いてみたが、誇張や演出感が一切ないベーストラックは、横揺れのリズムに安心して乗っかれる。おそらくシンセの実機だと思うのだが、独特な電気の音も豊かな厚みのある音色で再現してくれる。

セミオープンでは、ボーカルの空気感は上回ったと思った。左右に定位を大きく振ったシンセの音は密閉型よりも“振り切った感”が分かりやすい。一方、低域のキレや抜けの良さ、量感の案配は密閉型が好みだった。

それにしても、密閉・セミオープンどちらでも、細かい音がしっかり聴こえるヘッドフォンだ。ズンズンとベーストラックが鳴っていても、中高域の弱音は埋もれていない。

ストリングスを用いた劇伴も聴いてみる。『ラブライブ!スーパースター!!』3期 オリジナルサウンドトラックより「卒業の日」。セミオープンでは、ストリングスの広がりやブラスの響きが、演奏会を体感しているような感覚に近い。ソースに忠実かと問われれば、密閉型かもしれないが、リアルではなくリアリティがあるから気持ちよく聴けることもある。

密閉型では、リバーブの階調表現が原音らしさの面で優秀だ。余韻の消え方、そのグラデーションに曇りがなく明瞭に鳴らしている。エフェクトの細かな違いを感じやすいのは明らかにこちらだと思う。後述するが、制作用途で使ってみてもこの評価は変わらなかった。

とはいえ、リスニング用途で使うなら、密閉もセミオープンも甲乙付けがたい。聴く音楽に合わせて、とっかえひっかえして楽しめるくらいどちらも魅力的だ。

コンサートホールで収録されたオーケストラ音源を何曲か聴いてみると、セミオープンでは音場の圧迫感というか、ややゴミゴミした様子が緩和された。演奏時のかすかなタッチノイズは密閉型の方がよく聴こえるが、生演奏を会場で聴くリアリティはセミオープンが優れる。そもそも演奏会で聴いたら、(座席にもよるが)タッチノイズなんてほぼ聞こえない訳で、広大な音場に浸る気持ちよさを堪能したいならT50RPmk4はファーストチョイスだ。

最後に女性ボーカル、男性ボーカルを何曲か聴いてみた。密閉型は、音場の密度が上がって曲によっては窮屈さを感じるという話をしたが、ことJ-POPなどのボーカルものであれば、ほとんど不満はない。むしろ、密閉型の味である音像のシャープさ、フォーカス感の良さ、アタックの分り易さなどが、ジャンルに合っていると感じた。

RPドライバーの実力は、トランジェントの正確さや低歪みを活かした自然で生々しいディテール表現などに現れている。周波数バランスは努めてフラットで、低域から高域まで誇張がなく、刺激的なピークやディップも感じない。それでいて、無味乾燥に寄りすぎず、生楽器の温度感を備えている。モニター機なのに聴き疲れしにくい、ほんのりと優しい音だ。

バランス接続の音もチェック

FIIOのヘッドフォンアンプ「Q3 MQA」とバランス接続する

バランス接続は短時間のチェックになったが、FIIOのヘッドフォンアンプ「Q3 MQA」で聴いた。ソース機器は、iPad ProからUSB-C出力で接続。3.5mmと4.4mmバランス接続の違いを聴いた。4.4mmでは330mW(32Ω時)とパワフルとはいえないポータブル環境で、どの程度楽しませるか。

男女2人によるギター・デュオ ロドリーゴ・イ・ガブリエーラのIn Between Thoughts...A New Worldから「Egoland」をQobuzのハイレゾ配信で聴く。

密閉型とセミオープン、それぞれバランス・アンバランスを試したが、変化の傾向は同じだった。チャンネルセパレーションが向上し、クロストークが激減。もともとわずかだった音場の混濁感がさらに改善され、空間と定位の表現力が格段にアップした。

音数の少ないインストではシビアに個々の楽器の鳴りを聴けるものだが、バランス接続はすべてを浄化して、余分なフィルターも除去したような、本物そのままといえるような魅力がある。

ヘッドフォンアンプやDA回路などのアナログ段の違いにも影響されることは承知しつつも、バランス接続はS/Nや歪み感も改善しており、一度聴くと3.5mmには戻れない音質改善がある。

Q3 MQAは、小型機かつ出力も見た目相応だ。ただ、中低域がスッカスカとか、腰抜けで音楽が楽しめないということはなかった。過去のRPドライバー採用のモデルと比較しても感度の改善は成されているし、第4世代の進化も手伝って、より鳴らしやすい製品にリニューアルしたといえそうだ。

既に4.4mm出力を備えたアンプをお持ちの方は、ET-RP4.4BLをヘッドフォンと一緒に買ってみるのもいいだろう。昨今は、TRSやXLR受けの4.4mm対応ヘッドフォンアンプも数は少ないが存在しており、オーディオインターフェースと組み合わせて制作用途にも使えそうだ。

モニターヘッドフォンとして、音響制作でも実力を発揮

制作作業にも使ってみたので、その感触を紹介しよう。

環境は、オーディオインターフェースがDiscrete 8 Pro Synergy Core。クロックジェネレーターにCG-1000を導入している。ヘッドフォンジャックは6.3mmのため、変換アダプターはフルテックのF63-S(G)を活用。ヘッドフォンはより細かく音をチェックできる密閉型のT50RPmk4CLを使用した。

先日、自宅で収録させてもらったボイスサンプルをもう一回整音してみる。

まず、定位の聞き分けから。そもそもの話として、モノラル音声のPAN振りなので、極めて分かりやすい。Pro Toolsで左右の定位を動かしてみたが、わずかな数値の違いでも左右の位置の変化に気付きやすかった。

次にOxford EQでローカットを掛ける。調整したのは女性の音声だ。周波数の設定を80Hz~100Hzで10Hzずつ可変して違いを聴いた。10Hzの差は、筆者の感覚ではちょっとピンとこないこともあった。よく聴けば分かるけれど、それほど明確に違いが出ない。20Hz違うと十分に分かる。もちろん男性ボイスだとまた結果は違ってくる。

いつも使っているモニターヘッドフォン「T3-03」に戻すと、音の近さとダイレクト感が強まって、気付きやすさが変わった。やや重い音になっていた息遣いの部分が80Hz設定から90Hzに上げると、除去されたことが分かる。ゴリゴリに近い音で聴きたいというニーズには合わないかもしれないが、その分リラックスして音楽を聴けるのがT50RPmk4CLの強みだと思う。

解像度は高く、ディテールも克明に描いてくれる。周波数バランスはフラットで耳障りなピークはないし、基本的なステータスはまさにモニター機といえる完成度だ。音が近すぎない分、適度な空気感が分かるので、リバーブの調整などには役立ちそうだ。

続いて、コンプレッサーで音量を整えてみる。Oxford Dynamicsをローカットの後段に挿してパラメーターを変えていく。アタックタイムは10ms刻みで、リリースタイムは50ms刻みで可変してみたが、とても判別がしやすい。

個人的にリリースタイムの違いは駆け出しの頃、聴き分けるのに難儀した。慣れない頃は何度も数値を往復したものだが、このヘッドフォンなら迷わず決められる。録り音や作りたい音に応じた最適解を、短時間で決められるのはありがたい。声の芯の存在感、不必要な揺らぎの程度など、よくよく注意深く聴きこまなくても自然と伝わってくるので、無性に楽しくなってくる。

モデリングコンプとして普段使っているCLA-2A、さらにBrainworx bx_console Focusrite SCも使ってみたところ、実機をシミュレートした質感の変化や、コンプ毎の歪み感の違いが如実に感じられた。筆者のスタジオには実機らしい実機は、マイクプリのFocusrite ISA Twoしかないのだが、これを使うことでインターフェース直挿しよりも、声が有機的になって温度感が宿る。

実機の良さは、「いい意味で音が汚れること」なんて言ったりもするが、その“いい意味”の違いがちゃんと伝わるモニターヘッドフォンだ。モデリングコンプは、ノイズや歪みの量を可変できるプラグインがあるが、T50RPmk4CLなら安心して判断を下せそうだ。

新製品のT50RPmk4CL、そしてセミオープンのT50RPmk4は、音色に癖がなく、高解像度でトランジェントも良好。透明感があり、微細な音の変化も逃さない。それでいて、無味乾燥過ぎない血が通っているサウンドを聴かせてくれた。モニターヘッドフォンとして話題に上がる定番メーカーではないかもしれない。しかし、価格を超えたパフォーマンスは確かにあった。

制作用途に限らず、音楽を聴く目的でもぜひフォステクスの本気が詰まったT50RPmk4CLを試してみてほしい。業務用として信頼出来る音のヘッドフォンは、正しい音で音楽を楽しむ最良の近道だ。

橋爪 徹

オーディオライター。音響エンジニア。2014年頃から雑誌やWEBで執筆活動を開始。実際の使用シーンをイメージできる臨場感のある記事を得意とする。エンジニアとしては、WEBラジオやネットテレビのほか、公開録音、ボイスサンプル制作なども担当。音楽制作ユニットBeagle Kickでは、総合Pとしてユニークで珍しいハイレゾ音源を発表してきた。 自宅に6.1.2chの防音シアター兼音声録音スタジオ「Studio 0.x」を構え、聴き手と作り手、その両方の立場からオーディオを見つめ世に発信している。ホームスタジオStudio 0.x WEB Site