レビュー

新iPad Pro購入1カ月。“宝の持ち腐れ!?”もっとHDRを!

M1チップ、ミニLEDディスプレイ採用の新型iPad Pro 12.9インチ

M1チップを搭載した新型iPad Proが発売されて、およそ1カ月が経過した。筆者は12.9インチ、256GBモデルを購入、発売日の5月21日から毎日愛用している。今回は、1カ月間の長期使用レポートをお届けする。ミニLEDを使った「Liquid Retina XDR」ディスプレイの映像は圧倒的だが、コンテンツ不足に直面し、現在は“宝の持ち腐れ”状態になっている。

購入してきた歴代iPadたち。このうち5台は現役で稼働中

そもそも筆者は初代からのiPadファン。初代を購入して以降は2~3年おきに新モデルを購入しており、このM1 iPad Proで7台目。12.9インチモデルのiPadを購入したのは、まだTouch IDが搭載されていた第2世代以来、4年ぶり。

主な用途はYouTubeやNetflixなどの映像コンテンツ視聴、Webブラウジング、SNSブラウジングなど。まれにPDF書類への書き込みや、iMovieを使った動画編集なども行なうが、9割以上はコンテンツ消費デバイスとして使っている。

ちなみに2020年発売の11インチiPad Proも併用しており、こちらは外出時に持ち出したり、取材先などでノート代わりに使うこともある。

ミニLEDディスプレイの映像美は圧巻も、コンテンツ不足に悩む

Touch ID付き12.9インチモデル(左)と並べたところ。画面サイズは同じだが筐体サイズは小さくなった

今回、新型12.9インチiPad Proを購入した理由は主にふたつ。ひとつは以前使っていた12.9インチモデルが購入から4年経ってバッテリー持ちがかなり悪くなっていたこと。朝充電が100%の状態でも、少しYouTubeやSNSを見ているだけで、昼過ぎには50%を切ってしまうような状況になっていた。

「Liquid Retina XDR」ディスプレイによりHDR映像が本格的に楽しめるようになった

そしてもうひとつは、HDR映像が本格的に楽しめるディスプレイが搭載されたこと。以前使っていた12.9インチモデルではHDR映像を再生できず、特に最近はYouTubeでも少ないながらHDR動画を見かける機会が増えてきており、そういったコンテンツを気軽に楽しめる端末が欲しいと思っていた。

【HDR】『バイオハザード ヴィレッジ』4th Trailer

実際にYoutubeでHDR動画を見ると、くっきりとした明暗と発色の豊かさに驚かされる。人気ゲームの最新作「バイオハザード ヴィレッジ」のHDR動画「【HDR】『バイオハザード ヴィレッジ』4th Trailer」を、'20年型11インチiPad Proと見比べてみると、50秒付近の夕陽が刺す映像は、12.9インチiPad Proのほうが、より夕陽の光がまぶしく、空の色味もはっきりと感じられた。

Apple TV+で配信中の「SEE 暗闇の世界」を視聴
(C)Apple

さらにApple TV+で配信中の「SEE 暗闇の世界」も視聴して、4K/HDRで配信されているドラマもチェックしてみた。この作品は21世紀にまん延した致死性ウイルスの影響により、地球の人口が200万人足らずに減少。生き残った全人類も視覚を失ってしまった文明崩壊後の世界を描いたもの。

特に第1話は人の手が入らずうっそうとした森や、朽ちた建造物内などが舞台で、生い茂った木々や、木漏れ日の眩しさ、中盤に登場する朽ちたダム内で漏れる日差しと暗闇のコントラスト、終盤に描かれる青々とした空などもしっかりと表現され、より一層ドラマの世界に没入できた。

ただHDRコンテンツは増えてきているとはいえ、まだ観たいと思った作品すべてが対応しているわけではない。動画配信サービスでも、記事執筆時点でAmazon Prime VideoやHuluなどは、HDRコンテンツの配信は行なっているが、iPadアプリではHDRで視聴できない。YouTubeにしても、HDR動画は増えてきているとはいえ、こちらも数は多くなく、率先して探しにいかないといけないことが多い。

そのため、結局HDRコンテンツを率先して堪能したのは購入してから最初の1~2週間くらい。現在は主に4KやフルHDで動画を楽しみ、たまにiTunes Storeでレンタルされている映画でHDRに対応していて気になるものがあればレンタル/購入して視聴するというスタイルになってしまった。今後は各サービスのHDR対応とコンテンツの拡充が進むことを願うばかり。

ビデオ通話が快適になる「センターフレーム」は用途拡大に期待

一方、バッテリー持ちについてはかなり改善されたと感じるポイント。もちろん4年ほど使った端末から新品に切り替わったことも影響しているが、ピーク輝度が高いディスプレイを搭載していても、バッテリー持ちは良くなったと感じる。

iPadOSに搭載されているスクリーンタイムで確認したところ、この1カ月間における1日の平均使用時間は約7~8時間。基本的には朝使い始めてから、夜就寝するまで充電することはないのだが、今のところバッテリー切れを起こしたことはなく、就寝直前でもバッテリー残量は30%程度残っていることがほとんど。

新型iPad ProのアップデートポイントとしてはM1チップの搭載も挙げられるが、筆者のようにメインの用途がコンテンツ視聴やWebブラウジングなどの場合、処理速度が劇的に向上したと感じることはほとんどない。この点に関しては4年前に発売された第2世代iPad Proでも不満はなかったので、当然かもしれない。

そして地味ながら、新型iPad Proを使っている上でもっとも驚きと便利さを感じたのは、ビデオ通話時に利用できるセンターフレーム機能。これはFaceTimeなどでインカメラを使ってビデオ通話をする際、ユーザーの顔を認識し、それにあわせて画角を自動的に調整してくれるもの。

センターフレームはGoogle Meetなど、FaceTime以外のビデオ通話サービスでも利用でき、実際に編集部のビデオ会議で使ってみたところ、追従のスムーズさに驚きの声があった。画角の調整は機械的なキビキビとした動きではなく、人が実際にカメラを操作しているかのようにヌルヌルとした動き。そして、ビデオ通話中に画角を気にすることなく動けるのは嬉しいポイントだった。

残念ながら、現時点でセンターフレームは標準カメラアプリでの録画時には利用できない。もし動画撮影で利用でき、さらにアウトカメラでも利用できるようになれば、画角を気にすることなく、より手軽にVlog撮影ができるなど用途も広がるので、アップデートを期待したい。

快適な“おうち時間”には大画面iPad

当初はミニLEDをディスプレイに期待して新型iPad Proを購入したのだが、上述のコンテンツ不足に直面し、現在はその性能をフルに引き出す機会はほとんどなくなってしまった。

また今後4K動画の撮影・編集に挑戦したいと考えてはいるものの、コンテンツ視聴端末に割り切った使い方は新型iPad Proの持つスペックや価格などを踏まえると“宝の持ち腐れ”感が否めないのも事実。

以前まで使っていたiPad Proでは選択できなかったYouTubeアプリでの4K解像度も選択できるように

しかし、従来モデルでは1日保たなくなっていたバッテリーを気にする必要がなくなったこと、以前使っていた12.9インチiPad ProではYouTubeアプリでの4K動画再生が可能になったこと、なにより4年以上も大画面のiPadを使っていると、これなしの生活には戻れない。

この12.9インチの大画面があることで、より気軽に映画やドラマを楽しむことができており、1年以上に及ぶ“おうち時間”も快適に過ごせている。

新型Apple TVはリモコンの進化が光る

ちなみに、今回はiPad Proにあわせて発売された新型Apple TV 4Kを短期間ながら利用する機会も得られた。CPUにA12 Bionicチップを搭載し、より高速になったことが特徴のモデルだ。実際に新Apple TV 4Kを触ってみると、コンテンツ選びなどで操作にひっかかりを感じることはなく快適。ただ、現在も使っている旧型の第4世代Apple TV HDも、操作にもたつきを感じることはなかったので、そこまで劇的な性能向上は感じにくい。

従来モデルのApple TVリモコン。限りなく上下対称に近いデザイン
リモコンを見ずに持つと上下逆になっていることがしばしば

一方、新しくなったリモコン「Siri Remote」は快適そのもの。従来モデルはリモコン上部がタッチパッドになっていたのだが、リモコン上下のデザインが似ているため、テレビ画面を注視したままリモコンを手にとった時、どちらがリモコン上部なのか分からないという事態が頻発していた。

新型リモコンの「Siri Remote」。上部にボタンを備えた

しかし、新型のSiri Remoteはリモコン上部にボタンを備えたことで、手触りでリモコン上下を判断できるようになった。項目の選択などもボタンのほうがはるかに操作しやすく、ボタン表面をタッチパッドのように使うこともできる。このSiri Remoteだけ単品販売してくれれば、と思うくらいの快適さだった。

酒井隆文