未知なる本を月に1冊読もうという試み、その名も「未知本チャレンジ」。2年目に当たる2025年。記録が半年に一回になったところでお分かりかと思うが、月日の経つ速度と本を読む速度がまったく噛み合わず、かなりギリギリではあったが、無事完走することができました🏃🏻♂️
- 7月:【不完全主義】オリバー・バークマン『限りある時間の使い方』
- 8月:【染色】志村ふくみ『色を奏でる』
- 9月:【西洋絵画】山田五郎『知識ゼロからの西洋絵画入門』
- 10・11月:【人類史】ユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史(上)(下)』
- 12月:【発酵】小倉ヒラク『発酵文化人類学』
- 総括
7月:【不完全主義】オリバー・バークマン『限りある時間の使い方』
平日に「時間がない!」とパニックになるのは毎日のことだけれど、ほぼ四連休を勝ち取った奇跡の週末でさえ「時間がない…」「何もできないまま1日が終わっちゃった…」と嘆きながら週明けを迎え、さすがに問題があるのは自分自身だと気付きました。さりとて一人暮らし、誰よりも時間があるはずなのに…。
ということで、一冊くらい時間活用術やタイムマネジメントの本を読んでみようと評判の良さそうな本を手に取ったのだが、蓋を開けたら全然想像と違う内容だった。
- タイムマネジメント術はどれも近視眼的
- 魔法のテクニックを使えば時間倍増!やりたいこと全部できちゃう!なんて幻想
- 時間を有効に活用してたくさんのタスクをこなしても、その先にあるのは疲弊
- 時間は有限、どんなに効率化したって全部はできない、だから本当にやりたいことからやってこ!
というようなことが語られていて、要するに不完全を許容すること、優先順位を付けることが大事です、という本。とにかく常に時間が有限であることを訥々と説き続ける感じで、じゃあどうする?がほぼ書かれていないのが個人的には不完全燃焼だった。
数多のタイムマネジメント術を試し尽くして、疲弊して、その先に辿り着くのがこの本なのかもしれない。一個もTipsを知らないわたしにはその境地はまだ早すぎる。まずその近視眼的なタイムマネジメント術とやらを教えてくれ〜〜!
8月:【染色】志村ふくみ『色を奏でる』
祖母(御歳92歳・超元気)が「この歳になってまだこんなに素晴らしいものに出会えるなんて…!」とうっとりと感動しきった様子でおすすめしてくれた本。
染織の人間国宝でいらっしゃる志村ふくみさんの、その人生や仕事の中で気付いたこと、感じたことを綴られているエッセイ。自然の美しさ、日本語の美しさ、感性の美しさが言葉の端々まで満ち満ちていて、凛とした清らかな空気が流れている。そういう風に生きてこられて、そういう風にお仕事に向き合われてきたからこそ、そんな言葉が内から出てくるんだなあと背筋が伸びる。同じ世界で、同じ四季の移ろいをこんな風に味わって生きている人がいて、その人が見ている世界の一端を覗き見させてもらえるなんて。本当に尊いものを読ませていただいた。
余談。祖母は志村ふくみさんにいたく感銘を受けて、ちょっと上等な紬の一丁羅を買い、それを嬉しそうにお披露目してくれた(もちろんご本人の作品ではないけれど)。そしてこの本を祖母に熱烈に勧めてくれたのは、寂れた商店街で今も踏ん張っている地元の本屋さんの店主さんで。本を読むというのは孤独な行為だけれど、温かい偶然や心の動きが重なってわたしのもとにこの本が届いたことも、やはり尊いことだと思うのです。
9月:【西洋絵画】山田五郎『知識ゼロからの西洋絵画入門』
会社の尊敬する先輩に教えてもらった山田五郎さんの著書。タイトルそのままの内容で、初期〜近現代までの西洋絵画を、代表的な画家や作品、そして五郎さんならではのお茶目な視点やエピソードと共に解説してくれる本。
今回あらためて気付いたのだが、わたしは縦もしくは横にぴしっと組まれた活字を追うことに慣れきってしまっていて、こういう見開きページを自由にレイアウトしたタイプの読み物(雑誌とか学生時代の資料集とか)を読むのが昔から苦手。かいつまんで読むというテクニックをいつまでも習得できず、見開きの全要素に目を通そうとして、めちゃくちゃ疲弊&混乱し、すぐに限界が来てしまう。
この本は薄いし非常に読みやすい語り口ではあると思うのだが、そういった事情でなかなか読み進めることができず、何度も何度も挫折。今回この未知本チャレンジの課題図書に設定することで、購入から数年越しになんとか気合いで読み切ることができた。やったー!
一気に読み終えてみると、あらためてこの本、そして五郎さんの凄まじさが分かった。タイトル通り、まったくの知識ゼロでも、通して読むと本当に西洋絵画の流れがわかる!読了後に最後の年表を見ると、人、作品、時代の流れが綺麗に頭の中で再生されるくらいに。ただ知識を蓄えるだけでなく、この絵が好きだなあ、この人憎めないなあという興味のきっかけが見つかるのも楽しい。入門書として完璧すぎるよ。
わたしはフェルメールの静謐な空気感と、アンリ・ルソーのおちゃめさが好き!以下の記事がわかりやすいうえに面白かった。「フットボールをする人々」とか見てるだけで最高に笑顔になれる。
https://qui.tokyo/art-design/henri-rousseau
10・11月:【人類史】ユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史(上)(下)』
数年前に上巻だけ読んだものの、下巻を買う腰が重すぎて、読破する前に記憶の方が先に塵と消えた『サピエンス全史』リベンジ。読みやすい文体とはいえ、寝る前に読み進めようとして秒で寝落ちするというルーティーンができあがってしまい、もはや寝落ち用か?というほど亀の歩みだったが、その分達成感もひとしお。細切れで読み進めすぎて、もう何が何だったか全然記憶にないのですが…。
「俯瞰」とはよく言うものの、人類の始まる前から超現代までを一人の人間が俯瞰するというのはあまりに規模が規格外で、ユヴァル・ノア・ハラリさんには世界がどう見えているのだろう、という方に興味津々。こちとら文庫本上下巻分さえ俯瞰できない凡人であります。
下巻の最後に語られる幸福のあり方と、人間はどう進化していくのか(もしくは人間でなくなるのか)についての語りが一番印象に残っている。恐ろしいけど面白い。現実は小説よりも奇なり、というのはきっと本当だと思う。
12月:【発酵】小倉ヒラク『発酵文化人類学』
発酵ブームの火付け人である小倉ヒラクさんの本。ブームだったから、というのはもちろんあるだろうが、大学生の頃から今に至るまで、折に触れて発酵というテーマや小倉さんのお名前に縁深く巡り合うタイミングが多々あり、ずっと気になる存在だった。さらに小倉さんは我が地元に移住されて活躍されていることもあり、応援したい気持ちを勝手に(しかも強く)抱いており、帰省時に発酵デパートメントに足を伸ばしてみたことをきっかけに、その場でこの本をえいやっと購入。
発酵の仕組みや各蔵元の取り組みがわかりやすくまとめられていて、発酵そのもの云々ももちろん興味深いのだが、一番に思ったのは「作る」っていい仕事だな〜〜ということ。それぞれがそれぞれのやり方で、信念を持って、よりよいものを作るために自分の仕事を突き詰めるって、めちゃくちゃかっこいい。そしてそれを日の当たるところに取り上げて世の中に広めていくのもいい仕事だ。お仕事論として、なんかいいな〜〜と惚れ惚れした。わたしが大学時代に受けた授業の中で一番はっと目を見開くような面白さであふれていたドミニク・チェンさんと、当時先生が授業で何度も話されていたぬか床ポットも登場!嬉しかった。
総括
2025年の下半期を振り返ってみると、決して意図したわけではないのだが、仕事においても家探し等のプライベートにおいても総決算という言葉がふさわしい、色んなことに片をつけにいく時期だったような気がする(しいたけ占いの語り口)。
それが反映されてか知らずか、後半に行くにつれて、途中で挫折した本(サピエンス全史/西洋絵画入門)や、ずっと気になっていたけれど手を伸ばしてこなかった本(発酵文化人類学)とのリベンジマッチに集中して取り組めていた。ちょっと汚れた部屋とか、ずっと視界に入る積読本とか、そのままでもいいとも思っているんだけど、でもなんかちょっと気になるんだよな〜〜とコンマ数秒もやもやするものには、意識的に目を向けて片付けていくと、気持ちがすっきりして吉です。
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