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水野亮と『従妹ベット』

『新潮世界文学小辞典』(新潮社、1966年)のバルザックの項は水野亮が執筆している。主要作品として紹介している中の『従妹ベット』の紹介のし方が面白い。

バルザックの小説はたいていの場合主人公一人が怪物じみた偏執狂で、あとの人物はいずれも腫物にさわるように、おそるおそる怪物の鼻息をうかがうしくみになっているが、本編ではそういう怪物が単に一人でなく、四、五人いちどきに舞台へ飛び出してきて縦横無尽にあばれまわるのである。他の小説では、主人公が情熱にほろぼされて行く経路が問題となっているけれども、この小説ではこのような情熱にとりつかれた多くの人物どうしの必死の格闘が、ミケランジェロの壁画の人物を思わせる雄渾な筆で描破されている。

『従妹ベット』ってどんだけ凄い小説なんだと思わされる。

水野訳の『従妹ベット』は岩波文庫で出ている(絶版)。




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