6月末に両親と弟と大阪万博に遠征し、そのついでに京都に足を伸ばした我が家のはやめの夏休み。いまでこそ世の中は万博万歳モードではあるが、かつて万博が親の敵のように叩かれまくりミャクミャクくんが総スカンを食らっていた時代から、空気を読まずに「万博たのしみ!ミャクミャクかわいい!絶対行く!」と周りで唯一宣言していた勇者こと母とともに念願の参戦。
我々は地味に前回の名古屋開催「愛・地球博」にも関東からはるばる出かけており(万博好きなのか?)、当時まだ小さかった我々子どもたちはモリゾーとキッコロの各自の帽子を買ってもらい、それはそれは気に入って地元でもかぶり散らかしていたこととか、行列に並んでトヨタのロボットショーを見たこととか、その行列に並んでいる最中に手すりの間に頭を入れたら抜けなくなってしまい、もうちょっとでレスキュー隊を呼ぶレベルの珍騒動を巻き起こしてしまったこととか(かなりの大恥)、今でもよく覚えている。それが今では両親をエスコートするくらいの歳になったのだから、時は巡っているな〜〜と感慨深いものがある。
DAY1:大阪前乗り、珍道中の予感
新幹線の車内で両親と落ち合って大阪に前乗り。両親は新幹線までにかなりの時間をかけていくつかの特急や在来線を乗り継がないといけないのだが、父が数駅乗るだけの電車でボディバッグを棚の上に置いたことから危うく忘れかける(母にボディバッグの意味を問われていた)、その影響もあり一本も遅らせられない電車を逃しかける(デカキャリーを抱えて全力疾走)などなど、よくもまあ序盤からそんなに…と思うほどのたくさんのトラブルを携えてドタバタの登場。さあ珍道中の予感。
わたしが両親分のお弁当を東京駅で買って行ったのだが、まだ食べ足りない父は首を長くして車内販売を待ちながら、普段新幹線に乗らないので「新幹線ってこんなに速いのか?!そりゃあ車内販売は無理だろうなあ…」と謎の納得を見せていた。慣性の法則を超えていくタイプのワゴン。
新大阪に上陸すると、一寸の迷いも見せずに駅のお土産屋さんでカゴ3つほどの大量のミャクミャクお菓子を買い込む母。親戚・友達・職場などへの配布用なのだが、側から見ると転売ヤー並の在庫調達。そのまま自宅に宅配を頼んでいた。また新大阪到着から10分しか経っていない。
そこから地下鉄で移動し、万博寄りのホテルにようやく到着、と安堵したのも束の間、ツイン2部屋2泊で予約したはずが、まさかのダブル2部屋2泊で予約されていることが判明。初日から珍事が止まらない。わたしと母はまだしも、巨体の父&まあまあでかい弟の添い寝、気の毒な絵面だ。珍道中の予感からかベッドの狭さからか、この旅の行く末と一同の無事が不安になり、角度の違う旅行中の事故の悪夢を何本も見ては冷や汗をかいて飛び起きた。このずっこけ一座の命運はわたしにかかっている。自らの責務を胸に誓った。
DAY2:灼熱の大阪万博にアドレナリンマシマシで挑む
朝10時入場でついに大阪万博へ。入場まで1時間くらい待たねばならず、一日の中でもここが一番暑かった。列選びの慧眼がなく、隣の列より30分くらい遅れて出鼻を挫かれながらソワソワと入場。なんだか子どもの頃のディズニーみたいな気持ちだったな〜〜。
我々の戦績としては、7日前抽選は全滅、3日前の先着予約で23時から待機して「未来の都市」だけ勝ち取り、当日予約はこんなの絶対無理でしょう、という感じだったが、Z世代スマホ中毒の弟がさすがの指捌きを披露してNTTを奪取してくれた。
その結果、予約不要のもの中心に最終的には計9個のパビリオンを回ることができた。
②カタール(真珠と砂漠の国ということがわかった)


③クウェート(寝転んで夜空を見上げるのが気持ちよかった)


④インド(入場制限をしないのですごい混雑だった、展示ではなく実はインドの人口密度を体感するパビリオンなのではと睨んでいる)
⑤オーストラリア(森と海、360°のスクリーンで海に沈むような映像体験)


⑥未来の都市(自由研究気分)


⑦NTT(超リアル3DのPerfumeライブ、観客参加型ショー)
⑧トルクメニスタン(煌びやかなプロパガンダムービーとは裏腹に洗剤や食料品が展示されるというちぐはぐさから透けて見える貧しさ)
⑨サウジアラビア(夜のプロジェクションマッピング、アラビア語の朗読ショーが異国の響きで美しかった)


本当は石黒浩さんの「いのちの未来」(アンドロイドのやつ)が一番見たかったのだが、どうにもこうにもノーチャンスだった。無念。そのうち森ビル美術館とかにそっくりそのまま巡回展示してくれ〜〜と祈念している。
大阪万博でもプチ珍事勃発
個人的なこの日一番のクライマックスはNTT。あの超大量の人間がひしめく万博で、1枠20-30人くらいで時間を刻む完全予約の難関パビリオンだというのに、まさかの待機列の一組前が同じ会社の同じ部署の先輩というまたしても珍事が発生。先に待機列に並んだ父と弟のもとに向かいながら、「隣に先輩いない…?」と気付いた瞬間の時の止まりようよ。0.5秒くらいで察知して即座に母の日傘を真横にかざして身を隠し、ばれないよう遠めに待機、という不審者ムーブをかました。
挨拶してもよかったのだけど、ご夫婦で完全プライベートモードの先輩にファミリーで声を掛け、そこから数十分お互い若干気まずい思いをしながら展示を回ることを想像すると、とてもそんな気にはなれなくってさあ…。
NTTは3つの体験型展示で構成されていたのだが、1つ目、2つ目、とそれぞれ先輩の対角線のエリアに陣取ることで難を逃れ、よしついにラスト、と臨んだ3つ目の部屋で、何もわからないままにまさかの全身写真を撮影される。

↑動揺しながらサングラスで咄嗟の変装をしたものの、シャッタータイミングをミスった挙動不審なわたくし。壁中を参加者の写真がローテーションし始めて、デカデカと写し出されたわたしの阿呆な分身が部屋中を駆け巡り、どんどん先輩の目の前に向かっていくのを「お願い止めてええええ」と心の中で叫んだが、時すでに遅し。
要はNTTの最先端の技術を駆使して、自分たちの顔写真が解析され、勝手に老化させられたり、幼くさせられたり、合唱したりするのである。こちとら先輩を見つけた時からパニックだというのに、壁中を駆け巡ったり、かと思えば寡黙な父(の分身)が熱心にアンセムを歌わされていたり、サングラスをかけたまま熱唱させられる自分を見たりと、もうお祭り騒ぎで笑いが止まらず何が何だか、とにかく愉快な時間だった。笑い過ぎて隠れるどころではなかった。奇跡的にビデオに収められた父の熱唱動画には、わたしのこの上ない高笑いが収められている。先輩にはおそらく気付かれていない(と信じている)。

あまりの暑さと行動量に、両親は午後休憩所でお昼寝を挟むという、スペイン館もびっくりのジャパニーズ・シエスタを披露していたが、とはいえ終日みんなで健康に動き回れてよかった。大屋根リングは評判通り素晴らしかった。
DAY3:在来線で京都へ、初めての宇治
万博の疲れも抜けないなか、京都線で京都に移動。ガンガンにきいた冷房が気持ちよくって、ボックス席でうとうとした。小学生の夏休み感。
この日は弟の希望で宇治へ。10円玉の裏でお馴染みの平等院鳳凰堂を初めて訪れることができた。仏師定朝が天才だということがわかった。これまでよりも10円玉を愛せる気がする。

以前偶然訪れて気に入り、今回も絶対に行くぞ!と決めていた梅の名店、おうすの里にも立ち寄ることができた。母はここでも転売ヤー並の爆買いを見せつけていた。

駅までの帰り道、中村藤吉といったような名前の初見のお茶屋さんで、抹茶ラテと抹茶ゼリーで涼む。すごい混んでた。


夜は父の希望でラーメン。あとから人に聞いたところ、駅付近に名店がいくつかあったらしいのだが、そうとも知らずに閑散とした駅ビルのラーメン小路的なフロアで簡単に済ませる。かろうじて高槻のお店を選んだらこれが当たりで、さっぱりしていて美味しかった!ビールが美味しい夜はいい日だったということ。
DAY4:灼熱の京都で自転車を漕いで漕いで漕ぎまくる
今回は京都駅直結のグランヴィア京都に泊まったのだが、その利便性にうっとりしていたところ、朝食も素晴らしいラインナップだった。ローストビーフまであって、ついつい欲張ってお腹ぱんぱんになるまで食べ過ぎてしまった。バイキングを前に自制できる人が羨ましい。

まずは朝一の京セラ美術館で草間彌生展。初めて訪れたのだけど、外観も構造も規模も非常に素晴らしい美術館で気に入った。この展示なんて東京でやったらすっごい混雑だろうな〜〜。空間の余白あっての美術鑑賞だ!ということを痛感。

草間彌生作品にしっかり触れるのも地味に初めて。お気に入りの帽子をなくしちゃって、でも見つかった時の喜びとか、かぼちゃやぶどうへの愛が詩に認められたりしていて、すべての作品が一貫して純真そのもので、なんてピュアな人なんだろう、と感動した。「ぶどう ぶどう ほんとうにあいしているよ」なんて、心から言えるだろうか。草間弥生の作品には曖昧な部分がない。すべてがはっきりくっきりと描かれていて、それが清々しい。心強い言葉を断言されたときの底から救われるような感じというか。生命のエネルギーをたっぷり感じたひととき。
その後は諸事情で両親と別れ、半日ひとり旅がスタート!ものすごく暑い日だったが太陽に負ける気はない。我が相棒・レンタサイクルを京都でも出動させ、ジリジリと肌が焦がされるのを感じながら、滝のように汗を流し、鴨川沿いを北へ南へ駆け抜けた。アウトドア用の帽子にサングラスにアームカバー。気分は小学生の夏休みだが、街行く人からしたらどう見ても子どもを送迎に行く地元の自転車のおばちゃんだったであろう。
平安神宮、なんだかんだ見たことのなかった京大、何よりもお目当ては2つの独立系書店——誠光社と恵文社へ。特に恵文社は初めての訪問。


本屋好きとしてはアドレナリンが止まらない選書にスキップ気味で棚を眺め回した。記念に「るきさん」と「夫婦間における愛の適温」の2冊を購入🎶
そして、ひとり贅沢ランチとしてmatiというパンとワインのお店へ。Google Mapに行きたいお店としてピンが立っていたが、どこで聞いたのかは忘れてしまった。


水分をカラカラに絞り出した体に染み渡る冷えたワイン、肉肉しいパテ・ド・カンパーニュ(何を隠そう、わたしはパテ・ド・カンパーニュが大好きなのである!)、そして炙りホタテとズッキーニのブルスケッタ。は〜〜〜〜言葉はいらない。悪いことをしているような気持ちになるほどに、大人の楽しみを味わった。大人になってよかった。小学生は夏休みにこんなことはできない。
夜、東京の自宅に帰ってシャワーを浴びる時に髪を解いたら、何か黒いものがぽとっと床に落っこちて、よく見たら干からびた虫の亡骸だった。京都土産。夏だった。

