「阿佐ヶ谷のみどりを守るには」連続学習会 Part.1『みどりを守る制度と取組み』後編の動画・資料・レポートです。
後半はゲスト講師として、前回まで杉並区の自然環境調査員(専門は植物)をしていた田中耕太郎さん。晴れた日でしたが、正装のゴム長靴とポケットのたくさんあるベストで登場です。動画は43分ごろから後編です。
資料として杉並区「自然環境調査報告書(第8次)概要版」のパンフレットが配布されました(提供・杉並区環境課)。こちらには概要版と、さらに詳細な資料編が載っています。

まずは、杉並区の自然環境調査について。
第1次は1985年~2年間で、その後、1990年、1995年…と、5の倍数の年に行ってきた。第5次が2005年で、第6次が2012年なのは、「そんな精密にやらなくてもいい」ということで、なくなりかけた。しかし区議会でも重要性を議論してもらい、また5の倍数で今もやるようになった。今回が第8次。
植物にはシダ~蘚苔類も含まれる。プロ、専門家による調査と、区民によるアンケート。だが、区民アンケートは第7次からは、両生類は虫類と哺乳類、わかりやすいものだけに絞った。

どこを調査するか:鳥類は区内各地、植物・昆虫は豊かなところ。阿佐ヶ谷地域にはぜんぜん調査地点がない。
昆虫の取りまとめの方はネットワークを作り、関心ある区民からデータを吸い上げている。
植物を調べるとは:今回杉並区では植物層、つまり種類を調べる。樹林にどんな木があるか、どんな形の樹林か。それはやってない。
他の自治体で業務でやるときは、春(4-5月)夏(7-8月)秋(9-10月)。早春のものが出るところは3-4月。業務でないのは、散歩のときにふらっと見たものなど。杉並区でも柏の宮公園は早春も入る。


調査の結果、第7次、第8次で1000種類以上が確認されている。
7割くらいは植栽ではなく、野生のもの。そのうちには帰化植物、逸出(国内の区域外から来たもの)が含まれる。700種のうち3割。5次調査から上がってきている。杉並区由来の植物は減りつつある。樹林が減るのも由々しき問題だが、植物の質も落ちている。

注目種:絶滅危惧種もいまだに現れる。野生植物として3種類が出てきた。レッドリストでEX(絶滅と考えられた)のクチナシグサなど、東京都に出るとは。捨てたもんじゃない。
しかし、緑被率が減り、予断を許さないのも事実。
絶滅危惧種の問題:花がきれいなものを掘って持ってっちゃう人がいる。キンランは環境省・東京都の絶滅危惧種VU(絶滅の危険が増大)。絶滅危惧種になった理由は、もともと個体数が少ないのと、減ったものがある。キンランの場合は、生息地がなくなったことと、人が持っていってしまうこと。大宮八幡宮近辺にもあり、GW手前に咲くが、6本くらい確認していたのに、2,3日でなくなった。非公開になっている。

ナガエミクリ(善福寺川上流に多い水草。東京都のレッドリスト都区部VU)は、荻窪団地より上流にたくさんある。しかし、環境調査には川が入っていない。公園で見つかってない水草が反映されてない。

調査の問題点:これらの種は、15地点で見つかったものでしかない。調査地点以外だと反映されず、省みられず、なくなってしまうかもしれない。
昆虫は調査員と住民のデータを取りまとめるネットワークを持っている。ほんとは植物もそれをするのが理想。たが、取りまとめる人、機関がない。環境課→コンサル会社が取りまとめている。
緑地、公園が劣化したり、個人宅だったりして調査ができなくなる。
調査員のなり手がいない。次のレッドデータをまとめる人がいない。自然を見る人間が一番絶滅危惧種になってる…。
「両はほ(りょうはほ)」、両生類、は虫類、ほ乳類は区民参加をしているが、植物では人手がないし、拠点がない。郷土博物館に動植物の学芸員が常駐してない。
この現状を変えるには、希少種を見つけたりしたら、環境課に電話してほしい。「ニーズがある」とわかると、区が変わってくるかも。広報が足りない。
縦割り行政:環境課がやっている。公園緑地はみどり公園課。情報が共有されていない。貴重な植物があっても情報が行かず、草刈りにあって全滅。
岸本区長はグリーンインフラを言うが、量があればいいってものではない。質、自然を構成するものがどれだけあるか。もともと杉並区にある植物を増やして使って、残ってるものが増えるのを待つしかない。


ここからは全体の質疑応答。
Q:水生昆虫の調査は?昆虫サークルの人に聞くと、そんなきれいな川でなくてもいるようだが?
田中:水生昆虫だけを絞ってやっていない。トンボもヤゴが水生昆虫にあたる。これとは別に河川の環境調査があり、魚類、水生昆虫は確実にやっている。池がある公園では網を入れていて、柏の宮ではやってる。ゲンゴロウ、タガメは杉並区、東京都ではほぼ絶滅。見つかれば反映するが。
Q:量もだけど、質も大事、その理由をもう少し。
田中:生物多様性の段階として、種の多様性が一番わかりやすい。それ以外、種の生きていける環境、景観の多様性という大きなグレードがある。小さいグレードだと遺伝子の多様性を守ること。その観点からだと、杉並区のものにこだわるのは、同じ種類でも遺伝子が違うから。メダカ、よくいるが(最近はいない)、東北~沖縄まで生息している。日本海側と太平洋側は違い、太平洋側だけで9-11種類の遺伝子的に別になる。
ペットショップで買って放流するとわけわかんなくなり、遺伝子多様性がなくなる。均一化。どこに行っても同じ、均質化。特性を持って生き延びてきたのが、なくなり、種として滅びる危険性が起きる。近婚弱性といって、母数が少なくなると危険が増す。
生物は移動するが、生き物によって動ける範囲が違う。タンポポは(一つの個体が)何キロも種を飛ばすが、1km移動するのに1万年かかるカンアオイ属もある。(人間が植物のために)よかれと思って移動させても、それが絶滅につながる。同じに見えても別の種類があると後でわかることもある。
その地で歴史を重ねてきた。余所から持ってきて落書きしてはいけない。
Q:島田さんに。市民緑地制度(いこいの森)、剪定は区がやっているのでは、どこが自己負担か。みどりのパッチワーク、面的、線的にあることが大切という話を聞いて、植物、動物も同じように生きているのだな、と感じた。
田中さんに。調査員自体が減っているというが、他の自治体はどうか。杉並区にも「こんな動植物がある」とわくわくするし、子どもが聞いたら喜ぶ。子どもが見つけたものを報告する窓口があればよい。自分の住んでいる街に意識が向くのでは。
島田:屋敷林は民間が管理。お金は所有者負担。いこいの森になると樹木管理は区が主体となる。川崎市の指定と比べ、所有権は変わらないが、上物を全部行政が管理、公園みたいに扱う。川崎市は民間の庭がそのまま保全され、庭木管理に助成。
みどりのパッチワークは都市計画塾で扱ったドイツLプラン。動物、植物、風の道を考えて都市計画をする。道路を通すには動物の道を作らないといけない。ほんのちょっとの緑でも生物に大切なので、そのために民間の屋敷林でも保存する。既存種を守らないといけない。
(ドイツの都市計画についてはこちら)
自然環境調査では、スズメ、ツバメが減っている。カルガモ、エナガ、カワセミは増えている。増えているものもある。資料編に載っているが、絶滅危惧種のアマツバメが1回確認された。載っていないが、ヨタカ、アオバズク、どことは言えないが確認されている。
田中:みどりのパッチワーク、孤立しているものを繋げて、多くの生き物が住める。しかし、それで移動するのは在来種だけではない。外来種がガンと増えてしまう。
データを集めるところ、私も知りたいです。都道府県で自然史博物館があるところはそこがやっているが、東京都にはない。昆虫は集めているところがある。武蔵野自然史研究会など。千葉、神奈川など博物館があるところはうらやましい。植物は神代植物園の隣に、植物多様性センターがある。都立大でまとめている先生がいるらしい。国立は細かいところを集めていない。
Q:温暖化の影響は?調査の結果、環境保全の行動に結びつくマップはあるのか。
田中:昆虫は南方系のものが見つかってきている。気候変動では夏に雨が降らない、春の猛暑で株で見ると弱ってきている。絶滅には至っていないが、これから。
松尾:自然環境調査を区がPRしてない。求められるのはこのレベルじゃない。みどりの計画自体が積極的に推進されてるわけでもない。欅屋敷が念頭にあって学習会をしたが、あれだけ伐採して、代わるものを作ろうということにならない。杉並区の現状。
島田:阿佐ヶ谷のプラットフォームから見たランドマークは武甲山。自然保全地域、希少種がたくさんいる、哺乳類、ニホンカモシカも。杉並区でオオタカが見られるようになったのは何らかの(地方の)開発と関係しているのでは。流山の「オオタカの森駅」ができて、開発でオオタカ生息地がなくなってしまった。
田中:オオタカは2005年前後から増えている。都市部で見ることが増えている。全体的に個体数が増えているのかは微妙。国内希少動植物から外された。オオタカの巣が見つかって開発がいくつか潰されたので、煮え湯を飲まされた開発側がプッシュ(して外した)?評価は難しい。
Q:報告書をみると、なんでスズメが少なくなったか→営巣の場所が減った、と書いてある。原因をつきつめないと、行動につながらない。私は善福寺川緑地で緑地の保全と生物保全をやっている。タヌキの分布についても2018年までいたのに、ばさっといなくなった。直立護岸になって水が飲めなくなったからではないか。東京都に「直立護岸にすると動物が水飲めない、水草も繁茂できなくなる」と言っている。神通橋は護岸工事のため、鋼板で蓋している、大成橋も。蓋をすると水温は45-50℃になり、水草も魚も住めなくなる。善福寺川上流調節池の工事では、せきれい橋周辺を17年間にわたって鋼板で蓋をする。
そんなことをしているのは生物多様性や保全と真逆。東京都も区も。こういうことが起こる、と言わないといけない。
田中:タヌキの減少について、その理由はありえそう。ただアライグマの増加もある。アライグマは行動範囲が広い。いろいろな要因があるが、土木的要因は人間がやってることで、どうにかできないだろうか。善福寺川上流調節池の予定地である原寺分橋~関根公園はナガエミクリが一番繁茂している場所。さらに上流(八幡橋)では、外環道がある。シールドトンネルは陥没したり、リニア工事で水が出なくなったりしている、その影響はあるのでは。そうしたことが反映されていないのは問題だ。
Q:屋敷林は管理は地権者。うちの近所、歩道が潰されるくらいになっていて、近所の人が区に苦情を言っても「地権者がやらないとできない」と言われる。保全にも危機的。
島田:2000年くらいから国交省でも危機的と感じている。民有地に行政が手出しできるようになった。昔は公有地にはみ出している部分だけ。今は法律的には私有地の木も切れる。民有地の中が荒れ放題で廃墟になっている場合、必ずしも地主の許可なく建物を除去できる。運用は自治体に委ねられているが、できるようになっている。
欅屋敷は鎌倉古道、鎌倉、平安時代からなんらかの道があった。1000年以上土壌がそこにあった、その上に貴重な在来種があり、史跡、守るべき緑地だった。貴重な土壌を残すには廃墟となった土地も、いこいの森制度で積極的に管理するべき。
川崎市の制度では2/3のお金が出る。
Q:善福寺川によくある水草がナガエミクリといって希少種だと知った。あれはよく清掃のために伐採してるけどいいのか?あと、善福寺川上流調節池で地下を掘って影響出るのでは。
田中:調節池は原寺分橋湧水に影響出るのではないか。ナガエミクリは、刈らないと土砂が溜まってダメになるので、適度に刈るのは逆に維持できるようになる。葉を刈っても地下茎に影響なければ問題ない。年2回刈れば維持できているのではないか。

(善福寺川上流・原橋:西荻北5丁目)
Q:子どもの頃になかったような雑草が増えている。それで在来種が減るのでは。
田中:土をほじくり返して、何もなくなったところに入りやすい。外来種がすべて侵略的ではないが、更地を好む在来種には悪影響。早いうちに除去できればそれに越したことはない。
Q:帰化逸出植物の率、2000年代は動きがないのに、2010年から大きく増えるのは?動物、アライグマ、ハクビシンはよく見るが都で捕獲する動きは?
田中:アライグマはワナ狩猟免許がないと取れない。役所に相談すればワナを仕掛けてくれる自治体もある。畑が多いところは産業に関わる。外来種が増えた、この間に何が起こったか?ぱっとは浮かばない。
松尾:変化は、自然の方ではなく、調査方法が変わったのでは?
田中:区民からの知らせが少なくなり、プロが増えたのかも。
最後に、三人からそれぞれの話を聞いた感想を述べてもらいました。
松尾:自然環境調査は第5次でやめようか、みたいな話が出たのに、田中さんに動いていただいて継続できている。今、岸本区長が環境に関心はあるけどすぐは変わらず、動きが弱い。世田谷区トラストまちづくりというのもあって、川崎市の制度と似ているが個人が管理し、週1回開放するなど。杉並区はそこまで手が及んでいない。さいきん暑い!というのもあって屋敷林なくなることに、区民は関心高い。自然環境調査続けてきたのは杉並区の財産、それをどう受け継いだらいいか。
島田:田中さんのお話を聞いて、調査員が発見し「何回見た」と、人に頼っている。別の調査員、人数、違った場所なら違う結果が出てしまい、誤差が大きく、アオバズクやヨタカが報告書に載ってこない。改善の余地は。
田中:業務では年4回、20日程度しか調査に入れない。市民調査はいつでも誰でも入れる。スキルを持っていなければならないが、市民がちゃんとやれば精度の高いものが出せる。こんなものがいたよ、と上げるだけでも違う。調べたりSNSに上げると答えが出ることもある。まとめておくと力になる。
ふだん見慣れていた植物が絶滅危惧種だった ! という驚きと同じく、自然環境調査、というものが杉並区が独自に継続して財産になっている、ということ。実は身近に貴重なものがあり、守ろうとしないとなくなってしまいかねない、という点でもよく似ています。屋敷林だって、もしかしたら持ち主には見慣れたものでも、広い範囲で見たり、鳥の目で「みどりのネットワーク」として見たら、貴重なものですよね。そしてそれもまた、制度によって守る方法はあるのです。
「阿佐ヶ谷のみどりを守るには」Part.2「阿佐ヶ谷の原風景を歩こう」はそんな屋敷林や身近な樹木を実際に見てまわります。阿佐ヶ谷の住民でもあり、地域の歴史にも詳しい島田さんと、今回大人気だった田中さんの解説でのフィールドワークです。
お楽しみに!!
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